業務を変えるkintoneユーザー事例 第151回
業務分散と属人化の排除も成功した會澤高圧コンクリートの事例
kintoneで脱残業地獄 すき間時間を活用する「お仕事ビュッフェ」で脱1人運用
2022年08月26日 09時00分更新
業務のアプリ化が進んだ結果、ひとりではさばききれなくなり、仲間を募った
kintoneアプリを進めることで、見積り書作成や請求書作成、予実管理といったExcelをなくし、出荷日確認や出荷依頼、製造依頼、車両手配といった電話・メールでの手配も削減することができた。社内業務の多くをアプリ化することに成功したのだが、年を追うごとにさらに物件数は増え、畑野氏1人ではさばききることができなくなってきた。そこで、仲間が欲しいと思うようになった。
日本国内に多数の事業所や工場があるので、仲間になってくれる人がいるのではないかと、畑野氏はいろいろ声をかけてみた。勉強会を開いたり、会議で助けを求めたり、直接声をかけたりしたのだ。しかし、「『私、時間あります』なんて自分から言う人はいないよ」とか「CADで図面を描くなんて無理」「CADできる人、雇ってもらえばいいじゃん」「もちろん、こっちの仕事も手伝ってくれるんだよね」といった返答が返ってきた。
しかし、どうにかして仲間が欲しい畑野氏はある作戦を思いつく。スキマ時間をください、とお願いすることにしたのだ。
「仲間を探していろんな方とお話しする中で、1ヵ月、1日の中で業務量の波があるとわかりました。たとえば、営業チームの方だと、営業さんが出かける前と帰ってきた後は忙しいけど、日中の時間は割と落ち着いています。経理関係だと、月末・月初は超忙しいけど、月半ばは、わりと時間があります。忙しい時間と忙しい時間との間にどうにか業務を差し込んでもらえないか、という作戦に出たのです」(畑野氏)
結果から言うと、この作戦は成功した。本橋俊充顧問と石澤良一顧問に相談に乗ってもらい、拠点・部署の壁を越えて、仲間と引き合わせてくれたのだ。
手伝ってくれるメンバーは、時間が空いたら畑野氏に連絡し、スキルや時間に合わせた仕事を割り振ってもらっていた。しかし、メンバーと扱う物件が増えるにつれ、その手間が大きくなってきた。
畑野氏が指示をする時間とメンバーが指示を待つ時間がもったいない。そこで考えついたのが、スキマ時間に仕事を勝手に取っていってもらう方法。チーム全体の仕事を全部kintoneに入れてしまい、各自ができる時に好きな仕事を取っていってもらう「お仕事ビュッフェ」という仕組みだ。
「このやり方どうですかと皆さんに聞いたところ、朝にたくさんあったお仕事が、夕方に片付いてるのがとっても気持ちいい、という声が寄せられました。あと、1日が終わって自分の名前で絞り込んだ時に、これだけ私頑張ったんだ、と達成感が得られるという感想ももらいました」(畑野氏)
お仕事ビュッフェの利点は3つある。まずは「時間有効活用」。時間と仕事内容を自分に合わせて選べるということ。2点目が「連絡時間軽減」で、指示をしない、指示を持たないことで連絡時間を削減した。3点目は「全体状況把握」。メンバー全員がお仕事ビュッフェのアプリを見に行って、全体の仕事の状況を把握しているので、業務の停滞を防止することもできるようになった。
お仕事ビュッフェの導入でメンバーは10倍、残業時間はほぼ0に
そして、さらに物件も増えていき、チームメンバーの働き方が確立した2018年、とうとうプロジェクトから事業になった。
kintoneの導入効果は大きかった。2013年には76棟だった物件数は、2021年に760棟と10倍に増えた。メンバー数は畑野氏1人だったが、10人に増えてこちらも10倍。残業時間は地獄の日々だった2013年は月に80時間ほどだったが、現在はほぼ0時間となった。
離職率は0パーセント、チームメンバーの女性比率は100%、育休後の復帰率も100%とのこと。突発的に子供が熱を出したりして、休んだり遅刻しても、お互いにフォローしあえる働きやすい環境を構築できたのも大きかった。
勤務地がばらばらなので、自然災害などの緊急時にとても強いというBCP対策というメリットも得られた。もちろん、離れていても滞りなく働けるうえ、働く時間も選べる。業務の細分化も進んだので、脱属人化にもなった。誰かが休んでも仕事が止らない体制が構築できたという。
「私たちはコロナになる前からkintoneを使って在宅勤務を進めていたので、私のチームはスムーズに在宅勤務に移行できました。その立役者になったkintoneの評価もアップして、最近では社内の人からkintoneについて問い合わせをいただくことも増えてきて、うれしい限りです」(畑野氏)
その後、2020年8月から畑野氏も1年間の産休育休を取得した。戻って来た時にも、普通に仕事が回っていた。そこで、畑野氏は8年の時を経て、チームから少しずつ外に出て行こうと考えているそう。
「今後は、社外も含めてエンドユーザーさんに確かな製品を届けるチーム作りをkintoneでやっていきます。また、8年間かけてkintoneを通して培ってきた働き方を会社全体に広げ、停滞している業務をシェアできる仕組みを作りたいと思っています。その先の願望としては、まとまった時間で働けない人の新しい雇用計画を作りたいと思っています。kintoneに出会えたから、本来の働き方では一緒に働くことのできなかったメンバーと出会えて、すごく楽しく働けています。これから少しずつ恩返しできるようにがんばりたいと思います」と畑野氏は締めた。

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