ハーマンインターナショナルは3月7日、代官山 蔦屋書店で「JBL TOUR PRO 2」のローンチパーティーを開催した。JBL TOUR PRO 2は、今週3月10日(金)発売予定の新製品。全国の蔦屋家電・蔦屋書店5店舗では“JBL SOUND COLLECTION 2023 SPRING”を開催中、同製品の予約も受け付けている。
ケースにディスプレーを装備、タッチ操作できる
2022年末の時点で累計約2億台ものイヤホン/ヘッドホンを出荷したとするJBL。TOUR PRO 2は、完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデルだ。
特徴は充電ケースにタッチ式ディスプレーを備えている点。この画面をタッチすることで音楽の再生や一時停止、ノイズキャンセル機能を始めとした操作/設定変更が可能となっている。スマホアプリを起動するよりも手軽で、かつスマホ以外の機器と接続している場合でもイヤホンの多彩な機能を楽しめる、新しいコンセプトの製品になっている。
アピールポイントは「完成された装着感と、新次元の絶対音質」。
そのために取り組んだのが、(1)SOUND TECHNOLOGIES、(2)PERFECT FIT、(3)SEAMLESS INTELLIGENCEの3点。2017年10月の「JBL FREE」以降展開しているラインアップの中で、転機となったのが2020年の「JBL CLUB PRO+ TWS」でフラッグシップという言葉を初めて使用。そしてそれに続く2021年の「JBL TOUR PRO+ TWS」以来の大きなモデルチェンジとなる。
直径10mmのドライバーはDLC(Diamond-Like Carbon)振動板を採用。装着感のいい小型で軽量な本体、デュアル方式のノイズキャンセリング機能を持ち、周囲の環境に合わせて適切なノイズ除去(リアルタイム補正)も可能になっている。独自開発の“空間サウンド”機能により、広がりのある音の再現もでき、見どころが多い機種だ。
Bluetooth 5.3規格で、コーデックはSBC、AACに対応。LE Audio(LC3)への対応も予定している。連続使用時間は、ANCオフ時で約10時間(充電ケース併用で約30時間)。ANCオン時は約8時間再生(同24時間)。JBL オンラインストアでの販売価格は3万3000円となっている。
また、JBLはSpring Campaign 2023として「オト、ヒト、ハート」という音楽愛を表現するキャッチフレーズのもと、人の思いの数だけある音楽の楽しみ方を提供していくという。
トークショー:いい音は心を元気にするためにも必要
ローンチパーティーには、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さん、著述家・プロデューサーの湯山玲子さんが招かれ、TOUR PRO 2を取り上げつつ、音楽、イヤホン/ヘッドホン、その効能など幅広く自由なテーマでトークを展開した。
クラブカルチャーからクラシックまで幅広い音楽ジャンルに造形が深い湯山さんは、クラシックを聴く機器に求められるのは「中庸であること」だとする。この話が来る以前からJBLのイヤホンには注目しており、カラフルでかわいい外観、かつ値段も抑えているのに関わらず、豊かな中音が感じられ、オーケストラの表現を細かく聴き分けられる音質が欲しいという要望にしっかりと応えてくれると感じていたという。
オーケストラには様々な楽器が揃っており、中にはチェレスタのように小さな音しか出せないものが加わることがある。特にマーラーやショスタコーヴィチなど、大規模な編成になると、生で聴かなければ分からない面もあるとされてきた。湯山さんが最近の録音でダントツに好きなものとして挙げたのが、クルレンティス指揮のマーラーの交響曲6番。自身が率いるオケを通じて、現代のクラシックの音響はどうあるべきかに取り組んでいる。ピチカートがぴったりと揃って的に向かって飛ぶような表現、この1点だけでもハッとするような感動がTOUR PRO 2から得られたという。
また、オト、ヒト、ハートというお題でコメントを求められた菊池さんは、「人間が音を捨てることはまずない」「ハートは音楽と結びついている」としたうえで、現代人にとってハートが問題になるとすれば、それは「ハートを磨くこと」ではなく、「ハートが汚れてしまったり、ハートが死にかけてしまうこと」だと感想を述べた。普通に生きているだけでも、とかく心が曇りがちになる昨今の状況を考えると、「ハートを磨く」こと以前に「維持していくこと」が重要ではないかという主張だ。
サウナに行って体を整えるのと同じように、音楽には心を元気にするトリートメントの効果があり、ある種の薬でなのだという。イヤホンはこうした音楽の効能を気軽に摂取できるものである。「音が良くなれば、ハートが豊かになるのは基本的なところ」だが、音楽と一緒に体を動かしたり、一緒に叫ぶといった身体性も重要。「身体を動かすことは再生機と密接に関わっている」として、どこでも音楽が聴け、踊りながら激しく動いても落ちにくい装着性の高さがあれば、音楽を外に持ち出せるようにしたウォークマンに匹敵するような大きな変化が生み出されるのではないかと話していた。
また、イヤホンを通じた音楽とのふれあい方について湯山さんも持論を述べた。「日本人は音楽が好き。でも好きなのは言葉(歌詞を通じた共感、言葉と自分のシンクロ)なんですよ」とし、「音楽はそれよりもっと広いところにある。言葉のない音の世界に、心を遊ばせること」だとコメント。クラシックの世界では、その場に脚を運んで音楽を体験することが価値とされ、そこに権威や障壁もある。しかし、「ヘッドホンは関係がない。どこにでも持っていって聞くことができ、自由が得られる」とした。
トークショーの最後にはふたりから「いい音」についてのコメントが寄せられた。
菊池さんは「いまの時代、逆に悪い音で聴くほうが難しい。市販のコンテンツは、視覚情報も音声情報もマスタリングされていて、東京でまずい飯を出す店を探すのが難しいのと同じように、当たり前のようにいい音を聴くことができる。しかし、それが逆に“いい音の飽食”や“どうせいい音でしょ”というインフレーションにつながっている」とコメント。だからこそ、自分に一番合う音を探すことや演奏/録音技術以上に再生の技術が問われているとした。
湯山さんは「いまはお金を使うことに対して意識的になっている時代。お金を使っていくべきものとそうでないものがはっきりしている」とコメント。そのうえで、「いいものを買って意識的に身に着けることを通じ、音楽を近づけ、自分に取り入れていくことが大事」だと話した。「もし音楽が好きならば、音楽から自分の知らない世界を見つけていくべきだし、自分が若いころによく聴いた曲を聴いてノスタルジーに浸るだけでなく、新しい音楽を自分の中に叩き込んでほしい」とした。