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5Gミリ波の利用促進狙いで、ドコモがスカイツリータウンでXRイベント開催

2023年10月14日 11時00分更新

文● 佐野正弘 編集●ASCII

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 ドコモは10月14日から2日間にわたって、5Gのミリ波による高速大容量通信と、XRを融合した体験型イベント「XR絶滅動物園」を、東京スカイツリータウンで開催。それに先駆けて13日に、同社は記者向け説明会を実施した。

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ドコモは10月14日から、東京スカイツリータウンで「XR絶滅動物園」を開催。5Gミリ波とXRの融合を体験するイベントになるという

◆5Gのミリ波は負のスパイラルに陥っている
それを打破するためのイベントを開催

 このイベントはドコモと、NTTグループでXR事業を担っているNTTコノキュー、そしてIMAGICA EEXの協力によって開催されるもの。説明会に登壇したドコモのChief Standardization Officerである中村武宏氏によると、同イベントの狙いは5Gのミリ波の活用用途を広げることにあるという。

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説明会に登壇するドコモの中村氏。イベントの狙いは5Gミリ波の利用拡大にあると話している

 日本の5Gは大きく分けて、4Gから5Gに転用して使っている3.5GHz以下の低い周波数帯と、5G向けとして新たに割り当てられた「サブ6」に分類される3.7~4.5GHz帯の周波数帯、そしてサブ6よりも周波数が高い「ミリ波」に分類される28GHz帯の3つが用いられている。このうち転用周波数帯は4Gと通信速度が大きく変わらない一方、5G向けの周波数帯は周波数帯域の幅、要はデータの通り道が非常に広く、サブ6で100MHz幅、ミリ波で400MHzとなることから高速大容量通信にとても適している。

 だが一方で、電波は周波数が高いほど遠くに飛びにくく、とりわけ周波数が高いミリ波は遠くに飛ばず、狭い範囲しかカバーできないという弱点がある。それゆえ、ドコモもミリ波を導入したエリアはごく一部に留まっているのが実情だというが、それでも日本はまだミリ波が活用されている方。世界を見渡すと、日本と米国以外ではほとんどミリ波の活用が進んでいない。

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ミリ波は周波数帯域幅が非常に広く従来にない高速大容量通信を実現できる一方、電波が遠くに飛びにくくカバーできる範囲が非常に狭いことが大きな課題となっている

 中村氏はその理由について、ミリ波のカバーエリアが狭いことから整備が進まず、整備が進まないので端末の開発が進まず、端末が出てこないのでユースケースの開拓も進まない……と、ミリ波の弱点を起因とした「負のスパイラル」に陥っていると話す。

 だが今後のトラフィック増加によって、人が多く集まる場所などではサブ6でも近いうちにトラフィックを賄いきれなくなることから、今後ミリ波の活用は必要不可欠だと中村氏は説明する。

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ミリ波は、エリアが狭いので対応端末が増えず、ユースケースが増えないという「負のスパイラル」に陥って普及が進んでおらず、それを打破することが求められている

 加えて今後はXRや4K/8Kの映像など大容量を必要とするサービスが増えると見込まれているほか、6Gでより周波数が高い「サブテラヘルツ波」の活用が見込まれていることなどを考えると、現在からミリ波の活用を進めておくことが重要だ。

 今後に向けたミリ波の利用促進のためには一連の負のスパイラルを正のスパイラルに変えていく必要があり、そのためにはミリ波のユースケースを増やして、徐々にでも流れを変えていく必要があるとのことで、そのために企画されたのが今回のイベントなのだ。

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今後一層増加するトラフィックに対応し、なおかつ大容量通信を必要とする新しいサービスへの対応や、6Gへの進化に向けた対応を進める上ではミリ波の活用は必要不可欠とのことだ

 今回のイベントはエンターテインメント分野におけるミリ波活用の可能性を訴求するものになるとのこと。多くの人には通信速度を見せても響かないことから、ミリ波を使うとこんなことができる、という具体的な活用事例を見せることで関心を持ってもらうことに重点を置いている。社会全体にミリ波の活用を訴求して、正のスパイラルを回していきたいと、中村氏は今回のイベントに対する意気込みを見せている。

◆ミリ波の高速大容量通信をフルに活かした
3つのコンテンツを楽しめる

 会場となる東京スカイツリータウンの4階にある「スカイアリーナ」には、ビルの上部に5Gのサブ6に加え、ミリ波のアンテナが設置されている。そこで説明会では100Mbpsの4K映像を、13台のミリ波対応スマートフォンで同時再生するというデモも披露され、カバーできるエリアは狭いがエリア内であれば非常に高い通信性能を持っている様子を示していた。

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会場となる東京スカイツリータウンの「スカイアリーナ」付近にはミリ波のアンテナが設置。右から4番目がミリ波のアンテナで、左端がサブ6のアンテナになるとのこと

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ミリ波の実力を示すべく、4K映像を13台のミリ波対応5Gスマートフォンで同時にストリーミング再生するデモも披露された

 そのミリ波の高い性能を活かして提供されるコンテンツは大きく3種類あり、1つ目は「目撃せよ!ティラノサウルスVSトリケラトプス AR観戦」というもの。これは文字通り、ミリ波による高速通信とAR技術を用いて、CGによる恐竜同士の戦いを現実世界に呼び出すというものだ。

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「目撃せよ!ティラノサウルスVSトリケラトプス AR観戦」は、文字通り高速通信とAR技術を活用し、現実世界に恐竜同士の戦いを再現するものとなる

 こうしたコンテンツ自体は4Gの通信でも提供できるというが、最大の違いはデータ量とグラフィック品質にあると中村氏は話す。4Gの環境で快適に楽しめるコンテンツを提供するうえでは50MB程度のデータ量が必要だというが、5Gのミリ波やサブ6であればより高品質なグラフィックに対応した、200MBを超えるデータ量のコンテンツを、その場でダウンロードして快適に楽しめるとのことだ。

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大容量データ通信が可能なミリ波の活用によって、より大容量のコンテンツを提供できることから恐竜のグラフィックの質も大幅に向上しているとのこと

 2つ目は「救出せよ!タイムスリップレスキュー!マンモス救出大作戦」というもの。こちらは複数の人数で同時に同じゲームを体験できるというもので、参加者全員で石や槍などをぶつけて氷塊を壊し、凍ったマンモスを救出するのが目的だ。

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「救出せよ!タイムスリップレスキュー!マンモス救出大作戦」は、スマートフォン上で石や槍などを投げて目の前の氷塊にぶつけて壊し、マンモスを救出するゲームだ

 会場ではスマートフォン10台、MRグラス(Magic Leap 2)3台を同時に接続し、同じ空間の中で参加者の位置を検知し、リアルタイムで協力してのゲームが可能。加えてスマートフォンのゲーム画面描画はデバイス上ではなくクラウドで処理されており、クラウドレンダリングされた4Kの映像を、リアルタイムで多くのプレーヤーにストリーミングしながらプレイできるという点に、ミリ波の実力が存分に活かされていることがわかる。

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最大13人での同時プレイが可能で、他のプレーヤーの方を向くと仮想世界上でのプレーヤーがしっかり表示される

 そして3つ目は「体感せよ!恐竜を触ろう。タッチ トリケラトプス」というもの。こちらはミリ波に加え、ドコモが開発している「人間拡張基盤」を用いて触覚を共有する「FEEL TECH」を用い、絶滅した恐竜の皮膚や角の感触を体験できるコンテンツだ。

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「体感せよ!恐竜を触ろう。タッチ トリケラトプス」では、映像に合わせて手を動かすことで恐竜の皮膚の感触を体験できる

 FEEL TECHは今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「MWC Barcelona 2023」などでも披露されたもので、半球状のデバイスを両手で持ち、映像に合わせて動かすことでネットワークを通じた触覚を共有できる仕組み。

 今回のイベントではそれを古生物学者の監修の元に、恐竜に近い質感を体験できるものにアレンジしており、触覚データ自体はそれほど大きくないというが、高品質の映像と一緒にデータを送るのに高速大容量なミリ波が有効活用されていると中村氏は話している。

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触感の再現には「人間拡張基盤」の「FEEL TECH」が用いられており、それ自体のデータは大きくないものの、映像と同時にデータを送ることからミリ波による大容量通信が有効だという

 対応デバイスがハイエンドなど一部に限られるうえ、国内ではiPhoneも非対応なミリ波。ミリ波の実力を体験した人は非常に少ないだろう。それだけに、ドコモとしては今後全国でミリ波を活用したイベントを実施し、ミリ波の実力と重要性を認識してもらい、利用拡大につなげていく方針を明らかにしている。

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