業務を変えるkintoneユーザー事例 第249回
年間約3万時間もの業務削減に至る定着活動の道のり
3000人規模の東電EPのkintone導入 現場主導を貫くためには「危機感」「勇気」「目的」
2024年10月22日 10時30分更新
kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 Tokyo」が開催された。
本記事では、大トリを務めた東京電力エナジーパートナーの久保佑太氏と櫻井奈津実氏によるプレゼン、「kintone導入推進の軌跡」をレポートする。
kintone導入でまず決めたのは「現場主導で進める」こと
東京電力エナジーパートナーは、東京電力ホールディングス傘下で、電力やガス、省エネを軸としたサービスを提供する会社だ。2015年に設立され、現在の社員数は約3000人。DX推進室を4年前に発足して、各種プロジェクトや新規ツールの導入を通じて、全社的なDXを推進中だ。
久保氏は、1年半前にDX推進室に着任。その時、会社には3つの課題があったという。ひとつ目が、表計算ソフトベースの非効率な情報共有。2つ目が、部署が多かったため、新ツール導入の予算や運用のハードルが高かったこと。3つ目はそもそもDXが浸透していないことだった。
そこで久保氏が目をつけたのが、kintoneだった。業務効率化もできるし、ノーコードなため取り入れるハードルも低い。加えて久保氏は、「kintoneの環境をDX推進室が提供すれば、いろいろな部署と密接な関係ができて、全社的にDXを推進できる企業に変われるのではないかと考えたのです」と振り返る。
kintoneの導入にあたり、最初に「現場主導で進める」という方針を決めた。あくまでDX推進室はサポートに徹して、現場にkintoneアプリを作成・運用してもらう。当時、DX推進室におけるkintoneのサポートメンバーは2人。しかも、他の業務を兼任していた。社員全体にkintone導入を進めていくには、当然負担が大きかった。
「むちゃくちゃ大変でしたが、良かった点もありました。担当が多いと、意思決定のコミュニケーションが煩雑になったと思います。また、専任だと現場の業務が把握できず、kintoneをどこに適用したら良いか悩んだと思います」(久保氏)
もうひとつ立ち上げの追い風になったのは、「費用対効果を追求されなかったこと」だという。そのおかげで、「しっかりやりきること」に集中できた。
社内浸透は、その場でデモアプリを作成する営業活動が転機に
次に久保氏が取り組んだのは、社内におけるkintoneの「営業活動」だ。元DX推進室のメンバー、知り合い、そして知り合いの知り合いへと、とにかくkintoneを売り込んだ。あまりにも熱心に提案し、質問に答え続けていたため「サイボウズの人ですか?」と言われるほどだった。
しかし、知り合いでだったら使ってくれるかなと思いきや、「持ち帰って検討します」と返されることが多かった。やはり、新ツールのハードルは高かったのだ。
そこで提案の仕方を変えた。kintoneの機能を紹介する時間を減らし、業務に関するヒアリングをしつつ、課題を解決するデモアプリをその場で作ってみせた。「まっさらな状態からタスク管理アプリなどを作って、アプリが簡単に作れることを実際に見てもらいました。そして、そのアプリをそのまま試してみませんかと提案、kintoneを使い始めるまでの期間も短縮できました」と久保氏。
デモまで見せることで、目論見通りkintoneの浸透は進んだが、弊害も出た。「簡単に作れるなら、DX推進室が作ればいい」と言われてしまったのだ。しかし、方針は変えず、あくまでサポートに徹して、現場主導で業務改善してもらうことにこだわった。
ドラッグ&ドロップの仕方から細かくレクチャーし、何か困っていることはないかと丁寧に声掛けした。最初はkintoneのポータル画面にもいろいろな案内を載せていたが、より分かりやすくするために3つの項目に絞った。kintoneの「運用ルール」と「アプリの作成手順」、そして、申請や質問アプリを備えた「公式スペース」の3つだ。
運用ルールには、命名規則やアプリ棚卸の基準などを掲載「やってはいけないこと」を中心に記載するよう心掛けた。アプリ作成手順には、サイボウズ公式のマニュアルよりも詳しく、1クリックずつの操作まで画面付きで解説。公式スペースには、アカウント申請や運用に関する質問、アプリの要望、資料置き場などを設けて、導入支援チームがサポート状況を管理できるようにもした。
「私も導入支援チームとして関わっていてます。公式スペースでは、SFA(営業支援システム)のようなUIで、今どこの部署とどんな話をしていてるか、どんな資料をやり取りしているか、などの情報を一元管理できてとても便利です」(櫻井氏)
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