業務を変えるkintoneユーザー事例 第204回
連携サービスの活用で40万枚以上のペーパーレス化
社内浸透には応病与薬 「とりあえずやってみる」で始めたモリビのkintone活用
2023年10月11日 11時00分更新
kintoneのユーザー事例を共有しあうイベント「kintone hive tokyo 2023」の4番手として、僧侶姿のモリビ 植田剛士氏が登壇。同氏によるセッション「とりあえず、やってみる。」のレポートを紹介する。
とりあえずやってみるかで始めたkintone
モリビは長野県長野市で主に不動産管理やリフォーム、空き家活用といった業務を手掛け、25周年を迎えた。経営企画室で働く植田氏は僧侶の装いで登場。お寺に行くと気分が楽になるところに魅力を感じ、働きながら出家をしたとのこと。長野県山形村にある浄土宗見性寺で副住職を務めている。植田氏の軽妙なトークに、観客はみな聞き入った。
モリビの課題はご多分に漏れず、超アナログ会社だったことだ。情シスもおらず、ミスを防ぐためにチェックするのだが、そのチェックも複雑化して目的化してきていた。
たとえるなら、1kmのマラソンを命じられた時に、熱中症になったら嫌だな、脱水症状起こしたら嫌だな、途中で何かあるかもしれない、と10リットルのスポーツドリンクを持って出発しているようなものだという。スポーツドリンクを運んだことに達成感を感じるなら、やらなくていいことをやって、やった気になっている状態ということだ。
「こういった問題を解決するために、kintoneを導入をするという綺麗な話であればよかったですが、うちの場合は、新しいもの好きの社長が持ってきました。社長がお客さんからアンケート取りたいので、やっちゃおう!といった感じで始めました。導入したからには活用しないといけないので、植田、あとはよろしくという流れでございます」(植田氏)
内心は「何を言っているんだこの人は」と考えたそうだ。ちょっと1か所の仕事が変わっただけで大騒ぎしているのに、デジタルのツールを導入して業務改善をするなど、絶対に無理だと思うのも当然だろう。
とは言え、解決したい問題がいろいろあるのも現実。そこで、とりあえずやってみるか、とkintoneを使い始め、まずは、ペーパーレス化にチャレンジした。
「応病与薬」で社員と対話、いきなり40万枚以上ものペーパーレス化
kintoneの基本機能で、紙でやっていた業務を代替させていった。バラバラになっていた情報をまとめて、共有し始めた。その結果、不用意にアプリが量産される結果となった。
「本当にあるあるだと思いますが、kintoneの担当者さんから、最初の1~2か月、こんなことができるんだと言われて、楽しくて、めちゃくちゃアプリ作ってしまいますよね。このようなことを繰り返していたら、社内で独裁者と呼ばれてしまいました」(植田氏)
困った植田氏はリスタートを切ることに。どうすればいいのか考えたところ、お釈迦様の「応病与薬」という言葉に行きついた。たとえば、病院に行くと、患者の状態に適した薬を処方してくれる。つまり、kintoneを導入する際も、その人の苦しみ、その人の悩み、その人の個性、それそれぞれに合った教え方をする必要がある、と思い出したそうだ。
「それは、違いを受け入れるということでもあります。たとえば、ここに立ってる私は私で、今日ここに来ている皆さん1人1人が全員違います。それでいいんです。1回言ってわかる人もいれば、3回言わなきゃわからない人もいる。それが当たり前だということを思い出して、今一度、社員の皆さんと話をしました」(植田氏)
植田氏が考えるDXは、やはり紙があっては始まらない、改めてペーパーレス化に取り組む。まずは、FAXを「DocuWorks」(富士フイルム)に置き換え、紙のやり取りをkintoneで行なうようにした。
その結果、なんと1年間で、42万3840枚ものペーパーレス化を実現した。縦に積むと38メートルにもなる量だ。kintoneの基本機能だけで、紙の業務の95パーセントを削減し、紙のコストも28万円削減することができた。
何かを導入したり、新しいことを始める時は、何かをやめるのをセットにして考えるとうまくいく、と植田氏。たとえば、稟議をなかなか通してくれない上司に対して、やめることもセットで提案すると通る可能性が高まるという。

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