ソニー製品をソニー好きライターが振り返る連載始まります!
みなさん好きなブランドやメーカーはありますか? 僕(筆者)は、ソニーとガンダムが大好きです。というと、なんでもかんでも知ってるのか? と言うとそうでもなく、知識よりは愛を優先するほうです。
この世に生を受けて50年。気がつけば半世紀を生きてしまいました。自分でもびっくりです。昔の50歳といえば、すべてを達観したミドルなイケオジをイメージしていたのに、自身はというとまるで成長することなく、今も昔も趣味は変わらずソニーとガンダムです。
さて、前置きが長くなりましたが、自分の人生とともに歩んできたソニー製品やその歴史について紹介しつつ、筆者の思い出を語っていくのが当連載のコンセプトです。
軽く自己紹介すると、筆者は地方にある小さな家電店の子供としてに生まれました。電気店というとよくある街の電気屋さんを思い浮かべるかもしれませんが、黒物家電(テレビ、ビデオ、カメラなどのことです!)しか扱わないという父親もこれまた偏った人でした(今も存命です)。思い出すと、運動会やイベントがあるごとにバカでかいビデオカメラを担いてくる父親は、傍目にみても奇特な人だってに違いありません。生まれも育ちもそんな英才教育の甲斐あって、すくすくとオタクの道を歩んで来ました。
連載第1弾はベータマックスから!
そして、今回紹介するのは筆者が最初に触れたソニー製品、家庭向けビデオテープレコーダー「Betamax」(以下、ベータマックス)です。いわゆる、マイファーストソニー。もちろん自分が所有しているわけではなく、父親の所有物でした。小学校低学年でベータマックスの使い方を覚え、もらった使い古しのベータテープに好きなテレビ番組を録画して見るというのが日常の楽しみでした。
おそらく知らない人が圧倒的に多いと思われるので、ベータマックスは何か? を説明しますと、1975年に登場したビデオカセットの規格です。当時は、家庭用ビデオカセット規格である「VHS」の2つのフォーマット争いを繰り広げている真っ只中でした。しかし我が家では、ベータマックスこそ至高であり、唯一無二。父親が使っていたビデオカメラも、ビデオデッキもベータマックス。カセットのサイズもVHSと比べればコンパクトで、早送りや巻き戻しも早くてすぐに再生できるレスポンスの良さは快適そのものでした。
そして何と言っても画質の良さ。限りあるテープを使い回すため、βIII(3倍モード)で録画していましたが、少年の目に映るその画質はまさに放映されたままの綺麗さを残せるアイテムでした。しかも、何度重ね録りしても顕著な劣化もなく、それが当たり前だと思って使ってた事を覚えています。
うんちくとして、ベータマックスの録画モードは、β1を基準として、βII(2倍モード)、βIII(3倍モード)があります。自身が使っていた当時、βIIが標準だと間違って理解していたため、なぜβIIIにしても録画時間が1.5倍にしか増えないのだろう? と疑問に思っていました。その後、超高画質のβ1が存在し、そのβ1からみて3倍になるのがβIIIだと知り、「まだ上のクオリティーの画質を残していたのか! すごいぜベータマックス!」と絶賛していました。
その画質の凄さに気づいたのは、友人(ライバル)の家にあったVHSデッキで録画番組を見た時です。友人は、VHSのウリでもある3倍モードにするとベータマックスよりもずっと長く録画できるということを誇らしげに自慢してきました。ですが、それを見たときの衝撃たるや。
ノイズまじりで見るに堪えず(おそらく何度も重ね録りしたのでしょう)、あまりにも画質が汚く、よくこれで見れたものだな……と。あぁこれはベータマックス勝ったな……VHSおそるるに足らず! と心の中でほくそ笑んでいました。少年時代にありがちな、小さなプライドの闘いです。
「画質こそ正義よ!」とベータマックスへの愛を深めながらも、それとは裏腹に増殖していくVHS市場。そんな政治的な状況は意に介さず、孤高の存在感を楽しんでいました。ところが、そんな自分の見にも事件が起きます。それは、ビデオレンタルです。
近所にできたレンタル屋のお兄さんと仲良くなり、貯めたお小遣いでレコードを借りたり、ビデオテープを借りることがありました。最初の頃はレンタルの棚にタイトルごとにベータマックスとVHSがそれぞれ1本づつ置いてあったのに、いつからかVHSのみのタイトルが増え、小さい箱のベータマックスの姿が徐々に減っていきました。
そしてついに自分の信念がゆらずXデーがやってきました。楽しみにしていたアニメタイトルのレンタル開始の日、そこにはVHSしかありませんでした。「嘘だと言ってよオニィーさん! 倉庫に○○のベータマックスが隠してると言ってよ!」としがみつきましたが、「もうねベータマックス借りる人がいなんだ……ごめんね」と。僕たちのヒーローが世間から見放されたのだとショックを隠しきれませんでした。
あんなにベータマックスが大好きだった少年は一転、手のひらを返したかのほうに「VHSが欲しい! VHSデッキがうちにも欲しい!」と懇願するようになってしまいました。
そんな少年時代に学んだことは「いくら良いモノを作っても、多勢に無勢、戦略で勝てなければ生き残れない」という事でした。この後、同じような歴史が何度となく繰り返される事を筆者もソニーもこのときはまだ知るよしもありません。
まったく関係ないエピソードですが、録画するというのは番組がはじまったらヨーイドン! で録画をはじめて、終わったらとめるものでした(そもそも予約録画ができるという機能があることすら知りませんでした)。そんなときに困るのが、外に遊びに行きたい、けれど録画したいアニメ番組があるときです。
これを解決する秘策として編み出したのが、身内の誰かに放映時間に録画ボタンを押してもらう作戦。予約の仕方は、「今日の何時に●●があるから予約してね! 絶対だよ!」と頼むだけ。後は遊びにでかけます。ですが、帰ってきて録画されたアニメ番組みるぞ! となるも……これがまた5分や10分遅れて録画されていたり、まったく違う番組を録画していたりと、なんとも精度が低く、何度も膝から崩れ落ちたことか……。そんな事も今となっては良い思い出です。
振り返ると、今でもベータマックスのあのコンパクトさと美麗な画質は忘れられません。ソニーの歴史ネタを連載するにあたって、自身の思い出エピソード満載となってしまいましたが、これから隔週で、愛着のあるソニーと(自身の趣味)にまつわるエピソードを書き連ねていきたいと思います。
合言葉は「イッツァソニー!」
筆者紹介───君国泰将
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