「抜けるなら家族にバラす」と追い込まれて
それにしても、SNSの募集を見た程度のことで、強盗までしてしまうのはなぜなのか。理由のひとつは「もう抜けられない」と追い込まれるためです。
「闇バイトは応募の段階で身分証を出させるものが多い」と三上さん。勤務先、身分証を持った状態の自撮り写真、集合住宅なら表札や部屋番号、一軒家の場合は郵便ポストなど。一度闇バイトを始めた人が「やめたい」と伝えた場合、こうした個人データをもとに「抜けるなら家族にバラすぞ」などと脅し、より大きな犯罪へと追い込んでいくケースがあるといいます。
「多くの場合、最初はグレーと思ってしまうような犯罪なんです。たとえば、『受け取った荷物を転送してくれれば数千円』というもの。これはクレジットカードの不正利用で買った商品の一時受け取り先になる行為です。「こんなことまでしたんだから、次は飛ばしケータイの契約をしてこい、次はオレオレ詐欺の出し子をやれ、というふうにレベルを上げていくわけです」
そうして犯罪行為を重ねていく中、「こいつは無茶なことでもやる」と目星をつけられた人が、実行役として犯行をさせられることになります。
「たとえば川崎の事件のように、お面をかぶり、ショーケースをバールでぶったたいて……といったことをいきなりSNSで募集した人にやらせられるわけがないですよね。犯罪グループ側も実績を見ているところがある。小さな事件をやらせて『こいつはできるな』と判断するわけです。指示役はBluetoothイヤホンを通じて指示を出し、実行役をロボットのように使っているんですが、言われたことをしっかりと実行する実行役には『100万円やるから、もっと大きな仕事をしろ』と言う。小さな仕事をさせるのは、ある意味テストをしているという意味もあるようです」(三上さん)