業務を変えるkintoneユーザー事例 第164回
SE不在の不動産会社が現場主導のkintone導入を進めた話
三菱地所ハウスネットのkintone導入、前に転んで得た反省と知見
2022年11月01日 09時00分更新
優先度は重要だが、ささいな要件を取り入れると現場は喜ぶ
最後にぶち当たった壁は、「リリース直前、変更もりもり問題」だった。「このフィールドを追加したい、このフィールドをこっちに移動したいなど、気づいた点が現場からドンドン上がってしまったんです」と泉氏は振り返る。「あれも欲しい、これも欲しい、もっともっと欲しい、という通称『ブルーハーツ現象』が起こってしまったんです」と村元氏。でも、現場目線の要望なので重要なのは間違いない。
でも、ここまで来たら、あと一押し。リリース日は変更せず、できる改修は一通り行なっていったという。ここでもCUSTOMINEは大活躍。重要な項目には色を付けたり、吹き出しを付けて、利用者にわかりやすくした。泉氏は、「吹き出し機能は現場からの質問が減るのもメリットですが、私たち開発メンバーがこのデータどこから持ってきたんだっけ?というときに思い出せます。kintoneって変更が効くので、いちいち仕様書を作るというより、kintoneの画面そのものを仕様書にしてしまうのがよいと思います」と語る。
とはいえ、もちろんすべての要求を聞き入れるのは難しいので、優先度を付けるのが重要だったというのは反省点。一方で、ささいな要件を取り入れるのは、現場が喜ぶ。これができるのはkintoneのよさでもあるので、両者のバランスが重要だという。
そして、kintoneアプリもいよいよリリース。リリース後にユーザーの画面を見ると、当たり前のようにkintoneを使ってくれていたという。アプリを運用している現場からも、「自分の案件や他部署の対応履歴が見えるようになった」「ペーパーレスにより、テレワークができるようになった」といったうれしい感想も得られた。実業務を知っている泉氏がアプリ開発を担当することで、現場のコミュニケーションもとりやすかったのではないかと村元氏も感想を述べた。
第一弾の見える化アプリは、昨年末時点での導入効果として、業務削減時間として4500時間/年、コスト削減効果として36.8%が概算値として得られたという。
kintone hive登壇の会社にもWebから突撃し、情報共有へ
村元氏はその他のkintoneアプリや施策も披露した。たとえば、kintoneとRPAとの連動では、kintoneアプリのラジオボタンの値をAPI経由で取得し、特定の値の場合はRPAが動作するという仕組みにしてみた。RPAのコンソールは現場になじみにくいため、現場が自分の意思でRPAを実行できるようにできた。
kintoneの導入実績を持っている企業とも意見交換を行なった。昨年、kintone hiveに登壇した不動産会社の日本エージェントの記事(関連記事:kintoneで受付業務の業務改善とペーパーレス化を実現! 愛媛の不動産会社が始めた不動産DX)を読み、コーポレートサイトから直接連絡。先方の担当者と有益な情報交換ができたという。
さらに社内でkintoneでアプリを作れる人を増やすため、「kintoneアドミニストレーター制度」を発足させた。社内にSEがいないため、このままアプリが増えると沼にはまってしまうという危機感もあり、一方で「アプリを作れる」というkintoneに関心を持つ人も多いのではという期待もあった。そこで完全公募制で募集をかけたところ、1ヶ月で12名がアドミニストレーターになった。今後はブレストや独自の研修会を実施していく予定だという。
まとめとして村元氏は、kintone導入のポイントとして、「目的を1つに絞る」ことをアピールした。「アプリを作っていくと、あれもこれもと欲が出てしまいがち」と語る村元氏は、東名高速道路を例に「東名高速道路の目的は、東京から名古屋まで短時間で着くこと。この目的を達成してから、パーキングエリアやインターチェンジなど便利な設備を増やしていけばいい」と説く。「トンネル掘っている途中に、海老名でメロンパン売りたいと言われても、いやいや今そこじゃないでしょという話になりますよね」(村元氏)。
もう1つのポイントは、「転ぶなら前に転べ」というアニメの主題歌の教え。なにかあればすぐに直せばいい、まずはリリースしてみないと、気づくべきことにも気づけない。前を向いて回収していくことがkintoneだったらできる。これが村元氏のメッセージ。「SEなくても、kintone導入できた」というタイトルをアピールし、登壇を終えた。

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