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次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート

スマートシティ実現に必要なものは産官学民の“ワクワクする連携”だ

渋谷区と配送サービスのLOMBYが語るスマートシティ実現への現実解

指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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スマートシティの課題と可能性について語り合う

 次に、パネルディスカッション形式でスマートシティについて議論を進めた。

 最初のテーマは、「現時点でのスマートシティの課題」。これについて、まず内山氏は、「やはり当社の事業からすると、リアルタイムの通信が保持されることが重要。当社のロボットは基本的に歩道を走るが、道路を渡る際に車道を通る。そのときに通信が途切れると大きな問題となる。街中ではビルの陰など通信のデッドポイントがあり、実際に走らせないとわからないところがある。渋谷区が取り組んでいるデータの可視化のように、事前に情報を入手して活用できれば、運用がしやすくなる」と語る。

 その意味で、今後は自治体との連携も重要になってくると内山氏は語る。

 加藤氏は、「渋谷区には『デジタルツインを作りたいので点群データを取りたい』という企業からの問い合わせがある一方、『データプラットフォームを使いたい』と望む企業もいる。この両社をマッチングさせることが行政の役目であり、実装に向けて具体的に進むことだと考えている」と語る。

 また、スマートシティに取り組む際のモチベーションとして、とても不便なこと、解決しなければいけない課題がないと、具体的な事業になりにくいという。また、誰が最初に音頭を取ってリードしていくかも重要だ。区では、最初の部分はできるだけ行政が主導するべきだと考えている。

 データを広く共有することについては内山氏も賛成だ。「たとえば1時間しかない昼休みにランチを買いに行く際、往復20分歩くのは難しいけれど、ロボットに徒歩1分のところまで運んできてもらえば食べたいというようなニーズがあるかもしれない。このような、まだ顕在化していないニーズをデータから導き出すことができるかもしれないと思った」

 ロボットが配送できる基本的なインフラが整ったところで、そこにさまざまな人のアイデアのアプリやサービスが乗ることで、新たな市場が立ち上がる可能性が出てくる。

ロボットが配送できるインフラが整うことで、新たなサービスや市場が立ち上がると語る加藤氏

 データの共有だけでなく、人の交流も重要だ。加藤氏は「産官学民協議会の準備段階のミーティングをすでに始めているが、役所のメンバーと不動産デベロッパー、スタートアップなどさまざまな分野の人が集まってディスカッションすると、いろいろなアイデアが飛び出してきて、すごく楽しかった。コロナ禍によって、参加者の課題解決への意欲が非常に高まっているということを実感した」と話す。

 内山氏も、「当社が取り組んでいる遠隔操作の領域は、いってみればラジコンの世界。それ自体は最先端ではなく、大企業からすると取り組みにくい分野だと感じている。当社はスタートアップとしてそこに可能性を感じており、これからも実証実験を進めていき、いろいろな人の意見を聞きながら実用化に向け開発をしていきたい」と語る。

 次の質問は、「スマートシティにはどのようなソリューションが実装されやすいか」。加藤氏は、「一つは置き換えのもの。先日、区内の宮下公園に設置している防犯カメラをAIカメラに置き換えて、公園の利用者の属性を検出できるようにした。これによって、公園の管理部門が、データを生かした公園管理ができる」と話す。

 もう一つは、新鮮な体験だと加藤氏は続ける。「今、渋谷の街には電動キックボードがたくさん走っている。新しくてワクワクするような体験は、実装が早いと感じている。事実、渋谷区であるスタートアップの実証実験のモニターを募集したところ、4日で約800名の応募があった。新しいことへの感度は高いエリアだと思う」

 内山氏は、「そうしたモニターへの参加意欲は非常に魅力的だ。ユーザーと会話をすることで課題も見えてくる」と渋谷区が持つポテンシャルとスタートアップの相性のよさに期待を述べる。

渋谷区のポテンシャルとスタートアップの相性の良さに期待するという内山氏

 その一方で内山氏は、社会実装にはコストも重要だと語る。「コストがネックとなって実装が遅れているのなら、コストを下げる方法を考えたい。たとえば荷物を届けるときに、全自動のロボットなのか、遠隔操縦なのかは顧客にとってはどうでもいい話。その点で当社は、コストが安い遠隔操縦を武器にして、早期の社会実装を目指している」と話す。

 また、スマート化を促進させるために必要な要素について、加藤氏は「特定のデータをつなげばスマート化が進むとは考えていない。実証だけであれば行政と特定の1社だけの連携でいいと思うが、実装まで視野に入れると、やはり多数の企業が参加して意見を交わすなかでアイデアが生まれてくると感じている」と語った。

 内山氏は、2024年4月の道交法改正以降、渋谷区内でLOMBYの導入は可能性があるかを加藤氏に聞いた。加藤氏は「関心が高い人は多いと思う。しかし渋谷は人も障害物も多い都市だと思うので、まずは公園など、区切られたエリアの中で協業してみるのは面白いと思っている」と答えた。

 また加藤氏は、行政に対して、実証の場の提供以外で何を期待しているかを内山氏に尋ねた。内山氏は「やはりデータ提供への期待が大きい。民間でデータを提供している企業もあるが、スタートアップはデータを整備するのが資金的にも難しい。できれば誰でもアクセスできる形で行政が用意していただければありがたい」と答えた。

 数多くのスタートアップが生まれている渋谷区で、スマートシティの新しいコラボレーションが始まろうとしている。これまでにない斬新なアイデアのサービスに期待したい。

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