Sonova Consumer Hearing Japanは、ゼンハイザーブランドのスポーツ向け完全ワイヤレスイヤホン「MOMENTUM Sport」を4月9日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭での販売価格は6万円弱。4月2日から予約を受け付ける。
年明けのCESに合わせて、第一報が出ているが、製品の全容が明らかになった。メーカーの調査によると、アスリート、スポーツ愛好家がスポーツ中にイヤホンを装着する割合は87%にも及ぶという。音質が良くて機能的なものを求める傾向があるという。
ひとことで言えば“超本格派”のスポーツイヤホンだという。これは音質・機能の両面からメーカーが主張しているポイントだ。
外音取り込みやアクティブ・ノイズキャンセリングといった完全ワイヤレスイヤホンの機能に加え、パフォーマンストラッキングセンサーを搭載。心拍数に加え、体温もトラッキングできる。
スポーツに向けたイヤホンの音を再定義
スポーツ用の音響システムを構築するという観点では、ジムでも屋外でもシーンを選ばず高音質が得られる点が重要になる。また、アスリートが好むビート感や、運動に伴い、自分の息や足音を意識してしまうオクルージョン効果の少なさにも配慮する必要がある。そのために、選択したのがセミオープン型だ。「SPORT True Wireless」など、イヤーピース交換によって密閉感を変えられる製品はこれまでもあったが、本体そのものをセミオープン化したのは、ゼンハイザーとして初だという。
音質面でのポイントは、新たに直径10mmのTrueResponseトランスデューサーを採用している点が挙げられる。
もともとゼンハイザーはシングルダイナミック構成にこだわっているブランドだが、伝統的に採用してきたのは直径7mmの振動板。これをひと回り大きくするともに、インピーダンス12Ωの新しいコイルやオーディオファイル向けの「HD560S」と同じ複合素材の振動板を使用することで、より力強い振動板の動きを創出して豊かな低域を再現できるようにしたという。運動時に発生する足音や衣擦れの音などに負けない、繊細さと力強さを兼ね備えた、鮮やかな音が出せると自信を示す。セミオープン型は、装着時の密閉感が少なく外音も意識できるが、そのぶん低域の音圧感が落ちてスカスカな感じの音になる面もある。そうならないようにするための配慮が大型ドライバーの採用や振動板素材・コイルの改善というわけだ。
スポーツに最適化したイヤホンという観点での注目は、エアベンチレーションを最適化する“アコースティクリリーフチャンネル”機構だ。イヤホン本体に空気が入りやすい構造にすることで、サウンドのこもりをなくし、パフォーマンスに集中できるという。
Bluetoothコーデックには、aptX Adaptiveも利用できる。イヤホン本体はIP55の防滴防塵仕様(ケースはIP54)となっているため、荒天や汗などに強い。耐久性も衝撃や落下に対する試験で確認している。音質を維持した上でのバランスに苦心した結果のようだ。ケース側の防滴防塵性能を高めたのは、屋外にいる際に突然天気が変わった場合にも備えられる点を配慮してのことだという。
心拍数だけでなく体温も分かる賢いデバイス
パフォーマンストラッキングセンサーで心拍数と体温を気軽に計測できる点も特徴だ。心拍数と体温のデータを併用することで、パフォーマンスの改善や目標の設定(負荷の増減)などのほか、回復・休息をうながしたり、熱中症リスクの管理といった応用ができる。
こうしたセンサーを持つデバイスとしてイヤホンにはいくつかのメリットもある。まず、心拍数の取得という点では、皮膚が薄い耳の血管に触れるため正確性が高く、耳は運動中でも比較的安定して装着しやすい場所である。また、イヤーチップの変更による装着感の調節など快適性にも優れている。心拍数だけでなく体温も測れる機種は現状では少ないため革新性もある。加えて、スポーツアプリやデバイスとシームレスに接続できる利便性、鼓膜は中核体温に近いためアスリート用の信頼性の高い体温が取れるといった利点もあるという。
トレーニング中の心拍数や体温情報の取得は、かつては専門家の立ち合いや専用機器を用いた大掛かりな準備が必要だった。これがいまは、低コストかつ簡便に利用できるのがいい。すでに述べたように、心拍数だけでなく体温まで測れるイヤホン製品は市場ではまだ少ない。
心拍数と体温は純正の「SmartControl」アプリで参照できるほか、フィンランドのスポーツウォッチブランドPolarとの連携機能も用意している。アプリ「Polar Flow」を用いることで心拍数と体温の両方をトラッキング可能となる(発売後のアップデートが必要)。なお、心拍数情報の共有はアップル(ヘルスケア)を始めとした、それ以外のフィットネスアプリ、デバイスにも渡せるそうだ。
なお、Apple Watchなどと併用する場合は心拍センサーがかぶってしまうが、その場合は、ペアリング先をMOMENTUM SportsにするとMOMENTUM Sportsのセンサーを用いて心拍数をトラッキングするようになるという(そうしないとApple Watchの側のセンサーを使用する可能性がある)。
高い装着感と十分なバッテリー駆動時間
最新鋭のハイブリッドアダプティブノイズキャンセリングや外音取り込み機能も装備している。ジムなどでトレーニングに集中したい場合でも、ジョギングで外に出る場合でも柔軟に利用できる。
動くスポーツゆえに重要な装着感については、補聴器のSonovaが持つ膨大な耳型のデータベースを有効活用し、シェイプを追い込んだという。激しく動いても外れたり、落ちたり、ズレたりしない製品となっている。3サイズのイヤーピースと4サイズのイヤーフィンが付属。
実際に使用した人の意見として、これを使って長距離を走った際にもワイヤレスイヤホンの位置を直す必要がないほどだったという。
ほかのゼンハイザー製品同様、音質のカスタマイズにも対応。ただし、MOMENTUM True Wirelessの特徴であるサウンドパーソナライズ機能は利用できない。バッテリー駆動時間は本体のみで最大6時間(ケース充電併用で最大24時間)とのこと。