ノートPCを月間40万台生産、良品率99.8%はどのように実現されるのか
MSI中国工場、極めて高度に自動化されたPC製造技術。人間の仕事の行方は?
それぞれのマシーンには信号機のようなインジケーターが装着されており、部品の繰り出しがうまくいかなかったり、製品の流れが詰まったりするとインジケーターが赤に点灯すると共に、工場内のモニターにエラー内容が表示される仕組みになっている。見学中に一度だけ赤のインジケーターが点灯したが、作業員が素早く現れ、リールを補充して去っていった。
半導体類のマウントが完了したら、光学検査の工程へと進む。同社で導入している自動光学検査機は、極小サイズの半導体類それぞれが正しい位置にマウントされているか、そうでない場合どの箇所に問題があるのかを、ものの数秒でスキャンしてAI画像診断で判定してくれる。見学していた範囲ではエラーが出ている様子はなく、非常に高いプリントやマウントの精度が感じられた(検査結果の様子も掲載したいところだったが、ボードの構造が克明にわかってしまうため、撮影は許可されなかった)。
説明を受けながら進んでいくうちに、気づけばボードが見慣れたボードらしい姿になってきている。この段階まで、人が手で作業している様子は一度も見なかった。
基板の裏表をひっくり返したり、前の工程から次の工程へと基板を送り出したりといった作業に至るまで、生産工程のほとんどは自動化されている。責任者は「いずれは人の手で部品を装着する工程はなくしたい」とも話していた。マザーボードのように大量のロットにわたって均一な仕上がりを保ちたい製品なら、マシーンによるメリットは大きすぎる。作業の熟練度や力加減が仕上がりに影響しなくなるからだ。
ここまで自動化が進んでいても、さらなる自動化を進めようとする姿勢に感銘を受け「次はどこを改善する予定か」と生産技術部門のシニアマネージャーであるElsie Lee氏にたずねたところ「ラインの中にボードを90度回転させる部分があるんだけど、回転させないで次の工程に進めらえるようになると、数秒の節約になるから、そこをどうにかしたいと思っている」との返答。
「ボードを回転させる数秒の節約にはどのくらい意味があるのか?」と質問を重ねてみると「ここまで自動化が実現された状態になると、さらなる効率化を目指すためには、もう数秒の節約を積み重ねていくしかすることが残されていない。その意味で、数秒の節約は大きい」と答えてくれた。喫驚。
とはいえ、2024年時点ではまったく人の手が入らないというわけではない。メモリーやラバー製の軸受けといった一部パーツの組み付けや、光学検査では見逃してしまう可能性のあるポイントを目視でチェックする工程もある。
下記が、MSIのノートPC向けマザーボード製造における全体的な流れだ。
〜MSI ノートPC マザーボード生産ラインの流れ〜
プリント基板の繰り出し
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トレーサビリティー用レーザー刻印
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はんだ回路のプリント
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自動光学検査
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半導体類の埋め込み
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端子類の埋め込み
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チップ類の埋め込み
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焼成
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自動光学検査
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保護用皮膜の形成
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目視検査
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電圧テスト
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BIOSテスト
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製品向けテスト
※マウント→自動光学検査の工程は、表と裏で2回実施。