テープに録音するということは
クリエイティブな行為
その後、音楽コンテンツの主流はレコードからCDへと移ってもやることは変わらず、せっせとカセットテープに録音し続ける日々(CDについてはまた後日)。A面とB面があるカセットテープに、いかに空白の時間がないように録音するかがキモです。アルバムの曲の分数を計算して順番をいれかえたり、同じ曲をあえて録音をしていかに待ち時間をなくすか? カセットのラベルをいかにかっこよく作るか? 作る過程から聴くにいたるまで、すべてに夢中になっていました。まさに自分のためだけにあるガジェット。今で言うところのスマホ、自身のアイデンティティーになるものが、僕にとってはウォークマンでした。
ですが“ウォークマン”という言葉は、時として呪縛にもなります。2003年におきたソニー株の急落によるソニーショックから経営不振に陥ったとき、ニュースや雑誌のあちこちで見た「かつてのウォークマンのようなソニーらしい製品が生み出せていない。」という言葉。それだけ、ソニーの代名詞に上り詰めるまでに重要なカテゴリーとなっていたのでしょう。あくまでも個人的な意見ですが、「○○らしい」という言葉も好きではないし、外野が何かを言うのは勝手ですが中の人が「過去の〇〇」に囚われるのはナンセンスだと思っています。
電車の中でイヤホンで音楽を聴いたり、ヘッドホンをつけてジョギングをしている光景は40年前も変わることはなく、ただ、そのコアになるものはスマホに置き換わりました。多種多様に便利なツールであるスマホに比べると、音楽だけを聴くためだけの音楽プレーヤーは今となっては少し窮屈なものに感じるかもしれません。けれど、その“自分の楽しみをモバイルするスタイルの礎”を築いたのは、まさしくウォークマンだったのです。
たくさんの人たちの青春時代を駆け抜けたウォークマン。このカセットタイプのウォークマンを皮切りに、CDウォークマン、MDウォークマン、DATウォークマン、ビデオウォークマン、ネットワークウォークマンなど、数々の名機やエピソードをソニーは生み出していくのですが、それはまた別の機会に紐解いていきたいと思います。
筆者紹介───君国泰将
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