軽い、なのに音がいい!?
コニー電子が米田オーディオのブランドのもと現在開発中のスピーカーが「Koala A-1」。キャビネットを始めとした本体のほとんどの部分を紙で作った面白いコンセプトの製品になっている。10月27日からGREEN FUNDINGのクラウドファンディングで出資を募っている。
代表取締役の米田氏は、自作スピーカーの製作で経験を積むとともに、オーディオをもっと手軽にできる製品はないかを考えてきた。その結果生まれたのが、サランラップの芯に用いられるような硬い紙をスピーカーのキャビネットに使うという新しい発想だ。Koala A-1は筐体に紙を使用することで軽く、部屋の好きな位置に自由に動かせ、エコやコストの面でも有利になっている。Koalaの名称は、グレーのカラーがコアラの毛と近い色であることが由来。インテリアとの馴染みもよく、目立ちにくいデザインだ。
オーディオのハードルを下げたいという想いも
価格はペアで6万円(標準価格)。GREEN FUNDINGでの出資時期などに合わせて最大20%の割引が受けられるプランも用意している。アンプ内蔵で電源供給用のUSB Type-C端子も装備。利用方法としてはBluetooth接続が基本となるが、スピーカー端子も用意している。もう1ペア購入し、AVアンプなどを用意すれば、4chの再生も可能となる。リアスピーカーをリビングに設置し続けることに少し抵抗がある人でも、Koala A-1の軽い本体であれば、簡単に片づけられるため、サラウンド再生のハードルを避けることができるだろう。
Koala A-1は高さ634mmで、フロア型としては比較的背が低いサイズだが、オプション品としてもスピーカースタンドを用意。椅子に座った際に適した900mmの高さにできる。米田氏によると、634mmという高さは床に座って聞いても、椅子に座っていてもほどよい高さとして選択しているが、椅子を中心に生活しているリビングでベストな鳴りになるようスタンドも用意したという。
音の面でもこだわりがある。フォスター電機製のユニットを採用。「自然で生々しい音」がキーワードだという。採用したユニットは優れた素性を持ち、中高域が非常にきれいに出せるため、特に人の声の再現に優れている。ユニットの口径が小さく、点に近い状態から音が広がるため、定位も優れているという。
こうしたユニットの特徴を最大限活かしながら、余裕のあるサイズのキャビネットと専用のアンプを一体で設計することで低域から高域までワイドレンジな再生を両立、見かけからは想像できないほど広大な音場が得られるよう工夫したそうだ。
一体型の利点としては、ユニットやスピーカーシステムの特性に合わせて回路のイコライジングを突き詰めていける点だ。Koala A-1の音を聴くと、小型のフルレンジユニットから出ているとは思えない豊かな低域が感じ取れるが、これも一体型ならではの作りこみと言えるだろう。
実際の製作では、精密機器メーカーでエンジニアをしてきた米田氏自身の経歴によって培った回路/機械設計技術に加え、オーディオファンを対象とした試聴会を多く実施し、かつユニットを開発したフォスター電機の意見も聴きながらブラッシュアップしてきたという。
ちなみに、クラウドファンディングでは「Koala A-1用イコライザーモジュール」(価格2万6000円)として、周波数特性を補正するアクセサリーも用意している。内蔵アンプではなく外部アンプを接続してスピーカーを鳴らす際、アンプとプレーヤーの間に挟んでおくと、500Hz以下の中低域の音圧が、Koala A-1に最適なものとなり、高音質化ができるという仕組みだ。
艶やかな声の表現がいい
Koala A-1が採用した紙という材料は、木材や金属に比べて軽量であるだけでなく、不要な響きを出しにくく音響的なメリットを持っている。また、紙ならではの温かみのある手触りも特徴だ。制作に際しては、紙加工で独自のノウハウを持つマルタ工業と協業。約2年に渡る検討の後、「職人の手作業とレーザー加工を組み合わせることで本体の約95%(体積比、電子部品部分を除く)を紙で構成したフロア型のスピーカーを試作製作ができた。
製品を実際に目にすると、確かに紙なのだが、思いのほかしっかりとした質感があり、叩いてみると硬く安心感がある。紙には固有の反りやばらつきがあり、このサイズの製品に使うのは中々難しいそうだが、実際に体験してみると、米田氏が言うようなメリットが確かにあるように感じた。
音の面でも、中高域の表現がスッキリとしていて、低域も豊か。特にシンプルな構成のジャズボーカルなどは艶やかに聞きたいという人に向いていると思う。ネジで取り外し可能なスピーカーユニットは、廃棄が簡単ということもあるが、ユニットを乗せ換えることでマニアックな楽しみ方ができるというメリットも持つという。
スマホとつないでシンプルにストリーミングを聞くのもよし、真空管アンプなどの味わいを楽しむのもよし、サラウンド化して没入感を追究するのもよし。いろいろな楽しみ方ができそうな製品である。