次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート
資源の少ない中小企業にSORACOMのサービスはメリットが大きい
自前主義からの脱却で作らずに創る JOHNANとカワサキ機工の製造業IoT事例
茶生産者専用クラウドサービス「カワサキスマートコネクト(KSC)」を運営するカワサキ機工
カワサキ機工は、1905年に創業した企業で、静岡県掛川市に本社を持つ。煎茶分野を中心に蒸機や乾燥機といった荒茶加工設備の開発を行なってきたほか、現在では、茶葉収穫機や防除機などの茶園管理機械、食材向けの高圧蒸気殺菌機など、茶生産全般に関わる設備の開発、製造、保守サービスを提供している。
製茶機械における国内シェアは約6割のシェアを持ち、煎茶以外にも、甜茶や烏龍茶、紅茶などにも対応。また、お茶専用の成分分析計では国内100%のシェアを持ち、加工技術を活用した食品加工用殺菌装置や乾燥装置も手掛けているという。
カワサキ機工の川﨑洋助社長は、「お茶は嗜好品であり、お客様が望むお茶をどう作り、いかに品質をあげるかということに取り組んできた。独自開発したマイクロ水分計測や各種温湿度計などの高精度の計測機器を駆使した制御により、製品瀕死冊の安定感や自動化を進めてきた。また、茶園管理機器の電子制御にもいち早く乗り出しており、収穫時の刈り取りの効率化機能や操舵アシスト機能などを搭載している。お茶の高品質化、作業の自動化および効率化が得意分野である」とした。
2019年秋から開発に着手し、2020年8月にリリースした茶生産者専用クラウドサービス「カワサキスマートコネクト(KSC)」に、ソラコムを採用した。
カワサキスマートコネクトでは、茶生産者が行なった作業や製品に関するデータを、迅速、正確に収集し、管理することで、従来とは次元が異なる効率化を果たすことを目指したという。
「農業分野では、働き手が3割減少すると見られる深刻な人手不足と、従事者の平均年齢67.8歳という高齢化の課題がある一方で、農地面積は1.5倍に拡大している。また、GAPやHACCPといった食の安全に関わる制度に対応しなくてはならず、これに伴う管理作業が増加することになる。これらの課題に対しては、カワサキ機工が持つ技術だけでは解決が難しいこと、IoT領域の開発にかける時間や資金の余裕がないことから、信頼できるパートナーを探し、先端技術を取り入れることが最優先であると考え、ソラコムをはじめとした各社のテクノロジーやサービスを採用することにした」(川﨑氏)。
茶畑における作業履歴を自動送信収集するために、乗用型茶園管理機では、GNSSを利用した位置情報の追跡、作業内容のデータ送信、収集を可能にした。アットマークテクノのArmadilloなどを活用して、位置情報や作業時間、収穫や薬剤散布量などの情報を自動収集できるようにした。収集したデータはライブリッツの農業日誌「Agrion」で一元管理。自動収集するデータ以外にもスマホを通じて入力できるようにしているという。
さらに、カワサキ機工が開発した生葉受入管理システム「データキーパー」にデータを送信し、生葉データと管理データを連携。トレーサビリティデータを作成することもできる。
データ通信環境にはSORACOM Air、データの集積と配分にはUnified Endpointを活用。データ加工にはSORACOM Orbit、クラウドへのデータ送信にはSORACOM Funnel、一部データの蓄積にはSORACOM Harvest、メンテナンスにはSORACOM Napterを採用しているという。
「デバイスの開発ができても、IoTに関する技術や資源が足りないため、それを補完できること、画一的なサービスの提供で終わるのでなく、今後の成長を見越した技術やパートナーを求めていたこと、短期間での開発が可能な技術を持つパートナーを探していた。ソラコムでは、サービスの多様性があり、将来に渡って、開発領域を拡大できると判断したことに加えて、料金がリーズナブルな設定であることや、開発環境の構築方法や、システムの利活用方法などの具体的な情報を多数公開しており、IoTの知見が少なくても開発できると考えたことで選定した」と川﨑氏は語る。
また、開発工数の削減や短期間での開発、保守やセキュリティも一任できる点がメリットであると考えた。「実際に採用してみると、設定が容易であることや、サービス変更やデバイス変更の場合にも迅速に対応でき、品質の高いシステムを短期間で構築することができた。ソラコムのサービスは、資源の少ない中小企業にはメリットが大きい。今後、機械の稼働状況のモニタリングにより、予防保全を推進したり、製品品質の見える化や、省エネ稼働の実現などにもつなげたい。今後もIoTサービスを強化したい」(川﨑氏)という。
ソラコム 営業部門 セールスディベロップメントチーム 統括の伊佐政隆氏は、「ソラコムは、テクノロジーを進化させ、それを選んで使える状況を提供し、それぞれの企業らしさを残して使ってもらえるのが特徴である。現時点では、活用方法までは思いつかなくても、ビジネスモデルの壁打ち相手として、ソラコムに相談してもらいたい。また、具体的な技術アーテキクチャーの相談にも乗ることができる。ウェブ会議を利用した個別相談を無料で行なっているので、中小企業の人たちも、ぜひ利用してほしい」と述べた。
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