コンテンツの著作権に関する透明性が高まる期待
2022年の上半期に、グーグルはYouTubeの月間ログインユーザー数が世界で数十億人を超え、毎分500時間以上の動画が投稿されていると報じた。2022年6月より前の3年間には、YouTubeが広告料などから獲得した収益からクリエイターやアーティスト、メディア企業に還元した金額は500億ドル(約6兆6000億円)にまで上った。
一方でJASRACからYouTubeが受けている許諾は、レコード会社などが制作するミュージックビデオなどの公式コンテンツ、ユーザーが生成するオリジナル動画(UGC)、およびYouTubeショート動画のオーディオライブラリからの楽曲利用にまで幅広く及んでいる。今後はContent IDの活用が進めば、YouTubeにアップロードされるコンテンツの著作権に関する透明性がさらに高くなることが期待される。
JASRACは今回のYouTubeとのパートナーシップ拡大の施策が、引いてはYouTubeの視聴者に新たな音楽との出会いを促すものになると説明している。
YouTubeに関連するサービスにもメリットが広がる
グーグルは独自の音楽ストリーミングサービスであるYouTube MusicをAndroid/iOSのモバイル端末や、PCでもブラウザを使って楽しめるサービスとして提供している。8000万曲を超える音楽作品のほか、YouTubeに公開されている音楽関連の動画コンテンツを切り出せるビュワーとしても楽しめるところがYouTube Musicの大きな特徴だ。
今後、著作権者とクリエイター(アップローダー)との間でContent IDの仕組みによる権利関係のクリアランスが進めば、YouTube Musicもまたほかのプラットフォームにない特徴を持つ音楽配信サービスになるだろう。例えばある楽曲のカバー作品は、“歌ってみた系”のコンテンツもカウントすれば、ほかの音楽配信に比べてYouTube Musicに最も多くのバリエーションが揃うことになる。音楽ライブのお宝演奏や“アニソン”のアーカイブも同様だ。
グーグルは現在、Android OSやPixelデバイスで空間オーディオによる立体音響体験が楽しめる環境を整備している。筆者も1月に本誌の記事「Google Pixelの「空間オーディオ」開始もまだ第一段階、現時点で何ができるのか?」でグーグルによる取り組みを紹介した。3月にはワイヤレスイヤホンのPixel Buds Proがヘッドトラッキング機能にも対応したようだ。今後も楽しめるデバイスやサービスは広がるだろう。
「豊富な配信楽曲の数とバリエーション」に加えて「空間オーディオ」も楽しめるようになれば、YouTube Musicが大きく躍進するのではないかと筆者は期待している。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。