中音域の厚みと歪感の少ない高域
まだ自宅シアターやリスニングルームでのテストを経ていないため、確定的なことは書けないが、ソノス本社での視聴体験はなかなか優れたものだった。Era 300のステレオペアが試せていないが、シングルボディのままでも十分にリビングルーム全体を音楽で満たしてくれるだろう。
Sonosの音質はTrueplayで調整していることもあるが、前世代から一貫性のある音質を備えている。まずは歪感がないこと。そして音の広がりがあり、リスニングポイントのズレに対して寛容(部屋のどこで聴いても大きく心地よさを損なわない)なこと。中音域に厚みがあり、また中低域にパンチとスピードがあること。そして高域に嫌な付帯音がなく、長時間聴いていても疲れにくいことなどだ。
音の情報量はソコソコなのだが、音楽を心地よく楽しむという点で、リラックスしてバランスよく楽しめるのがポイント。これはテレビとの組み合わせで使うサウンドバーにも一貫した音作りで、上位モデルと下位モデルでの品位の違いこそはあれ、どれも音楽再生用として愉しい音作りになっている。
こうした音作りに関しての議論は、実は昨年、Sonosのサウンドチューニングにおいて主体的な役割を果たしているジャイルズ・マーティン氏(音楽プロデューサーでミュージシャン。セリーヌ・ディオンやポール・マッカートニーのプロデュース、ビートルズ楽曲のリミックスなどで知られる人物)と議論したときに、おおいに意気投合した部分だった。
いかにして「音楽を邪魔する成分」を排除し、音楽の躍動的な部分、あるいは静寂の中にある空気感、音場の佇まいを描くか?といった部分だ。
一方で今回はとりわけ、Sonos ArcとEra 300、それにSubを用いた場合における、イマーシブサウンドに関するこだわりが感じられた。
本社におけるデモでは、フロントにArc、リアに2台のEra 300、そして前方と後方にSub3を配置して「トップガン・マーヴェリック」を視聴したが、彼らが「Dolby Atmos 7.2.4相当」と自信を持つだけあって、センターはもちろん、オフセンターでも音場が崩れない。Arcのレビューではないが、Arcのセンターチャンネルが明瞭で、セリフが聞き取りやすく、また中音域が豊かであるため、リアのEra 300に負けずに前後の音のボリューム感がある。
サウンドバーを使ったシステムで、ここまで濃い音場はそうそう感じられない。Trueplayによる補正の優秀性もあるのだろうが、カジュアルに構築できるサラウンドシステムながら、本格的なAVレシーバによって組み上げたシステムに負けない音を楽しめる。
この発展性、後々の投資によって拡張、覚醒していくところは素晴らしい。数日もすれば、さらなる実機テストが行える予定だが、Sonos第4世代が始まったことを強く意識させられる新製品だ。これらに続くだろう製品にも期待したい。