第13回 and SORACOM
チャレンジはいつのまにか自分たち、お客さま、社会の「三方よし」になっていた
残量検知デバイスでエンジンオイル販売を変えたFUKUDAとSORACOM
提供: ソラコム
外販に備えて商標や特許も取得 他社用はすでに自社用を上回る
もともと、自社の業務効率化を前提に作り始めた残量検知デバイスや見える化のシステムだが、実はビジネスプランとして第三者の声が反映されることになった段階で、外販を視野に入れている。
そのための1つの施策が商標や特許などの知財施策だ。FUKUDAの「オイルマネジメントシステム」は商標のみならず、液体配送システムとして特許を取得している。すでに商圏が異なる同業者にシステム自体を販売しており、同社のビジネスの2本目の柱に育てていく予定だ。「同規模の会社にとっては、コストをかけて同じものを作る意味は乏しい。われわれのシステムを使った方がメリットがあります。全国にシステムを拡げて行きたい」と福田氏は抱負を語る。
こうした外販への種まきは、予想以上に早く成果を挙げている。昨年はボルボ・カー・ジャパンと提携し、国内のカーディーラー108店舗すべてにFUKUDAの環境配慮型エンジンオイル配送システムが導入されている。「それまでオイルの発注は専用端末で発注するか、FAXでした。でも、センサーを付けたことで、今では残量が30%を切った段階で、店長にメールが飛び、そこに張られたリンクからそのまま自動発注できるようになりました」(福田氏)とのことだ。
この事例も、もともとオイルメーカーのBPカストロールがボルボに紹介したことで実現した提携だ。FUKUDAはBPカストロールの販売代理店の立場だったが、この提携ではシステムを提供するサプライヤーとなり、オイルの配送は別の業者が行なう。フランスのオイルメーカーのモチュールとも同様の取り組みを始めている。そして、こうした外資メーカーのアジア展開を見越して、グローバルに強いSORACOMを採用したという一面もある。
残量検知デバイスの台数は自社利用よりも、他社の方が多くなった。「自社向けで約750台、他社のシステム用はすでに1200台を超えています。毎月利用料をいただいているので、安定したビジネスにつながっています」(福田氏)。まさにゲームのやり方自体を変えてしまったわけだ。
気がつけば、「売りよし、買いよし、世間よし」
福田氏は、「ITやIoTを当たり前のように使っていかないと、この絵の通りにはならないんですよ」と語る。この絵とは、冒頭にも説明した社屋の壁一面に書かれた「未来の仕事の作り方」というFUKUDAのビジョンを表したイラストだ。
次の50年、100年先を見据えた未来像の中で、FUKUDAはどういう社会的責任を果たしていくべきか、社長が選択したメディアは絵本だった。「『会社案内をやめましょう』をやめて、この会社が今やっていることと、未来がどうなるのかを書きませんか?と、制作会社さんに提案いただいたのです。だったら、会社案内をやめて、『未来の仕事の作り方』にしようと思ったんです」と振り返る。
福田氏がIoTで実現したかったのは、当初はあくまで「会社の売上を上げること」でしかなかった。顧客のオイルの残量が遠隔でわかれば、効率的な配送が可能になるため、業務の負荷か減る。こうなるとうれしいのは休みが増え、生産性の高い業務に時間を振り分けわけられる従業員だ。
しかし、残量検知のみならずオイルマネジメントシステムにまで進化したことで、顧客にも「オイルの管理が要らなくなる」というメリットが生まれる。最終的には量り売りを展開することで低コストと省エネが実現され、仕組み自体を販売することで、業界全体がハッピーになる。気がつけば、「売りよし、買いよし、世間よし」という近江商人を地でいくビジネスをきちんと展開していたわけだ。
残量検知デバイスの次の使い道は、仮設トイレの漏水対策だという。「工事現場の方は、仮設トイレのふたを開けて、満水になっていないか、必ずチェックしないといけないのです」と福田氏は語る。特にトンネル工事では、数百台の仮設トイレが用意される。残量検知デバイスで残量を検知することで、効率的な汲み取り手配が可能になる。
目指すのはオイル配送より、センサーも、エネルギーではなく、むしろ液体の検知に力点を置く。だから、仮設トイレの漏水対策のような、エネルギーと異なるベクトルの案件につながっている。「電気自動車の普及を控えたオイル配送は、今後拡大しない縮小マーケットです。だから、次を見据えてビジネスを考えると、こういう方向性になります」(福田氏)は、リキッドデリバリーという新しい領域への開拓を始めている。創業から55年目を迎えつつ、サステイナブルで、ビジョナリなFUKUDAは、これからもますます進化を続ける。
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