業務を変えるkintoneユーザー事例 第200回
檜垣造船が踏んだ「強制kintone」「共有kintone」のステップ
紙と鉛筆があれば船は造れる! そんな超アナログ企業をペーパーレス化
2023年09月22日 09時00分更新
最後の抵抗勢力も意識を変える
ここまでやってもまだ、社内には一部の「デジタル拒否軍団」ともいうべき人々が残っていた。
しかし、このころの同社はすでに変革が浸透していた。kintoneが仕事の入力や文書の共有、情報の検索などに広く使われており、多くの社員にとって、kintoneは当たり前に使う、なくてはならないものに変わっていたのである。
その結果、社内のデジタル拒否軍団は消滅し、ついに全社員が、kintoneを使う方向で一致したのである。そしてここから、同社のkintoneによる変革は新しい段階に入った。データ共有を中心にした取り組みから、データ活用に軸足を移していったのだ。
最初に取り組んだのが、クレーム対応のアプリだ。kintone導入前のクレーム対応は、各担当者が属人化した対応をしていた。アプリ化したことで、設計、工場、品質保証の全員が直接入力し、情報を共有できるようになった。「クレームを共有できることで、再発防止につながり、顧客満足度の向上につながった」(吉井氏)
組織、制度の見直しとして「IT管理者制度」も導入した。それまでは経営管理部のシステム管理者がすべてのアプリを管理していたが、現場の各部門内にIT管理者を選任して管理をすることにしたのだ。吉井氏らシステム管理者は、社内伴走者として、各部門のIT管理者を育成していった。
この変更により、同社のkintoneアプリ開発は急拡大する。2018年の導入以来、年々アプリの本数は増加し、現在までに5600本以上を開発している(バージョンアップを含むため、同時に稼働しているアプリ数はこれよりも少ない)。
各部門のIT管理による効果は非常に大きかった。実務者がアプリを開発していることで、素早い開発ができるだけでなく、適切なアプリの見直しが可能になった。さらに、アプリのデータを部門で抽出し、業務にデータを活用できる。もう元には戻れないと思う社員が増えていった。
ビジョンの明確化で改革を断行
kintone導入によるもう1つの成果が、ペーパーレス化だ。かつて膨大な紙を動かしていた同社の業務プロセスから紙が大幅に減り、出社しなくても在宅で仕事ができるようになった。「造船業では絶対にできないといわれた在宅勤務が、ついに実現した」(吉井氏)
社員のマインドも大きく変わった。喜多氏もその1人である。「冒頭に話したとおり、ITは嫌いだった私が、kintoneを抵抗なく使用することができた。その結果、今ではIT管理者として働いている」と自分でも驚く。
喜多氏は続ける。「社員の努力が可視化されるようになり、改善提案制度もできた。また、DX戦略プロジェクトも発足し、驚異的な勢いでIT化が進んでいる」
その流れで、現在開発中なのが、社内の他システムとkintoneとの連携だ。第1弾として基幹システムとの連携を進めている。また、造船業である同社では、膨大な数の部材を取り扱っているが、その管理システムとの連携も実現する。「API連携を使うことで、簡単にシステム連携ができるkintoneの柔軟性を活かしている」(喜多氏)。社員のワークライフバランスも実現し、家族との時間を過ごしたり趣味を楽しめるようになったという。
「業務改善に必要なことは、まず1つ目は明確なビジョンを持つこと。こうなりたいという目的を全社員に共有し、これに賛同し尽力してくれる社員がいたからこそ、膨大なアナログデータをデジタル化できた。2つ目はそのビジョンを実現するための最適なシステムを選定すること。当社の場合、それがkintoneだったと林から聞かされている」と、吉井氏は最後に語った。
檜垣造船のプレゼンテーションは多くの参加者の共感を集め、見事に2023年の中国四国地区代表に選出された。11月に幕張メッセで開催される、「Cybozu Days 2023」で再び講演することが決まったので、ぜひ会場でチェックしてほしい。

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