エピストラは6月27日、細胞培養の条件検討を自律的に試行錯誤するロボット・AIシステムを開発し、実際に再生医療で用いられる細胞培養プロトコルを改善することに成功したと発表した。
本研究は、エピストラと理化学研究所とロボティック・バイオロジー・インスティテュートの三者での共同研究グループで実施したもの。共同研究グループでは、滲出型加齢黄斑変性を含む網膜色素上皮(RPE)不全症の再生医療において重要な工程である、iPS細胞から網膜色素上皮細胞(RPE細胞)への分化誘導を対象として、高精度な生命科学実験動作が可能なRBIの実験ロボット「まほろ」と同社の人工知能(AI)ソフトウェア「Epistra Accelerate」を組み合わせてプロトコル自動最適化の実証実験を行なった。
理研の保有する細胞培養プロトコルを最適化対象として、Epistra Acclerateを用いて探索するパラメーターを7種選択し、1ラウンド(40日間)で実施する実験パラメーター48条件を計画。ラウンド毎の完了後に各条件のRPE細胞の収率をEpistra Acclerateを用いて評価解析し、次回以降のラウンドの計画を行なった。合計で3ラウンド(144条件)の実験を半年間掛けて行なうことで、これまでで最も高い評価値(91%:RPE細胞の収率、人間の実験者による実験での実績を含む最も高い値)を得る事に成功した。
以上のことから、実験ロボットと当社の実験自動最適化AI「Epistra Accelerate」を組み合わせたシステムにより、iPS細胞からRPE細胞への分化誘導効率を高める培養条件を人間の介在なしに自律的に発見し、細胞培養分野における自律実験が可能であることを示した。
本研究の成果は「専門家の手技に依存することなく、ロボットとAIのみで専門家と同等の高品質な結果を得る条件の探索に成功した」と捉えられるという。技術移転が叶わずに共有されてこなかった「匠の技」を広く世界に開放するための一つの方法論になりえるとしている。