富士フイルムのAPS-Cミラーレスカメラ「X-T5」は、9月に発売されたばかりのハイエンドモデル「X-H2」と同じ4020万画素の撮影素子を搭載し、主な機能もほぼ同等の最新モデルだ。
「X-H2」が大型のグリップや液晶パネルなどを備えた現代風のボディーなのに対し、「X-T5」はダイヤルを主にしたクラシカルな操作性が特徴。富士フイルム「Xマウント」のファンとしてはどちらを選べばいいのか悩むところだろう。
Xシリーズの血統を守るダイヤル操作が魅力
ボディーのサイズは「X-H2」より小柄で、重量も103gほど軽量だ。上面右肩に露出補正とシャッタースピード、左肩にはISO感度のアナログダイヤルを配置し、レンズの絞りリングも含めれば露出に関連する数値を一目で確認することができる。
例えばシャッタースピードを1EV速くするには、絞りを1EV明るくする(もしくはISO感度上げる)といった、それぞれの数値が相対関係あることも認識しやすい。そう考えると写真における露出の基礎を学ぶならアナログダイヤルが向いているだろう。
シャッタースピードの1/3EV刻みの数値はコマンドダイヤルから設定するが、シャッタースピードダイヤルのポジションを「T」にすると、全てのシャッタースピードをコマンドダイヤルだけで変更することができる。
ISO感度ダイヤルにはISOがオートになる「A」と、コマンドダイヤルで変更する「C」がある。拡張感度になるISO64やISO25600以上の感度は、「C」のポジションから変更することになる。
露出補正ダイヤルの「C」ポジションもコマンドダイヤルで設定するもので、つまりシャッタースピードとISO感度、露出補正はアナログダイヤルとコマンドダイヤル、どちらを使用するか選択することができる。ユーザー好みに合わせた自由度の高い操作性だ。

シャッタースピードダイヤルの下部は、静止画/動画の切替ダイヤルを、ISO感度ダイヤルの下部はドライブモードダイヤルを配置。さらに前面下部にはフォーカスモード切替レバーを備えるなど、アナログ操作へのこだわりが感じられる。
またシャッターボタンには昔ながらのレリーズ穴があり、アナログカメラ好きは、ついニヤリとしてしまう。
メディアはSDカードのみ 背面液晶のスタイルを変更
背面の操作系は先代の「X-T4」からほとんど変更はない。個人的には「フォーカスレバー」の配置や形状は「X-H2」のほうが好みだ。
背面液晶は「X-T4」や「X-H2」で採用していたバリアングルから、先々代の「X-T3」や中判デジカメ「GFX」シリーズで採用されている3方向可動のチルト液晶に回帰した。
液晶の可動方式は好みが分かれるが、静止画メインの人にはレンズ光軸上で視認ができるチルト式の人気が根強い。あえてチルト式を戻したことからメーカーが考える「X-H2」との差別化が伝わってくる。
EVFは369万ドットと「X-H2」の576万ドットよりは控えめだが、撮影倍率は0.8倍と像は大きく、解像感にも不満を感じない。
メディアスロットはCFexpress+SDの「X-H2」とは違い、SDのみのデュアルスロット。側面端子は「X-H2」と比べるとHDMIがフルサイズからマイクロに。ヘッドフォン端子を省いた代わりにリモートレリーズ端子が配置された。この点からも「X-H2」は動画も重視し、「X-T5」は静止画に割り切った造りである。
バッテリーは「X-H2」や「GFX100S」などと同じ「NP-W235」で、公称の撮影可能枚数は580枚。実際に撮影してみてもRAW+JPEGで427枚撮影して残20%と十分なスタミナだった。ただし先代まで用意されていた外付けのバッテリーグリップは省かれている。
画質はやはりフラッグシップクラス
「ピクセルシフトマルチショット」で1.6億画素写真も
撮像素子や画像処理エンジンは同じなので、画質に関しては「X-H2」と同等に感じる。キットレンズの「XF18-55mmF2.8-4 R」はメーカーが公表している「40MP推奨レンズ」には含まれていないが、試写した限りでは十分に高解像度を堪能できた。

解像感がわかりやすい遠景の写真。拡大して見ると細部の精細さがわかる。絞りF5.6・シャッタースピード1/640秒・ISO125。以下特記なければ使用レンズ「XF18-55mmF2.8-4 R」でホワイトバランスオートで撮影している。
1億6000万画素の画像を生成する「ピクセルシフトマルチショット」に画像をトリミングして望遠撮影ができる「デジタルテレコンバーター」、被写体認識AFや最速1/18000秒の超高速電子シャッターなどの機能面も共通している。

「ピクセルシフトマルチショット」で撮影した1億6000万画素(15456×10304ドット)の写真。ただ木々が風で揺れている部分にはピクセルのズレが見られる。絞りF8・シャッタースピード1/280秒・ISO125。

「デジタルテレコンバーター」では画像をトリミングすることで1.4倍(2000万画素相当)と2倍(1000万画素相当)の望遠撮影ができる。上から順に1倍、1.4倍、2倍。絞りF5.6・シャッタースピード1/500秒・ISO125。
高感度の画質も「X-H2」と同等でISO3200を超えると画質低下が見られるが、解像度が高いおかげで拡大して見なければISO12800程度までは実用的だ。
実際に撮り歩いてみると、ダイヤルの操作感にくわえ、小柄なボディーで軽快に撮影できのるも「X-H2」とは違った魅力。ただあまり大きなレンズではグリップが小振りなこともありアンバランスになりそうだ。
その点「Xマウント」レンズにはコンパクトな単焦点レンズが多数ラインナップされている。今回はそのなかから「XF23mmF2R」と、「X-T5」と同時に発売になった「XF30mmF2.8R Macro」を試してみた。
「XF23mmF2R」は35mm換算35mmの準広角で全長51.9mmとコンパクト。「X-T5」に装着したときのバランスも抜群で気ままなスナップに最適。

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