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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第342回

AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長

2024年07月01日 10時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

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 「空間コンピューティング」をうたう「Apple Vision Pro」がついに日本で発売されたが、一方でAR/VR市場は2024年第1四半期、前年同期比から67%ものマイナスとなった。アップルが参入すれば市場が盛り上がるというルールは、AR/VR市場でも当てはまらないのだろうか?

AR/VR

Apple Vision Proがついに日本でも発売されたが、AR/VR市場自体は大きなマイナスになっている

アップルが参入すれば市場は盛り上がる

 AR/VR市場は新しい市場ではない。古くはグーグルがメガネ型の「Google Glass」で挑戦し、ここ数年はMetaやHTCといった企業が注力してきた。

 アップルはVision Proを導入するにあたって「Spatial Computing」(空間コンピューティング)と打ち出し、メディアの消費やテクノロジーの利用方法を変えるとしている。

 今年1月にスタートした米国での事前注文は順調に見えたが、その後の注文でも最初の注文時と同じ出荷日(通常ならば最初の注文の出荷日より遅くなる)であることから、それほど需要はないのではという向きもあった。

 価格も約60万円と高価なこともあり、当然のことながら、一般の消費者が受け入れるのは時間がかかる。実際にApple Watchもすぐに広く普及したのではないのだ。

 Vision Proは価格に加えて、日常で使うにはためらわれるような外観と重さ、そしてこれといったキラーアプリがないことなど、さまざまな要因があっての現在だろう。もちろん、入手できる市場がまだ限定的である点も留意したい。6月には日本、中国、香港、シンガポールで発売し、続いて7月にも英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなどに拡大する。

2024年第1四半期は前年同期比67%マイナス
通年では7%プラス成長見込む

 そのような中で発表されたのがIDCの定期調査だ(https://www.idc.com/promo/arvr)。それによると、AR/VR市場は2024年第1四半期、前年同期から67.4%の減少となった。IDCは台数を発表していないが、30万台程度ではと予想されている。

 シェアトップを走るのはMeta、続いてアップルが早くも2位に入った。そのほか、上位5位にはByteDance、Xreal、HTCが含まれているとのこと。

 IDCは前年同期比減は予想されていたとする。その理由として、「市場はMixed Reality(MR)、Extended Reality(ER)などを含む新しいカテゴリに移行しつつある」としている。そして、市場の縮小にもかかわらず、アップルの参入、「Quest 3」などMetaのプレミアムへのフォーカスにより、平均販売価格(ASP)は1000ドルを上回ったとしている。

 Vision Pro、Quest 3はユーザーを啓蒙し、開発者がデジタルと物理世界を組み合わせたMRコンテンツを開発するきっかけとなったが、まだまだ高価な製品にとどまっているする。

 MRが台頭しつつある中、VRヘッドセットはこれから衰退すると予想している。一方でERは「近い将来AIとヘッドアップディスプレイを組み込み、現在の大画面体験を提供することで、消費者の注目を集めるだろう」とIDCでワールドワイドモバイルデバイス担当アナリストのJitesh Ubrani氏は語っている。

 価格については、ARヘッドセットはASPが1000ドルを超えているが、VR/MR/ERの各ヘッドセットはこれを大きく下回るという。想像に難くないが、今後すべての製品分野で価格は低下すると予想している。

 なお、Appleは1500ドル~2000ドルの価格帯のヘッドセットを開発中と、Bloombergのアップル担当のMark Gurman氏は推測している(https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2024-06-23/apple-vision-plans-cheaper-model-in-late-2025-vision-pro-2-in-2026-ar-glasses-lxrjk6wu)。

 IDCは、2024年後半には成長モードに戻り、通年の出荷台数は2023年から7.5%増になるとの予想を出している。そして、2024年から2028年まで、年間平均成長率43.9%で成長するとしている。

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