日本だけでなく世界でも注目の超短焦点プロジェクター
RGBレーザー搭載、設置も調整も極めて簡単なNOMVDIC「P2000UST-RGB」を使ってみた
2023年09月29日 17時00分更新
RGBレーザーは高輝度で色も鮮やか、明るい部屋でも気軽に使える
さっそく映画を見てみよう。画質は鮮やかな色で、DLPプロジェクターらしくくっきりしている。RGBレーザーの採用は高輝度だけでなく、コントラストの向上にも貢献する。暗部の階調表現も含めて、なかなか良好な映像だ。
スポーツカー好きにはたまらないアクション大作「ワイルド・スピードX」のUHD BD版を見た。
HDR方式はHDR10のほかHLG方式にも対応するので、4Kテレビ放送の視聴もOKだ。ブラジルで行われた市街地レースの場面を見てみたが、夜の暗さとネオンや花火などの鮮やか光が鮮やか。黒も締まるし、暗部の階調感も十分に優秀。4Kの精細感もしっかりとしていて高性能なスポーツカーのディティールが鮮明だ。
RGBレーザー光源は、なんとBT.2020の色域を100%カバーしているそうだ。色の再現はかなり鮮やかで濃厚。ワイルド・スピードXでは艶やかなカラーリングも実に鮮やかに再現する。
個人的にはやや濃いめにも感じるが、過度に色が濃すぎるとか、肌の色が不自然になるほどではない。忠実な色をキープしつつ味付けを加えたという印象だ。ちょっと惜しいのは、HDRモードでは色温度などの微調整ができる代わりに、基本的な色の濃さやコントラストの調整ができなくなること。色の濃さ以外は特に調整を必要とはしないが、好みに応じてあれこれといじりたい人にはやや物足りないかもしれない。
場面は変わって、主人公であるドムの息子と弟のふたりが、ドムと合流するために激しいカーチェイスをするシーン。明るいシーンは太陽の光や車体の輝きも眩しいほど。単に高輝度というだけではなく、白とびもせず階調性も残している。十分に優秀な性能だ。このあたりの映像の再現はなかなかよくできている。DLP方式特有の色割れ現象はあるが、映像の動き自体は鮮明でスピードの速い動きも残像なくよく見える。
SDR映像は、BD版の「バビロン」で試してみた。SDR映像の場合、画質モードは明るい/テレビ/映画/ゲーム/ユーザーが選択でき、画質調整もきちんとできる。
映画モードで見た、冒頭の夜会のシーンは、豪勢ならんちき騒ぎの様子を濃厚な映像で再現し、なかなか見応えがあった。色の豊かさなどはHDRとSDRでの違いこそあるが、基本的には同じ傾向。やや濃いめながら忠実感をキープしたものになっている。映画では好みの差が出そうだが、テレビ放送やアニメなどを観る人にはかなり相性のいい鮮やかかつ楽しい画づくりになっている。
内蔵するharman/kardon製スピーカーは、ステレオ再生にはなるが、音質はなかなか良い。ワイルド・スピードXならば車のエンジン音や派手な爆発音の迫力があるし、バビロンならばゴージャスなビッグバンドの演奏を生き生きとした音で楽しめる。スマホの音楽をBluetoothで飛ばしてスピーカーとして使う用途の満足度も高いだろう。
価格的にもなかなか魅力的、特大画面を楽しみたい人への有力候補だ
P2000UST-RGBは、リビングに置くことを意識したデザインの良さ、設置・調整の簡単さ、十分なできの画質など、かなり魅力的な製品であるとわかった。約40万円という価格は、高級クラスの液晶/有機ELテレビと同じくらいなので、画面サイズを優先する人には有力な候補になるだろう。
国内メーカーの高級プロジェクターを買おうとすると、100万円を超えるような予算が必要になる場合もある。映像の立体感や質感の再現など細かな部分での差はもちろんあるが、色の鮮やかさや発色の良さ、コントラスト感といった基本的な要素はこうした機種にかなり迫れる実力があると感じた。
機能面で要望したいのはプロジェクターでも増えてきたAndroid TVの搭載など、家庭用テレビが備える機能性の充実。また、マニア向けにはなるが、HDRモードでの詳細な画質調整機能などだ。これらが揃えば、大ヒットが期待できるモデルになると思う。とはいえ、やはりこうしたミドルクラスのプロジェクターは海外勢が強いと改めて感じた。本格的なホームシアターを目指す人にもちょうどいい価格帯でもある。NOMVDICのP2000UST-RGBはぜひ注目してほしい機種だ。
薄型テレビが大画面化すると、使わない時の巨大な黒い板の存在が気になってくる。リビングの美観を重視する人にとっても、超短焦点プロジェクターは良い選択肢だ。いままでプロジェクターに馴染みがなかった人、専用ルームを構えるほどではないがリビングで大画面を体験したいという人は、超短焦プロジェクターをチェックしてみてほしい。