設立は“泥縄的”だったIPoE協議会 今はIPv6啓蒙の一端を担う
今だから話せるIPoE協議会設立の舞台裏 そしてIPv6普及に向けた役割とは?
PPPoEとIPoEで発信者情報開示の手順も違う
大谷:社団法人になってまだ2年というIPoE協議会ですが、どんな活動からスタートしていますか?
石田:まずは啓蒙活動や情報提供ですね。
プロトコルとして見た場合、IPv6はシンプルです。起こる問題はIPv4 over IPv6を展開するにあたって、IPv4アドレスを共有していることに起因します。たとえば、発信者情報開示みたいなことをやろうとすると、PPPoEとIPoEで手順が違います。PPPoEの場合、日時さえわかれば、アドレスからユーザーを割り出せるのですが、アドレス共有してしまうと特定できません。こういったことはけっこう理解されていません。エンドユーザーも含めて全方位で知られていないことをお知らせする必要がありました。
そのために総務省のパブコメに出したり、消費者団体に説明しに行ったり、警察関連の人たちとお話ししたり、さまざまな形で啓蒙してきました。これは自負しているところです。
外山:あとはJANOGのようなコミュニティでIPoE協議会として登壇するなど、技術者への情報発信は少しずつやってきました。とはいえ、団体として日が浅いということもあって、エンドユーザーとしての啓蒙活動はまさにこれからだと思っています。たとえば協議会のWebサイトでIPoEとはなにか?みたいな説明はしているのですが、昨年末のようなイベントをメディアの記事に載せてもらうというのは、エンドユーザーへの啓蒙の点で今後ますます重要だと思っています。
石田:あと、総務省やISPとの対応以外で、もう1つやっているのが、地理情報とIPv6アドレスとの連携ですね。今まで地理情報とIPアドレスをマッピングさせるGEO IPは、IPv4だとかなり強引なことをやっていましたが、IPv6では県単位くらいでどこからアクセスしたかわかります。こうしたソリューションもIPoE事業者を巻き込みながら訴求してきました。
鶴巻:もともとのトリガーは、コンテンツ事業者にIPv6を使ってもらうにはどうしたらよいか?という点です。コンテンツ事業者がIPv6に対応しない理由の1つが、IPv4のような地理情報のマッピングがないので、ターゲティング広告が打てないとか、属性の判定ができないといった課題が出てきたので、IPv6でより精度の高いものにしていこうという話で協議会として石田さんを中心にとりまとめてきました。
IPoE事業者だけでなく、今後はコンテンツ事業者を巻き込みたい
大谷:現状のIPoE協議会の参加企業を教えてもらえますか?
鶴巻:現状、IPoE事業者が9社、それ以外が9社で、合計18社という構成です。先ほどお話ししたIPoE地理情報の利活用というソリューションに興味を持って入ってくれた企業もいますし、それ以外にもブロードバンドルーターのメーカーが加入してくれています。
石田:IPv6対応に悩まれているコンテンツ事業者に関しては、われわれで検証のためのアクセス環境の準備もできるので、ぜひ参加してほしいです。ただ、IPoE事業者から見たお客さまであるISPをどこまで巻き込むかは、ちょっと悩んでいますね。同じ協議会でディスカッションすればいいのか、別の組織を立てた方がよいのかは議論があると思っています。
大谷:日本のインターネット業界は、いろいろな団体がありますが、活動的にかぶったりするところはあるのですか?
外山:もともとIPv6の普及については、IPv6普及高度化協議会がありますし、データセンターやエンタープライズのIPv6化は別の組織があります。そこらへんとは棲み分けや協力関係にあると認識しています。ともあれIPoEに関わる話はわれわれが主体でやっていきたいと思っています。
大谷:今後の活動についてもお聞きしたいです。
外山:IPv6インターネット接続の方法はわりと共通しているのですが、IPv4 over IPv6のやり方に関してはVNE各社独自に工夫していますので、ブロードバンドルーターで対応の違いが生じています。こうしたブロードバンドルーターを使う際の課題は、われわれがルーターメーカーとNTT東西などを巻き込んで解決していきたいと思います。
大谷:IPoE協議会のお墨付きのルーターとかあると安心して購入できるかもしれませんね。