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SIMの業界とは? eSIMやiSIMってなに? これを読めばSIM博士!

4月6日はSIMの日! あなたの知らないSIMの世界についてソラコムに聞いてみた

大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ソラコム

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 ソラコムは4月6日を「ソラコム・SIMの日」として記念日登録した。そんなSIMの日にSIMについて学ぶのはいかがだろうか? ソラコムの大槻 健氏にSIMの業界構造やその歴史、テクノロジー、そしてソラコムのSIMについて幅広く教えてもらった(以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)。

ソラコム 事業開発マネージャー 大槻 健氏

SIMは小さなコンピューター 業界構造はクレジットカードと同じ?

大谷:今回はSIMについていろいろ教えてください。まずは大槻さんの自己紹介からお願いします。

大槻:ソラコムの大槻健と申します。Kennyと呼ばれています。現在は通信業界で先端的なヨーロッパにあるソラコムのロンドン拠点にいて、事業開発部門で事業部と技術部との橋渡しをしています。具体的にはキャリアとの調整、デバイスの調達、今回お話するSIMの開発を手がけています。

大谷:いつくらいにソラコムにジョインしたのですか?

大槻:もともと大手キャリアで、十数年近くSIMや端末の開発を手がけていたのですが、2016年にソラコムに入社しました。ソラコムは創業当時はNTTドコモのMVNO事業者だったのですが、グローバル展開を進めるにあたっては、自前でSIMの開発や調達が必要になるため、玉川(憲社長)と共通の知り合いを介して、ソラコムに入りました。

大谷:なるほど。続いて今回のテーマであるSIMについて教えてください。

大槻:最初にお伝えしたいことは、「SIMとは、皆さんのスマートフォンの中に必ず入っている」という身近なものである、ということです。

LTEや5Gといったセルラー通信の利用の前には、みなさんは回線事業者と契約をします。その「契約者であることを証明するハードウェア」がSIM。文字通りSIMとは「Subscriber Identity Module(加入者識別モジュール)」の略です。そして、ソラコムはIoT向けに通信や機能を最適化したSIMを提供しています。

SIMの構成要素を理解するために、SIMに関わるプレイヤーをご紹介します。

大谷:SIMを実現するプレイヤーが複数いるんですね。

大槻:そうなんです。まずSIMの金色の部分「セキュアチップ」という、文字通りセキュアなICを作っているチップメーカーがあります。サムスン電子、STマイクロ、インフィニオン、NXPなどの大手半導体ベンダーがここに位置します。

大谷:ここらへんはおなじみですね。うちにプレスリリースも来ます。

大槻:そして、このセキュアチップを購入し、自社のOSを組み込んだり、各キャリアにあわせたカスタマイズ、パラメーター設定などを行なうのが、いわゆる「SIMベンダー」になります。自社のOSと言っても、実際はJava Card OSという業界標準OSがあるので、これをそれぞれカスタマイズしてセキュアチップに組み込んでいます。この市場はG+D、タレス(THALES)、アイデミア(IDEMIA)のヨーロッパメーカーが3強です。

大谷:Java Card OSは知っていますが、SIMベンダーはお恥ずかしながら、全然知らなかったです。

大槻:実はセキュアチップの上に独自OSが載っているという構造は、クレジットカードも広義にはほぼ同じで業界のプレイヤーもSIMとクレジットカードは基本的に同じです。テレコム系のソフトが載っているか、金融・バンキング系のソフトが載っているかの違いだけです。いわばセキュアチップがパソコン本体で、そこへ業界特有のOSやソフトウェアを入れて利用しているようなものです。

SIMベンダーはキャリアとともに通信に特化したソフトウェアを提供します。SIMやUSIMを扱うための基本的なアプリケーション、IMSIと呼ばれる識別IDとそれを扱うためのAPI、OTA(Over the Air、無線経由での書き換え)と呼ばれるリモートメンテンナンスやアクセス制御、それに伴うファイル管理などです。

大谷:なるほどー。この業界構造って長らく変わらないんですか?

大槻:OSやソフトはつねに進化を遂げてますが、基本的な業界構造は変わっていないですね。

IoTで必要なSIMの要件は耐久性や長期利用前提の設計

大谷:まさにPCやスマホと同じようなソフトウェアスタックがあるんですね。SIMというと、SDカードのようなイメージがあるのですが。

大槻:「SIM=メモリデバイス」というイメージは、それはそれで間違っていないのですが、厳密には1つのコンピューターと捉えられます。メモリだけじゃなく、プロセッサーが載っています。

役割分担としては、ハードウェアやミドルウェアに近い領域はSIMベンダーが担当し、キャリアは各社独自の味付けを担当するという役割分担です。たとえば、セキュリティの規定はキャリアごとに違います。だからSIMとしての見た目は同じでも、中身はけっこう違います。

大谷:続いて既存のSIMとIoT向けのSIMのどこが違うのかも教えてもらえますか?

大槻:物理的な観点でよく言われるのはグレードです。実はSIMには、コマーシャル、インダストリアル、オートモーティブという3つのグレードがあります。通常、キャリアで販売しているスマホ用のSIMはコマーシャルグレードのSIMですが、産業用のインダストリアルや自動車用のオートモーティブはメモリの書き換え回数、温度耐性などが違います。

大谷:確かに工場や自動車は動作環境としてかなりタフですよね。

大槻:以前、自動車の案件に関わったことがありますが、当時はSIMのグレードがなかったので、コマーシャルグレード相当のSIMを使いました。その結果、なにが起こったかというと、SIMが溶けたんですよ(笑)。ボンネットや夏場の車の中はとても高熱になるし、特定条件だと温度も常時70℃を超えます。こうなると、プラスチック部分が変形するので、SIMとしては使えないんですよね。こうしたことがあるので、工場での利用を前提とした産業用SIMは耐寒・耐熱のレンジが広くなっています。

また、IoT用途のSIMは、利用期間がはるかに長くなります。個人向けスマホだと2~4年くらいの切り替えサイクルですが、ガスメーターのようなM2MやIoT用途だと、5~10年という利用期間も一般的にあり得ます。だから、インダストリアルでは、メモリの書き換えロジックも、長期間での利用を前提に設計しています。ソラコムでもインダストリアル用のSIM/eSIMも提供しています。

大谷:自動車用のオートモーティブについて教えてください。

大槻:オートモーティブに関しては、インダストリアルの要件に加え、振動への耐性や自動車業界固有の認証対応等が重要になります。振動すると、カード型SIMだとスロットから外れることもあるので、組み込み型のSIMを基板へハンダ付けして固定する方法がとられてきました。こうすれば物理的に外れてしまうという懸念も払拭できるし、キッティングも簡素化するし、挿抜のテストも不要になります。そういったメリットもあって、自動車用途のお客さま以外でも、組み込み型のSIMをお使いいただくお客さまが増えてきました。

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