Rinenna開発者・平島利恵さん/震災やNY滞在で得た気づきから 洗濯洗剤や布おむつを開発
人生100年時代といわれる昨今、自分らしい働き方や暮らし方を模索する女性たちが増えている。そんな女性たちに役立つ情報を発信するムック『brand new ME! ブランニューミー 40代・50代から選ぶ新しい生き方BOOK vol.1』(KADOKAWA刊)から抜粋してお届けするインタビューシリーズ。今回は、“激オチ”と話題の人気洗濯洗剤「Rinenna(リネンナ)」開発者の平島利恵さんに、起業発案から事業化に至るまでのお話を伺った。
汚れが簡単に落ち赤ちゃんにも優しい洗剤があれば
平島さんは大学の文学部を卒業後、株式会社リクルートに入社。転職を経て2011年1月に第1子を出産した。最初の事業となる布おむつ専門店を立ち上げるきっかけになったのは、出産直後に起こった東日本大震災だったという。
「第一子を出産した2カ月後くらいに東日本大震災が起こって、紙おむつがどこへ行っても売り切れで買えなくなってしまったんです。それがきっかけで初めて布おむつを使いました。『布おむつならゴミが出ないし、洗えば繰り返し使える。赤ちゃんにとっても良いものなのに、なぜこんなに使いづらいんだろう?』と気づいたんです。これが布おむつの事業を始めるきっかけとなりました」
その後、平島さんは2013年から2015年の間、夫の仕事の関係でNYに滞在。アメリカ人のママ友の一言がきっかけで洗剤の開発を始めることになる。
「NY駐在中、アメリカ人のママ友に『なぜ日本人はもみ洗いをするの? 漂白剤を入れてきれいにすれば楽なのに』と言われたんです。それはもう雷に撃たれたような衝撃で、『アメリカ人はそんな楽に洗濯をしているの!?』と思いました。と同時に、『赤ちゃんの衣類に強力な漂白剤を使うのはちょっと……』という不安もありました。それならばと、もみ洗いをしなくてもよくて、赤ちゃんの衣類にも使える優しい洗剤があればみんながハッピーになると思ったんです」
布おむつユーザーの市場規模を考慮し、布ナプキンに応用
布おむつ用の洗剤を作りたいと思いついたら、いても立ってもいられなくなったという平島さん。すぐに帰国して洗剤の開発を始めたものの、まず立ちはだかったのはマーケットの小ささという問題だった。
「今、日本では出生数が80万人を切っていて、布おむつユーザーはその中のわずか4%しかいません。ですから、洗剤を開発したとしても、売る先がない状態なんです。そこで類似品として思いついたのが、布ナプキンでした。布ナプキンなら使っている人が増えてきている状況でしたので、友人らに『布ナプキンの汚れを落とす研究をしたいから、洗剤を使ってみてほしい』と配ったんです。そのときに『汚れがついた状態と、洗濯した後の両方の写真を撮って送って』と伝えたところ、すごく驚かれてしまうこともあったんですけど、何人もの友人の協力があったおかげで洗剤「Rinenna」が生まれました。『自分の汚れだけで試せばいいのではないか』という声もいただきましたが、研究を重ねていると、どうしても洗濯の仕方が手慣れてきてしまうんですよね。洗剤を渡して、口頭で使い方の手順を説明しただけという状態で使ってもらい、きちんと汚れが落ちるかどうかを検証したかったんです」
誰も傷つけずに人に幸せをもたらす事業を
洗濯研究家として活動する平島さんだが、学生時代は戦争のドキュメンタリーを観たことをきっかけに、地雷撤去の活動に携わることを志していた。しかし、命の危険がある仕事だと心配した両親からの反対を受け、自分に何ができるのかを考えた結果、人に幸せをもたらすことにチャレンジしたいと思うようになったそう。そんな平島さんが物事に取り組むときに心がけているのは、人の批判をしないこと。言葉にすると普遍的なことかもしれないが、事業を展開するうえで、その意識をしっかりと持つことには大きな意味がある。
「Rinenna の商品に関しても、本当は他社商品よりも優れていると言いたい気持ちはあります。その方が売れるかもしれません。ただ、そうすると比較された方が傷つきますし、私とは違う視点で商品を開発していた可能性もあ るんですよね」
持ち前のアイデアと粘り強い探究心で、複数の事業を実現してきた平島さん。キャリアチェンジの支えにしてきた考え方がある。
「何か問題が起きて壁にぶつかっても、私の心は折れないと決めています。折れずに〝しなるんだ〟とイメージするようにしています。ポキッと折れてしまったら修復が大変ですが、しなればまた戻るときに勢いがついて、大きく変わるきっかけにもなりますよね」
Profile:平島利恵
ひらしま・りえ/株式会社Heulie代表取締役。1981年、関西生まれ。武庫川女子大学卒業後、株式会社リクルートに入社。じゃらんのEC事業に携わる。株式会社マクロミルへ転職。東日本大震災をきっかけに布おむつ専門店を立ち上げ、EC 事業を展開。夫の転勤でNY滞在中に揉み洗い不要のつけ置き洗剤の着想を得て帰国。株式会社Heulieを設立し、洗濯洗剤と布ナプキンブランド「Rinenna」を展開。著書に『洗濯を見直すだけで人生が変わる!新・お洗濯メソッド』(KADOKAWA)がある。
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