ASCII Power Review 第176回
ズームは電動式の時代が来るのか!?
ソニーのα新レンズ広角3兄弟どれを選ぶ!? 「15mmF1.4」「11mmF1.8」「10-20mmF4」実写レビュー
2022年06月29日 10時00分更新
ソニーのEマウントレンズに「E 15mm F1.4 G」「E 11mm F1.8」「E PZ 10-20mm F4 G」の3本が新たにラインアップされた。
いずれもAPS-Cフォーマットの広角レンズということで、「ZV-E10」(かなり人気らしい)でVlog撮影を楽しむユーザーに向けた製品だ。しかし大口径単焦点やコンパクトなショートズームなどスペック的には静止画メインのユーザーにとっても魅力的。ということで今回は新レンズ3本の静止画での撮り心地をチェックしていこう。
ソニーαの最新レンズ広角3兄弟、ズームは電動で動画向き!?
「E 15mm F1.4 G」は35mm換算22.5mmで絞り開放F1.4の大口径。絞りリングも搭載され、動作はクリックとシームレスを切り替えられる。APS-Cフォーマットではシグマや富士フイルムに16mmF1.4というスペックの近いレンズはあるが、それらと比べサイズは小型軽量だ。
「E 11mm F1.8」は35mm換算16.5mmで絞り開放F1.8と超広角にしては大口径、それでいてサイズはコンパクトと今まであまり類がなく、個人的には3本の中では一番気になるレンズだ。他の2本がハイグレードの「G Lens」なのに対し、「E 11mm F1.8」はノンブランドになるが、AF/MFスイッチやモードボタンも搭載するなど、機能面で見劣りすることはない。
「E PZ 10-20mm F4 G」は35mm換算15-30mmの超広角ズームである。Eマウントにも「E 10-18mm F4 OSS」というレンズはあったが、今回は電動ズームを採用しているのが大きな違いだ。
ズーム動作はレバーとリング(ZV-E10ではボディーのズームレバーでも操作可)の双方でおこなえる。レバーは変速タイプなので移動量によってズーム速度をコントロールできる。スムーズなズーム動作が求められる動画に向いている。
リングは電動ズームにありがちなタイムラグがなく、まるで手動ズームのような挙動で動作してくれる。レンズ内手ブレ補正は省かれているが全長はコンパクトになり重量も約47g軽量化されている。
なお各レンズとも最短撮影距離が短く撮影倍率が高いのも特徴。主なスペックは下記の表にまとめているのでご覧いただきたい。
実写してみて広角の1mmの差を実感
3兄弟の基本性能はさすが最新レンズのクオリティー
各レンズの実写を見てみよう。カメラ内レンズ補正は初期設定の周辺光量と倍率色収差はオートで撮影した。なお歪曲収差はユーザーが設定をすることはできない。
画角を比較すると「E 11mm F1.8」と「E PZ 10-20mm F4 G」の広角側では写る範囲が結構異なる。広角では焦点距離が1mm違うだけで画角にも差があることを気付かされた。
以下、定点で撮影し各レンズの画角の違いを比較してみた。いすれも使用カメラ「ZV-E10」・絞りF5.6・シャッタースピード1/250秒・ISO50・クリエイティブスタイル スタンダード・ホワイトバランス、Dレンズオプティマイザ、レンズ補正は全てオート。
各レンズとも共通して中心部は絞り開放からシャープな写り。絞ったときの回折現象も比較的目立たず、F16でも十分な解像感を保っている。周辺部は絞り開放で少し描写の甘さはあるが1段絞るだけで解消する。F16まで絞ると中心部より回折現象の影響がでて少し甘くなる。とはいえ広角レンズとしてはかなり優秀な部類といえる。
以下、各レンズの絞り開放と1段絞った状態、F16で撮影した写真の中心部と周辺部それぞれ拡大して比較。
歪曲はしっかりと補正され、歪みが気になることはない。周辺光量は絞り開放では少し光量低下があり1~2段絞ると徐々に解消していく。試しに周辺光量補正をオフにしてみると、もっと極端な光量低下になるので、過度にならないようにあえて光量低下を残すことで、自然な描写を意識した補正をしているようだ。
カメラを水平垂直に構え歪曲をチェックしてみたが、各レンズともほとんど歪みは感じられない。以下、いすれも使用カメラ「「ZV-E10」」・絞りF5.6・シャッタースピード1/100秒・ISO100・クリエイティブスタイル スタンダード・ホワイトバランス、Dレンズオプティマイザ、レンズ補正は全てオート。
以下、各レンズの絞り開放と2段絞った写真を比較。開放では少し周辺光量低下を残して補正されている。
APS-Cフォーマットのレンズは「α7」シリーズなどのフルサイズ機でも、APS-Cクロップ機能で使用することができる。画素数は減るが現在自身が所有している4240万画素(7952 x 5304ピクセル)の「α7RⅢ」なら約1800万画素相当(5168 x 3448ピクセル)、「α7c」などスタンダード機な2420万画素機(6000 x 4000ピクセル)でも1000万画素相当(3936 x 2624ピクセル)の解像度は出る。
初期設定ではフルサイズ機にAPS-Cフォーマットのレンズを装着すると自動的にAPS-Cにクロップされる。しかし、あえてクロップせずにフルサイズのまま撮ってみると周辺はケラレ、歪曲や像の乱れも目立つが、ある程度トリミングすると実はAPS-Cよりも少し広い画角で撮ることができる。画面全域で整った描写が必要な撮影には不向きだが、街中のスナップなら表現の一つとして楽しめる。
写真を撮る道具としての使い勝手を試す! 愛機で徹底実写した
次に各レンズで撮影していて感じたことをお伝えしていこう。まず「E 15mm F1.4 G」だが、ある程度絞って(F5.6くらい)遠景を撮影してみると画面全域が整った優等生的な描写になる。しかし撮っていて面白かったのはやはり開放F1.4を活かしたボケ感だ。
背景が広く写る画角や、被写体に近寄ったときの遠近感など、焦点距離の長いレンズとはまた違ったボケが味わえる。
以降の写真はすべて「α7RⅢ」で撮影。クリエイティブスタイル スタンダード、ホワイトバランス、Dレンズオプティマイザ、レンズ補正は全てオート。
「E 11mm F1.8」は超広角ならではの広い画角と遠近感、さらに開放F1.8のボケと使いこなしがいのある要素が詰まったレンズである。
そのぶん構図や被写体との距離、ボケの活かし方など考慮することも多くなかなか手強い(今回の作例も使いこなせているとは言えない……)。しかしそういった創意工夫も写真を撮る楽しみの一つ。実際3本のなかで一番撮影枚数が多かったのはこのレンズだった。
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