ネットギアの2.5Gマルチギガ/PoE++対応 小型スイッチ「MS108EUP」レビュー
1ギガでは不十分!“Wi-Fi 6以後”に備える「マルチギガ&PoE++」スイッチ
2022年07月27日 08時00分更新
Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に6GHz帯の無線チャンネルを追加し、より高速で安定した無線通信を可能にするWi-Fi 6Eが、日本でもまもなく利用可能になる見込みだ。企業オフィスや店舗にあるWi-Fiネットワークも、現在のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)から徐々にWi-Fi 6やWi-Fi 6Eへと切り替えていくことになるだろう。
ただし、Wi-Fi 5からWi-Fi 6/6Eへの無線ネットワークの切り替えは、単にWi-Fiアクセスポイントを交換(リプレース)するだけでは済まない。Wi-Fi 6/6Eの無線通信トラフィックは1Gbpsを上回るので、その能力をフルに発揮させるためには、アクセスポイントを接続する有線ネットワークが1ギガ仕様ではもはや不十分なのだ。
もうひとつ、PoEスイッチからアクセスポイントへの給電容量も注意する必要がある。Wi-Fi 6/6Eアクセスポイントの上位モデルでは、高速な通信処理を行うために消費電力も大きくなっており、従来のPoEやPoE+ではフルパワーを発揮できない。したがって、スイッチをより大容量給電が可能なPoE++クラスのものに交換する必要があるかもしれない。
つまり“Wi-Fi 6以後”の無線ネットワークへの進化を考えると、必然的に有線ネットワークの見直しも必要になってくるわけだ。無線ネットワークのリプレース自体はまだ先の計画だとしても、そもそも現在の業務現場ではPCやモバイルデバイスを通じてクラウドアプリを使うことが多くなっており、高速で安定したネットワークはすでに業務に不可欠である。有線ネットワークにも目を向けて、「いま」と「これから」にどう備えるのかを考えなければならない。
2022年1月に国内発売されたネットギアの「MS108EUP」は、そうしたWi-Fi 6以後の有線ネットワーク構築に適した小型スイッチとなっている。今回はこの製品をレビューしながら、いまとこれからに備える有線ネットワークのポイントをまとめてみよう。
2.5Gマルチギガ×8ポート、PoE++給電にも対応するMS108EUP
MS108EUPは、60W給電が可能なUltra60 PoE++ポートを4つ、30W給電が可能なPoE+ポートを4つ備え、全体で最大230Wの給電量をサポートするアンマネージプラススイッチだ。ファンレス仕様の本体は210×140×40mmとコンパクトで、重量は900g。ゴム足と壁掛けキットが付属しており、どんな場所にも設置しやすい一台である。
8つのポートはすべて1G/2.5Gのマルチギガビット対応となっている。そのため、既存のCat 5e/6ケーブルを敷設し直すことなく、これまでの1Gネットワークを超える高速な通信が利用できる。スイッチング容量は合計40Gbpsであり、ノンブロッキングで快適な通信が可能だ。
VLANやQoSの機能を備える点も重要だろう。オフィスや店舗でゲストWi-Fiを提供する場合でも、業務用とゲスト用のネットワークをVLANで安全に分離し、なおかつゲストユーザーが多く使っても業務用トラフィックを優先するようQoSで制御できるからだ。
最大60W給電ができるPoE++に対応しているため、たとえば4KのネットワークPTZカメラ/監視カメラ、IPテレビ電話、デジタルサイネージ、POSシステムなどの接続にもMS108EUPは活用できる。そうしたトラフィックにもVLANやQoSが適用でき、さらにポートごとにPoE給電を細かくコントロールできる機能も備えている(詳しくは後述)。
“Wi-Fi 6以後”のネットワークに適している理由
なぜMS108EUPは、Wi-Fi 6/6Eのアクセスポイントを接続するのに適したエッジスイッチと言えるのか。まずは、ネットギアが現在提供しているWi-Fi 6/6Eアクセスポイントのラインアップを見てほしい(Wi-Fi 6EのWAX630Eは日本未発売)。
ひとつは通信スピードだ。Wi-Fi 6/6Eアクセスポイントは、エントリーモデルの製品であっても1ギガビットを超える無線通信スピードを特徴としている。そのため、すべてのモデルが2.5Gのマルチギガポートを搭載している。もちろん1Gスイッチにも接続はできるのだが、本来の実力を発揮させるにはマルチギガ対応のスイッチに接続するのが望ましい。
もうひとつが給電方式である。エントリーモデル~ミッドレンジモデルであればPoE+で十分だが、ハイエンドモデルのWAX630やWi-Fi 6E製品のWAX630Eになると、本体の消費電力が大きいためPoE++給電が推奨されている。PoE+でも動作するが、フルパワーを発揮させるならPoE++スイッチが必要というわけだ。ちなみに、これからラインアップが拡大してくるWi-Fi 6E製品では、新たな周波数帯(6GHz帯)が追加されてストリーム数も増えるため、平均的にはWi-Fi 6製品よりも消費電力量が大きくなると考えられる。
したがって、これからの無線LANの進化を考えると、アクセスポイントを接続する場所に設置する有線LANのスイッチは「マルチギガ&PoE++対応」にしておくことがおすすめだ。以下の表のとおり、ネットギアでもこのカテゴリのスイッチを強化し始めている。2.5Gマルチギガと10Gに対応したモデルもあるので、オフィスネットワークの基幹部分を10G化しつつ、アクセスポイントを2.5G接続するといった構成も考えられる。
日本語GUIによるわかりやすい設定画面、PoE給電の細かな制御も可能
それではMS108EUPの機能や使い勝手を詳しく見ていこう。
MS108EUPはアンマネージプラススイッチなので、Webブラウザからアクセスできる管理画面を備えている。最初から日本語GUIが使えるようになっており、マニュアルなしでも使いこなせるだろう。また、PCブラウザとスマホブラウザのそれぞれに合わせた画面サイズで表示されるので、どちらからアクセスしても見やすく使いやすい。
ログイン後、最初に表示される「ホーム」画面では、接続済みのポート数、ファームウェアバージョンや基本的な設定内容を一覧できる「システム情報」、各ポートの接続状態を示す「ポートステータス」が参照できる。
画面上部の「スイッチング」「PoE」「診断」「設定」をクリックすれば、それぞれの詳細情報/設定/操作画面が表示される。スイッチングの画面ではQoSやVLAN、LAG(リンクアグリゲーション)などの設定、PoE画面では「無停電PoE」(後述)やポートごとの給電設定が行える。「診断」はケーブルテスト、ポートミラーリングなどのトラブルシューティング用機能、設定は本体全体の設定、ファームウェア更新、本体再起動などの機能を備える。
PoE関連の機能や設定について、少し説明しておこう。まず「無停電PoE」は、スイッチ本体を再起動させてもPoE給電を継続させることのできる機能だ。PoEデバイスによってはスイッチと一緒に再起動させたくないものもあるが、その場合はこの機能を有効にすればよい。
「PoEスケジュール」はその名のとおり、PoE給電を行う/停止する曜日や時間帯を設定できる機能だ。1ポート単位でも全ポート一括でも設定ができる。たとえばオフィスや店舗などで、アクセスポイントを接続したポートの給電を業務時間中だけに絞っておけば、業務時間外にゲストWi-Fiを悪用されるリスクを抑えられる。もちろんそのほかのデバイスでも、自動でオンオフができて省電力化につながる。
「PDヘルスモニタリング」は、PoE接続したデバイスに対して定期的に稼働しているかどうかのチェック(ping)を行い、デバイスからの反応がない場合にはPoE給電のオフ/オンで再起動させる機能だ。これもポートごとに設定できるようになっているので、必要に応じて活用したい。
* * *
今回見てきたとおり、これからの“Wi-Fi 6以後”の無線ネットワークを考えるうえでは、有線ネットワーク側の備えも必要だ。MS108EUPをはじめとするネットギアの「マルチギガ&PoE++対応スイッチ」製品シリーズは、そうした次世代のオフィス/店舗ネットワークを構築するための第一歩として、手ごろな選択肢と言える。ぜひ注目し、採用を考えていただきたい。
(提供:ネットギア)
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