また、それを支えているのが、中国に4ヵ所+αほど存在する打ち上げ射場だ。内陸部では、内モンゴル自治区にある中国最初の射場「酒泉衛星発射センター」、主に南北方向の打ち上げを担う山西省の「太原衛星発射センター」、静止衛星の打ち上げを担う四川省の「西昌衛星発射センター」、巨大な「長征5号B」の打ち上げに使用される海南島の「中国文昌航天発射場」がある。さらに、黄海上で海上発射が行われることもあり、国土が広く射場が多様な中国は、準備期間を分散させて、同じ日に別の射場から、あるいは立て続けに打ち上げを実施することができる。
しかしながら、失敗を恐れず、究極の統合試験である「打ち上げ」を続けることでしか得られない知見というものがあり、475回という数字は中国がひたすらそれを実行してきた証しでもある。もちろん、国内に落下させたとか、宇宙ステーション建造に用いた超大型ロケット「長征5号B」を立て続けに制御せずに落下させ、国際的な批判を浴びる等といったあつれきをそのままにしているという見過ごせない事情はあるものの、当面は拡大路線が続くだろう。
6月20日現在、打ち上げ回数目標の70回に対して消化率は35%
先にも述べた通り、中国は2023年に70回以上の打ち上げを目指しているが、6月20日の時点で目標の70回に対して実績数による消化率は35%ほど。また、6月末にも打ち上げが予定されているので、成功すれば消化率37%となり、昨年の実績を超えるとみられる。
上半期の時点で35%という数字はやや少ないように感じるが、2022年の実績でも、6月末の時点で64回中22回(34%)だった。12月には、12月7日、8日、9日、12日、14日(×2)、16日、27日、29日と実に9回の打ち上げを行っているため、今年も8月以降から増え始めて12月が最多となるのではないかと予想される。
宇宙機ごとの目標を見てみると、有人宇宙船の打ち上げと宇宙ステーション滞在クルーの交代、地上への帰還ミッションが2回予定されていて、このうち1回は5月30日の「神舟16号(長征2号F)」で既に実現した(2回目は10~11月頃を予定)。高スループット通信衛星「中星26(長征3号B)」は2月23日に、液体燃料ロケット「長征6号」シリーズの改良型「長征6号C」初打ち上げを6月20日に実施。レーダーで昼夜を問わず地表を観測できるSAR衛星網の拡大を目指した衛星も、3月末に打ち上げを成功させた。
さらに中国は、ハッブル宇宙望遠鏡に匹敵する宇宙望遠鏡を宇宙ステーションと同じ高度で周回させ、いざとなれば有人観測や軌道上の機能をアップデートするといった大きな目標を持っている。当初は2023年に打ち上げが予定されていたが、今年の目標に明記されていないことから翌年以降にずれ込むようだ。そうしたいくつかの開発のズレはあるものの、数字で見ても中国の宇宙開発の勢いがすさまじいことがわかる。