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業務を変えるkintoneユーザー事例 第199回

急増した社員が次々に辞め、たった1人残ったどん底からV字回復を実現

ジェットコースターのような復活劇の裏にkintoneあり

2023年09月15日 12時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水 写真●サイボウズ

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 愛媛県内子町にある、国の重要文化財「内子座」で開催された「kintone hive matsuyama 2023」。4組目は、FISTBUMP代表取締役の河本尚彦氏が登壇し、企業経営者としての失敗と、そこからの復活劇にkintoneがどう関わったのかを説明した。

FISTBUMP代表取締役の河本尚彦氏

社員がいなくなり、残ったのはクレームだけ

 FISTBUMPは、香川県高松市に本社を置くITコンサルティング、システムインテグレーションを生業とする会社。サイボウズオフィシャルSEパートナーの資格を取得しており、法律事務所のDX支援が主な事業である。システムエンジニア出身の河本氏が、2016年に立ち上げた会社だ。

 現在、同社は順調に業績を伸ばしている。しかし、これまでの会社の道のりは平坦ではなかった。

 2016年に創業して、当初は一気に事業拡大して組織と人員が急増したのだが、その後、組織が崩壊して会社が倒産寸前に追い込まれてしまう。しかしそこから這い上がり、再び成長軌道にもどすことに成功した。河本氏は、この間の浮き沈みについて、本講演で説明した。

組織崩壊で倒産寸前まで追い込まれたところからV字回復を成し遂げたFISTBUMP

 同社の人員数は、創業から7年の間に大きく増減した。最初の拡大期で一気に増えた人数は、組織の崩壊で次々と辞めていき、ついに河本氏1人に逆戻りしてしまう。「人・モノ・カネの全てを失い、残ったものは、顧客からのクレームだけだった」と河本氏は振り返る。

 事務所も古いアパートに移り、パイプ椅子ともらいもののテーブルで、社員は河本氏とアルバイトの2名のみで、通帳には最後の50万円というところまで追い込まれた。

 なぜ組織の崩壊が起きたのか。kintoneを使った弁護士事務所の業務改革を進めることが主業である同社は、順調にクライアントを増やしていたが、実はその過程で、顧客からのクレームが増え続けていた。「言われたことができない」「連絡が遅れる」といった声が同社に相次いで寄せられた。

 社員がいなくなり、最後に残ったのは、同社が顧客向けのアプリを作っていたツールのkintoneだけだった。河本氏はここから、kintoneアプリによる自社の再建に挑戦する。

チャットの中身は仕事の押し付け合いだった

 河本氏は、破綻を招いた原因は、営業担当者と開発担当者の間の業務プロセスに問題があったと検証する。

 当時、クライアントからの要望は、チャットアプリで受けていた。1人の営業が複数のクライアントを担当していたため、要望が増えるとチャットが流れてしまい、さかのぼって探すのが難しく、見逃しによって対応に漏れが生じていた。それが、前述のクレームの原因にもなっていた。

 一方の開発担当者は、営業担当からのチャットで個別に改修などの指示を受けていた。「開発担当者は、営業から入る要望をクライアント別のExcelファイルで管理していた。そのため、別のクライアントから同じような要望が来ていても、それがわからず、効率的に対応できなかった」(河本氏)

 営業と開発は、チャットで連絡をしていただけで、タスクの共有ができていなかった。複数のタスクが走るなかで、開発担当者はどれを優先すべきかもわからなかった。「タスクの内容が書き込まれたチャットは、中身がごちゃごちゃで、要望を確認するだけでも大変だった」(河本氏)

 チャットはクライアント別よりもさらに細かく、案件ごとにスレッドができており、各案件の進捗やタスクは、チャットの中身でしか確認できなかった。「この仕組みでは、人の頭で案件を記憶して、思い出しながら仕事をするしかなかった」(河本氏)

 案件が少ないうちはいいが、増えるほど悪循環に陥っていく。事実、社内のチャットはどんどん荒れていった。最終的に、耐えきれなくなった社員は辞めていき、組織の崩壊へと向かってしまった。

「チャットツールを使って業務を進めていたので、一見するとチームで仕事している風だった。しかしその実態は、各個人が、他人に仕事を押し付けながら無理矢理回している有様だった」(河本氏)

チームで仕事している風

 当時をこう振り返った河本氏は、ここからkintoneで組織の生産性向上を図り、会社を再建する決断をする。

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