国内外で会員数5600人以上!40代・50代でも手に職をつけられる「ハンドメイドリボン」とは?
人生100年時代といわれる昨今、自分らしい働き方や暮らし方を模索する女性たちが増えている。そんな女性たちに役立つ情報を発信するムック『brand new ME! ブランニューミー 40代・50代から選ぶ新しい生き方BOOK vol.1』(KADOKAWA刊)からお届けするインタビューシリーズ。今回は、ハンドメイドリボンを教える協会「M-StyleLuxe」の設立者である山口路子さんにキャリアチェンジの体験と開業に至った経緯をお聞きした。
プリザーブドフラワーで自宅サロン運営をスタート
プレゼントに添える飾りとして、髪やバッグなどの持ち物に付けて楽しむアイテムとして、おしゃれで可愛らしいリボン。このリボンを用いたアクセサリーの作り方や、アレンジ方法を教えるハンドメイドリボン協会を日本で初めて設立したのが山口路子さんだ。現在は国内外に6千人近くの会員がいる大きな組織だが、もともとは山口さんの自宅の6畳ほどのスペースで数人に教えるサロンからスタートしたそう。そんな山口さんは、スクールや協会を立ち上げる前は美容部員やエステティシャンとして働いていた。
「短大を卒業した後、海運会社での勤務を経て美容部員として働き始めました。もともと美容が好きで美容部員として働いていたのですが、あるとき雑誌で、自宅でサロンを開けるサロネーゼのことを知って、『これだ!』と思ったんです。それからプリザーブドフラワーのレッスンに通い始め、いつか独立してお花かエステのサロンを開きたいと考えていました。エステは技術習得のためにスクールに通い始めたのですが、一度どこかのお店で働いたほうが良さそうだと感じて、エステサロンに転職しました」
山口さんがエステティシャンになったのは29歳のとき。未経験で最年長という立場に最初は苦労したそうだが、その悔しさをバネにしたところ、売り上げが1位に。店長を経て営業部長にまで昇進し、店舗やスタッフの売り上げを伸ばすための指導まで任されるようになった。 「エステティシャンの仕事はすごく楽しかったのですが、夜遅くまで仕事をすることも多かったので、長くは続けられないなと思っていました。その頃ちょうど結婚も決まっていたので、プリザーブドフラワーのレッスンを自宅で始めたんです。引っ越しをきっかけにレッスン用の部屋も作って、アーティフィシャルフラワーの講座もスタートさせました」
子どもの頃から好きだったリボンが仕事になった
この後、山口さんはお花のサロンを展開しつつ、今のメインとなるリボンの講座を始めることになる。三姉妹の真ん中に生まれた山口さんは、とても活発な少女だったが、子どもの頃から可愛いものや美しいものへの関心が強く、マスコットを手作りしたり、集めたリボンをハンガーにかけて自分の部屋に飾って眺めたりしていた。「もともとリボンは好きで、小学生の頃からかなり集めていたんです。出産後は娘の髪にリボンを付けてあげていたのですが、娘がよく取って投げたり壊してしまったりしていたんですね。それで、私がリボンを見よう見まねで作って付け直していたのをお花の生徒さんが見て、『かわいい! どこのですか? 作り方教えてほしいです』と言われるようになったんです」
そのとき、リボンを販売しているお店はあっても、作り方をトータルで教えている人はいないことに気づいた。「誰もしていないのなら、お花のコースレッスンをリボンに置き換えて教室でやってみたらいいのではないかと思って、リボン講座のカリキュラムを作り、コースレッスンを始めました。当初は、お花のレッスンも並行してやっていたのですが、すぐに軌道に乗って。ちょうど戸建てに引っ越したのを機にリボンの教室をメインにしました」
受講者が集まりすぎて、家のあらゆる場所で教えていた時期も
教室は自宅で開催し、先行していたプリザーブドフラワーの教室で使っていたリボンを流用できたため、初期投資は少なく済んだ。また、花の資格を持っていることで各種資材も安く仕入れられた。しかし、立ち上げ当初は予想以上の人気ぶりに滅入ってしまった こともあったのだという。
「リボンのレッスンを始めてから1年目や2年目の頃は、受講の申し込みが来すぎてしまって大変でした。1回の教室に生徒さんが8人くらいいらして、そこに私とアシスタントが入るとぎゅうぎゅうで、人数が多いときは中庭まで使って家中でやっていました(笑)。多い時は年間500レッスン以上もやっていたんですよ。最初は嬉しかったんですけど、だんだん自分がついていけなくなってしまって。パソコンを開くのも怖くなってしまったり、寝付けなくなってしまったりした時期もありました。それまでは全部一人で業務をこなしていたのですが、途中からは信頼できる講師に手伝ってもらいながら運営の体制を整えていきました。そして、2016年には、法人化して一般社団法人『M-StyleLuxe』を設立しました」
山口さんはこれまでに複数回の転職を経て今に辿り着いているが、過去の経験も無駄にはしていない。また、「美容や誰かに何かをすることが好き」というのは学生時代から変わらない性格だったようだ。
「高校生の頃、休み時間によく友達の眉毛を描いてあげていたんです。予約制にして、私が院長で友達がアシスタントのクリニックだと称していました。もちろん遊びでしたけど、当時から誰かに施術をしたり物事を教えたりすることが好きでした。また、サロンへの集客や営業は、エステティシャン時代の経験が生きているなと感じます。美容部員時代のお客様やお花の生徒さんがリボンの方にも通ってくれることも多いので、すごく嬉しいです」
リボン制作は手芸の中でも年齢を問わず長く続けやすい
実際、山口さんのハンドメイドリボン講座には、どんな方々が集っているのだろうか。
「子どもの手が離れた40代、50代の方がいらっしゃって、認定講師資格を取って教室を始めるケースも多いです。ずっと『○○ちゃんのママ』と呼ばれていたけれど、リボンの先生になってみて、とても生きがいを感じるという声もいただいています。リボンは手芸の中でも目に優しく、年齢を問わず挑戦できるのも良いところなんです。どこにいても教えられるものなので、家族の転勤や引っ越しで海外に行って教室を開いた方もいます。私たちの協会は、本部があって、そこに紐づく形で講座を修了した認定講師の方々がいて、横のつながりも充実しているんですよ。技術の向上や集客に関する知見をシェアしたりしています」
サロン運営は手に職をつけ、新しく何かを始めたいと思っている女性にぴったりだと山口さんはいう。「サロンでも何でも、やりたいと思ったら、すぐにやってみることが大事だと思います。実際に『サロンを開いてみたいけどどうしよう』と悩んでいる生徒さんも多いですが、私は『やってみたら? ダメだったら辞めたらいいよ』とよく伝えています。初期投資が多いと失敗できないというプレッシャーが生まれてしまうと思いますが、自宅でのサロン開業は小さく始めることができるので、すごく良いと思います。自宅でのサロンだと家族から了承が得られないと諦めてしまう方もいますが、今はレンタルスペースを安く借りたりオンラインだけでレッスンを行ったりと、やり方はたくさんあります」
認定講師になり、40 代・50代から開業する仲間も多い
山口さんの協会では、認定講師制度を採用しており、規定のコースを修了して技術を身につければ、誰でもサロンを始められる。開業にあたっての集客や運営のアドバイスに特化した「ビジネスコース」もあり、サポート体制も整っている。
「40代や50代でこの世界に入ってこられて、好きなリボンで活動して、新しい人のつながりができてと、イキイキとしていらっしゃる方が多いので、みなさんお金のためだけに習っているわけではないんだなと感じます。ぜひ少しでも気になったらチャレンジしてみ てほしいですね」
これまで、ありそうでなかった「リボン作りを教える」という仕事。ハンドメイドリボンの可能性に誰よりも早く気づき、持ち前の行動力でそれを実行して大きく育てた山口さん。リボン以前に教えていたプリザーブドフラワーの教室も、まだ地元の名古屋では1軒しか教室がない頃から着目していたという。可愛らしいものや美しいものを見抜くセンスに優れていることはもちろんだが、人々に愛されるビジネスの種を見つける着眼点が際立っている。
Profile:山口路子
やまぐち・みちこ/一般社団法人M-StyleLuxe代表理事。1975年、愛知県名古屋市生まれ。美容関係の会社員を経て、2008年プリザーブドフラワー・アーティフィシャルフラワー自宅サロンをスタート。2014年にリボンディプロマコースレッスンを開始。2016年、ハンドメイドリボン協会「一般社団法人M-StyleLuxe」を設立。2023年6月現在、会員は国内外5600名を超える。ブランド監修、企業コラボ商品発売、全国の百貨店でのPOP UP SHOP開催など幅広く活動中。著書に『ハンドメイドのリボンBOOK』(KADOKAWA)などがある。。
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