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ドリル北村の「エモいPCパーツ、エグいPCパーツ」 第2回

PCケースの自作が流行の兆し、理由はSDGs

2023年07月11日 08時00分更新

文● ドリル北村

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 新製品が一同に集うCOMPUTEX TAIPEIは、今後1年間におけるPCパーツ市場の動向を見極めることができます。今年のCOMPUTEXで各社が盛んに謳っていたのがSDGsです。再生プラスチックの利用や梱包材の削減に力を入れており、無駄な資源を排出しないクリーンな社会を目指すことをアピールしていました。

 なかでも大きな変化があったのがPCケースです。InWinとCooler Masterが自分で組み立てるPCケースを出展しました。PCの用途が多様化していく中「単一デザインあるいは単一構造のPCケースはもはや時代遅れだ!」というわけです。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

ケースの外観とパーツの位置はユーザーが決める!

 とくにInWinが参考出展した「ModFree」は、多くのメディアやバイヤーが注目していました。これは、さまざまなサイズのシャーシ(InWinはモジュールと呼んでいます)を組み合わせて自分だけのオリジナルケースを作るというコンセプトです。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

大小さまざまなシャーシを組み合わせて自分だけのオリジナルケースを作れる「ModFree」

 従来のPCケースですと、電源ユニットを置く位置は決まっておりそこから動かせません。ラジエーターもしかりで、フロントに設置したいけど収まらないので仕方なくトップに配置するといったことが起きています。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

マザーボードを入れたシャーシ、電源ユニットを入れたシャーシ、ラジエーターを入れたシャーシなどを好きな場所に配置して組み立てていきます

 ところが「ModFree」は、電源ユニットを収めたシャーシもラジエーターを収めたシャーシも好きな場所に移動できます。まさに「ボクが考えた最強のPCケース」を具現化できるのです。したがって、外観も長方形だけでなく、正方形、凸型、凹型など好きな形状にできます。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

写真のようなPCケースだって作れちゃいます

 このコンセプトの素晴らしいところは、あとからビデオカードやラジエーターを増設したくなったらシャーシを追加するだけでいいことです。PCケースを買い替えなくて済むので、不要になったPCケースつまりゴミが出ないのです。しかも既存のPCパーツ一式を新しいケースに入れ替えたりする手間もありません。

 そのうえ、不要になったシャーシはそれ単体でMini-ITXケースとして再利用できます。PC環境が変わってもPCケースがリサイクルできるので、まさにSDGsなPCケースというわけです。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

ベースとなる「Mod-I Module」、小型の「Mod-II Module」と「Mod-III Module」をユーザーが自由に組み合わせて作る仕組みです

SDGsに取り組み、梱包材を削減

 InWinでは、さらに「DUBILI」と「POC」というPCケースを展示していました。こちらはPCケースを構成するパーツがバラバラの状態で出荷されます。 購入したユーザーは、自身でケースをイチから組み立てる必要があります。プラモデル好きにはたまらないワクワク感があるのではないでしょうか。しかも完成した作品はPCケースとして活用できるのですから、工作好きは大喜びでしょう。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

バラバラのパーツを組み立ててフルタワーケースに仕上げる「DUBILI」

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

鉄板を折り曲げてPCケースにする「POC」

 PCケースをバラバラの状態で出荷する最大の理由は専有面積の削減です。PCケースを在庫として保管する場合、ケースの台数分の広さが必要になります。ですがバラバラの状態なら驚くほど梱包をコンパクトにできます。完成品PCケース1台分の面積に数台分のPCケースを置けるのです。しかも梱包材も大幅に削減できますので、ゴミの削減にもつながります。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

「POC」のパッケージ。コンパクトな梱包で済むので、発泡スチロールやダンボールを大幅に削減できます

IKEAがヒントに

 Cooler Masterも同様のコンセプトのPCケースを出展していました。同社によると「IKEAの製品を見て思いついた」そうです。たしかにIKEAの家具はユーザーが自分で組み立てる必要がありますが、とてもコンパクトに梱包されています。これは自家用車に家具を入れて持って帰れるように工夫したためといわれていますが、梱包材の削減と在庫面積の削減にも大きく貢献しています。Cooler Masterは、これをPCケースに応用すればSDGsになると考えたわけです。

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

ユーザー自身が組み立てるCoolerMasterのPCケース「QUBE 500 FLATPACK」

自作PCはPCケースも自分で組み立てる時代に

「QUBE 500 FLATPACK」は、パネルの色を変えることでカラーバリエーションを増やせるようにしています

 これからはIKEAの家具のように、PCケースも自分で組み立てるのが当たり前になるかもしれません。もともと自作PCユーザーは“作る”のが大好きな人たちですので、PCケースも楽しんで組み立てるはずです。メーカー側も梱包材の削減などメリットが多いので、まさにWin-Winな製品というわけです。

 カスタム水冷や自作キーボードと同様、自作PCケースという新ジャンルが新たに誕生する日が近いかもしれません。

筆者紹介───ドリル北村

 電動ドリルが大好きな自作PC担当兼アキバ担当。高校生の頃にパソコン通信に興味を持ち独学でPCを自作。ネットの普及とともにMMO RPGに夢中になるもビデオカードが出すファンの騒音に閉口。爆音ビデオカードを投げ捨て静音に傾倒するようになる。NUCに出会ってから小型PCの魅力に取りつかれ今に至る。「ファンレス」「小型」「静音」という言葉に弱い。

 

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