M2 Maxから俯瞰するM2ファミリー
冒頭でも紹介したように、M1ファミリーの生産で使われているN5という技術とM2ファミリーが使うN5Pトランジスタ集積度は同等だが、電力効率はN5Pのほうが高い。同じ性能を引き出す場合、N5PはN5よりも10%消費電力が下がる。あるいは同じ消費電力で使う場合、N5Pは5%高速で動作させることができる。
これはあくまでも製造プロセスの特性にしかすぎないが、アップルはM2ファミリーを設計する上でN5Pを用いて、最大限の性能を引き出しているようだ。10%消費電力効率が向上すれば、SoC全体の熱密度を管理しやすくなる。つまり、より多くのコアを集積し、それらから多くのパフォーマンスを引き出すマネジメントが容易になる。M2 Pro、M2 Maxの処理コアを増加させることができたのは、その結果と言えるだろう。クロック周波数の上限を引き上げることに成功できたのも同様だ。
メモリ帯域に関しても、M2で拡張されたメモリ帯域のさらに4倍となる毎秒400GB(M2 Proは毎秒200GB)で、処理コアの増分に見合う広帯域が確保されている。搭載可能な最大メモリ容量はM1ファミリーの1.5倍として、プロフェッショナルのクリエイターに応えようとしている。
2019年の製品と比較するのはフェアではないが、当時、8Kビデオ編集のためにProResアクセラレータなどを導入して作業していたことが、編集などの作業に関してならば現在はM2 Maxはおろか、M2 Proでも賄える。GPU性能は最高性能ではないため、最終書き出しにおいてはMac Proの最上位構成には敵わないものの、スタンダードな構成ならば匹敵する製品を引き出せるはずだ。
また今後、M2 Ultraが登場すれば、M2 Maxの1.9倍程度のGPUスループットが見込めるだろう。遠くない将来にMac Studioに搭載されることが期待される。
ただ、個人的に期待したいのは、まだ十分な評価値が出ていないM2搭載Mac miniの性能だ。MacBook Proの13インチモデル同等の性能が出ると思われる。その価格の安さを考えれば、M2 Pro搭載モデルとともにインテル時代のiMacを置き換える製品になるはずだ。Mac Studioがオーバースペックと感じているならば、お買い得なモデルになっていると思う。