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SAPの生成AIアシスタント「Joule」も順次搭載予定

経費精算の承認作業もついにAI自動化へ、コンカーが“最後のピース”埋める発表

2024年09月18日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 出張・経費管理クラウドを提供するコンカーは、2024年9月17日、日本市場で順次投入するAIとビッグデータを活用した新機能について発表した。

 コンカーの代表取締役社長である橋本祥生氏は、「経費精算業務は、あらゆるビジネスパーソンにおいて最も付加価値のない業務であり、“経費精算のない世界をつくる”ことがコンカーの日本における使命だ」と説明。経費精算をなくすために、同社では「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス」「運用高度化」からなる“5つのレス”を推進してきたが、唯一「承認レス」のソリューションが足りなかったという。

 コンカーでは今回、その「承認レス」を実現する承認ワークフローにおける自動承認のAI機能を、2025年春から日本市場で提供予定だと発表した。これにより、同社が目指す“経費精算のない世界”、間接費業務全体の自律運用に一歩近づくことになる。

コンカー 代表取締役社長 橋本祥生氏

従業員立替・海外出張・会社払い、各経費管理サービスにAI機能を投入

 コンカーでは、従業員立替経費向けの「Concur Expense」、海外出張費向けの「Concur Travel」、会社払い経費向けの「Concur Invoice」という、3つの領域に特化した出張・経費管理クラウドを提供し、間接費の統合管理と業務効率化を支援している。今後、それぞれのサービスでAI新機能を拡充していく予定だ。

コンカーが提供する出張・経費管理クラウド

 従業員立替経費のConcur Expenseでは、既に「Request Assistant」と「ホテル領収書明細化」のAI機能を提供している。Request Assistantは、出張の事前申請時に交通費やホテル代などの概算金額を自動確認できる機能。またホテル領収書明細化は、日別の宿泊費の明細を自動登録してくれる機能だ。

 来春にはこのワークフローに、AIが経費精算を自動チェックするAI不正検知機能「Verify」が加わる。不正検知には年間30億件の経費精算を扱うコンカーの学習データを活用し、時間を要する確認作業を削減するだけでなく、人の目では見抜けない不正も見つけることができるという。さらに、コンカーのAuditor(監査)による人の目でのチェックも加わり、より精度の高い承認代行を行う。有料オプションとして提供され、3年間で200社の導入を目指すという。

 先行してVerifyを展開している米国では、領収書の突合や領収書の重複確認、偽の領収書かの判定、市場平均価格との照合といった、30種類以上のチェック機能を提供する。日本においては、新幹線のグリーン車やインボイス制度の事業者登録番号といった独自要素への機能対応を進めつつ、実際に提供する機能の検討を重ねていく方針。

Verifyの概要

米国で提供するVerifyのチェック機能

 コンカーのソリューション統括本部ソリューションマーケティング部部長である舟本憲政氏は、「経費精算の世界では、動機や機会、正当化の“不正のトライアングル”が存在する。構造的に不正が起こりやすいため、デジタル技術で検知する必要がある。Verifyによって、業務効率化、なんといってもガバナンスの強化を実現できる」と説明する。

コンカー ソリューション統括本部ソリューションマーケティング部部長 舟本憲政氏

 そのほか、海外出張費の「Concur Travel」では、SAPの生成AIアシスタントである「Joule」を介した出張手配機能を、2025年内にリリース予定だ。また、会社払い領域の「Concur Invoice」では、これまでパートナー連携で提供していた請求書のAI-OCR入力に標準対応。AI-OCR機能は、2024年内にリリース予定である。

 代表取締役社長の橋本氏は、「こうしたAI技術は、ビッグデータがあってこそ。我々は経費に関わるデータを全世界で一番多く持っているベンダーとして、膨大なデータを活かして新たな顧客価値を提供していきたい。新たな技術を活用してもらうために重要な、業務変革も引き続き推進していく」と語った。

すべてのコンカー製品に生成AIアシスタント「Joule」を

 発表会には、SAP Concurのプロダクトマーケティング最高責任者であるクリストファー・ジュノー(Christopher Juneau)氏も登壇。「日本は、グローバルで2番目に大きな重要市場であり、日本のユーザーに最高レベルのサービスを提供できるよう投資を継続する」と説明した。

 日本への積極的な投資姿勢の現れとして、コンカーでは9月13日、公共機関や機密データの国内管理が求められる企業向けに、国内データセンターを稼働開始したばかりだ。

SAP Concur プロダクトマーケティング最高責任者 クリストファー・ジュノー(Christopher Juneau)氏

 加えて、AIを活用した経費精算サービスの投入に注力していく方針だ。「これらのAIテクノロジーは、SAP BTP(Business Technology Platform)のAI基盤上で構築されている。BTPでは、SAPアプリケーション全体のビジネスデータも活用できる」とジュノー氏。

 SAPの生成AIアシスタントであるJouleも、まずはConcur Travelに搭載され、将来的にはすべてのコンカー製品に組み込んでいく予定だ。ジュノー氏は、「生成AIはすべての財務部門のワークフローに欠かせないものとなる」と強調した。

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