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サステナブルなWebサイトを目指すために必要なOSについての考察~KUSANAGIがAlmaLinuxに対応したわけ~

2022年09月27日 09時00分更新

文●プライム・ストラテジー 相原 知栄子 編集●MOVIEW 清水

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 こんにちは。「KUSANAGI」の開発チームで取締役をしている相原です。

 「KUSANAGI」はWordPressをはじめとするCMSを高速に動作させる仮想マシンです。わたしたちは「KUSANAGI」を開発して皆様にご利用いただくほか、お客様のWebサイトを「KUSANAGI」で運用しています。

 この連載では、「KUSANAGI」の開発やお客様とのお話の中で感じた課題や実際の運用の中で得た知見などをお伝えしています。

サーバOSの提供終了がWebサイトの継続性の大きな問題となる

 CentOS 8の提供終了が発表され、後継となるOSについて多くの議論がかわされたのは記憶に新しいと思いますが、実際に2021年12月31日に提供が終了してからもう9ヵ月ほどになります。

 OSはサーバの基礎になる部分ですから、継続性が担保されないということは、Webサイトの継続性にも関わる大きな問題です。

 わたしたちも、「KUSANAGI9」でのCentOS 8版の提供を終了し、CentOS Stream 8への対応をすすめ、新たにAlmaLinux OS 8にも対応するなど、世の中の変化への対応を進めてきました。

 ここであらためてWebサイトの継続性とOSのEOL(End Of Life)問題について考えてみたいと思います。

CentOSの提供終了に伴う対処方法

 サーバOSには大きくWindows系とUNIX/Linux系の2種類があります。その中でも利用している人も多く、馴染みのあるのはやはりLinux系のOSでしょう。

 問題となったCentOSもLinux系で、有償ディストリビューションのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)から派生したものです。RHELとの機能的に互換性があることを目指した無償のディストリビューションであることから多くのユーザーが利用しています。

 そんな中で提供終了のアナウンスがあったのですから、それは大騒ぎになりますよね。

 CentOS 8は先程書いたように2021年12月31日に提供を終了しましたが、そのひとつ前のバージョンであるCentOS 7は2024年6月末でEOLをむかえます。

 CentOS 7は企業のWebサイトでも幅広く利用されていますから、CentOS 7を利用している企業はEOLまでに何らかの対策を行なわなくてはならない、ということになります。

 あと2年弱、長いようにも感じますが、方針を決めて移行作業、テストなどを考えるとゆっくりはしていられないですね。

CentOS終了後の対応① 延長サポートを利用
 CentOSの延長サポートプログラムを利用するという方法があります。特定のベンダーとの契約が必要で有償になるということと、問題を先送りしている、という感じは否めないものの、複雑なシステムや多くのサイトを運用している場合には、まず延長サポートを利用してその間にじっくり移行計画を練る、というのもひとつの方法だと思います。

CentOS終了後の対応② RHELに移行
 思い切ってRHELに移行する方法もありますが、これまでRHELを利用していなかったということは何らかの理由があったのかと思いますので、そのようなユーザーにとってはあまり現実的な解ではないのかもしれませんね。

CentOS終了後の対応② CentOS Streamへの移行
 CentOS終了後の移行先の候補のひとつとして、CentOS Projectが推奨しているCentOS Streamがあげられます。CentOS StreamはRHELに含まれる予定の更新や機能などが事前に取り込まれます。

 新しい更新や機能が先に受け取れるというメリットと、それらが十分なテストを通過したものであるという安定性のバランスを考えて、わたしたちも、まずCentOS Stream版を提供していくことに決めました。

CentOS Streamのライフサイクルは短いという課題

 CentOS Streamのライフサイクルは対応するRHELのフルサポート期間に準ずるため、サポート期間が5年と短いことは企業ユースでの課題のひとつとなるでしょう。

 実際、CentOS Stream 8のEOLは2024年5月31日と、CentOS 7より先にEOLがきてしまいます。

 そのため、CentOS 7のユーザーは直接CentOS Stream 9へ移行するというのが移行の回数が少なくて済む方法になると思います。

 CentOS Stream 9の提供も2021年12月から始まっています。

 https://centos.org/download/

 ちなみに「KUSANAGI 9」もCentOS Stream 9への対応を進めていますが、対応するミドルウェアや必要なモジュールなどのうちのいくつかがRHEL 9の公開を待っていると思われるものがあり、これらが安定し、十分テストをおこなってからの提供となる予定です。

 RHEL 9は2022年5月18日に公開されています。

 https://www.redhat.com/ja/blog/hot-presses-red-hat-enterprise-linux-9

CentOS終了後の対応③ 無償RHELクローンへ移行
 CentOS Stream以外を考える場合、やはり使い慣れたRHELクローンへの移行が候補に上がるでしょう。AlmaLinux、Rocky Linuxなどが公開されています。AlmaLinux、Rocky LinuxともにRHELと同等の10年のサポート期間となっていますので、OSの移行を最小限にしたいという企業でも導入しやすいでしょう。

 AlmaLinuxRocky Linuxの公開時期とEOL

OS 公開 EOL
AlmaLinux OS 8 2021年3月 2029年5月
Rocky Linux 8 2021年6月 2029年5月
AlmaLinux OS 9 2022年5月 2032年5月
Rocky Linux 9 2022年7月 2032年5月

CentOS終了後の対応④ その他のLinuxディストリビューション
 UbuntuやDebianなどの無償のLinuxディストリビューションに移行する方法もあります。

 Ubuntuも世界で多くの人が利用している人気のOSですが、系統が異なるためRHELクローンへの移行と比べ学習コスト、移行コストは大きくなってしまうでしょう。

CentOS Streamのライフサイクルは短いという課題

「KUSANAGI」で提供するOSとして、なぜAlmaLinuxを選んだのか

 EOLまでの期間が長いOSをベースにすることで、できるだけOSのメジャーアップデート(移行)の回数を少なくできるようにしたいと考え、RHELクローンをベースにした「KUSANAGI」の提供を検討しました。

 なぜ、わたしたちがAlmalinuxを選んだのか。

 AlmaLinuxはRHELおよびプレストリームCentOSと1対1のバイナリ互換性を持っているため、これまで開発してきた資産も活かしやすくなっています。

 AlmaLinuxのWebサイトに「RHELから1営業日以内に定期的なアップデートをリリースするように努めていて、メジャーリリースは、通常、RHELのメジャーリリース後、数週間から数ヵ月の間に提供される」と書かれているように、更新のはやさも魅力です。

 その他、KUSANAGIの上位版(Business Edition/Premium Edition)の提供に必要な機能がOSに対応していることなども条件になります。

 これらを総合的に考えて、AlmaLinux版を提供することが皆さまの役に立つと考え、開発を進め、現在はAzureとAWSの有償版(Business Edition/Premium Edition)で利用できるようになりました。

 関連プレスリリース:https://www.prime-strategy.co.jp/information/kusanagi-60000-almalinux/

OSのEOL問題から、Webサイトの継続性について考える

 ここまでCentOSの終了とその対応について書いてきました。

 改めて、きちんと考えておかなければいけないと思うのは、これらの移行先として選択したOSが本当に継続開発されるのか、Webサイトの継続性を脅かすような変更は今後も起きうるのではないか?ということです。

 (OSに限らずオープンソースソフトウェアの継続性も話題になっていましたね。)

 もちろんその都度何らかの対応方法がでてくると思いますが、情報を収集したり、技術検証を行なったり、実際の移行作業を行なったり、と多くのリソースを消費し、コストもかかってしまうでしょう。今回もCentOSからの移行ツール(コマンド)なども用意されていましたが、実際に運用しているサイトでそれだけで移行が完了ということはなかなかないと思います。

 もし、異なるOSでも同じ構造を保ったまま簡単に移行ができるとしたら、これらのコストを最小限に抑えられ、Webサイトの継続性が担保されるのではないでしょうか。

 わたしたちの開発している「KUSANAGI」は構造化・共通化されているので、さまざまなクラウドで同じように利用できるだけでなく、設定ファイルなども含め移行することが簡単にできるような構造になっています。 「KUSANAGI 8(CentOS 7)」から「KUSANAGI 9(CentOS Stream 8)」へ。「KUSANAGI 9(CentOS Stream 8)」から「KUSANAGI 9(AlmaLinux OS 8)」へ……

 「KUSANAGI」であればOS突然の提供終了があっても安心、ユーザーの皆さまにとってのひとつの解、と考えていただけるように開発を進めていきたいなぁ、と考えています。

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