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国内で圧倒的なレイトマジョリティをきちんとサポートしていく

岡村社長が語るカゴヤ・ジャパンのこれまで、強み、変わらぬポリシー

文●大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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法人顧客はすでに7~8割へ データセンターがあるからできること

 まずやったのは、Web制作会社の取り込みだ。企業でのインターネット利用が増えるとともに、法人のWebサイトの数はどんどん増えていった。しかし、戦略的なWebサイトを自ら構築・運営できる企業は大手に限られており、大多数を占める中小企業はWebサイトを制作会社に外注していた。そのため、ユーザー企業よりも、まずはWeb制作会社に使ってもらう必要があった。

 もともとカゴヤ・ジャパンのサービスは再販も可能だったが、パートナー制度などが整備されてなかった。そこでWeb制作会社に働きかけ、販売代理店として登録することにした。「ゼロベースから始め、1000社くらいが販売代理店として登録してくれるようになりました。 もちろん、Web制作会社も価格や容量など要件でレンタルサーバー会社を選ぶので、すべての案件に対応できたわけではないですが、かなりの数が案件につながりました」ということで、少しずつ法人の利用を伸ばしたという。

 並行して進めたのが、サービスメニューの拡充だ。前述した通り、当時のカゴヤ・ジャパンは、共用ホスティングにあたるレンタルサーバーとマネージドサーバーしかなく、法人需要のすべてに応えられるわけではなかった。そこでユーザーに管理者権限を与える専用サーバーを開始し、マネージドサーバーもラインナップを拡充した。自前のデータセンターを所有・運用できるからこそできるサービスにより、法人利用の割合は徐々に拡大した。「私が入社したときはほとんど個人ユーザーでしたが、今では7~8割が法人層です。上場企業や自治体からも選んでもらっています」(岡村氏)。

 当初、データセンターについて懐疑的だった岡村氏だが、今では建てた意義を痛感しているという。「データセンターがあることで、会社の信頼は上がるし、サービスの幅は拡がります。データセンターを持たずにビジネスをやっている事業者と、あきらかに違います。2006年当時、200ラックでスタートしたデータセンターは、現在では650ラック規模になり、 自社データセンターのメリットを活かしたビジネスを展開することができるようになりました」と岡村氏は語る。創業期は、開発と運用も同じ部門が担当していたが、組織も整備され、人的リソースの面面でも充分拡充されてきたという。「今年から開発と運用を連携する組織を作り、サービス面も迅速にブラッシュアップできる体制を構築できています。

パブリッククラウド全盛期のカゴヤ・ジャパンの進む道

 業界的にはこの10年でAWSをはじめとしたパブリッククラウドの利用が増え、既存のレンタルサーバー業界も少なからず影響を受けている。しかし、カゴヤ・ジャパンはこの間も成長を続けており、ユーザーのニーズに応え続けている。「自社データセンターならではのサービスの自由度、安心して使うためのサポートなどにご満足いただき、お客さまは私たちのービスを選択してくれています。一度使っていただけると、長く継続して使ってくれますし、クラウドから戻ってきたお客さまもいます」と岡村氏は語る。

 今後、カゴヤ・ジャパンはどこへ向かうのだろうか? 「レンタルサーバーもサービスとしてはコモディティ化しつつあります。ホームページやECサイトを簡単に作れるサービスも増えていますし、昔のように価格と容量だけを売りにする時代でもない。サービス自体の変革というか、ユーザーに対する見せ方が変わってきています」と岡村氏は語る。いわゆるモノやスペックではなく、ユーザーの要望に訴求していくのかが大きな鍵だ。

 また、データセンタービジネスもパブリッククラウドとの差別化が必要になる。「今後も物理インフラを運用できる強みは続くとみている。しかし、パブリッククラウドに向かう全体の潮流は変えられないので、どのようにわれわれのサービスを当てはめていくかが重要だと考えている」と岡村氏は指摘する。

 サービスとしての方向性としては、ベアメタルと呼ばれる専用サーバーサービス、プライベートクラウドなど、データセンターならではのサービスを尖らせていくという展開があり得る。もう1つの方向性はいわゆるパブリッククラウドライクなVPSやIaaSのようなサービスを、敷居の高さを感じていた中小企業に利用してもらうというものだ。全体的な潮流として、DXやIT化のトレンドは拡大していくため、インフラ事業者ならではサービスのあり方を模索していくという。

 ユーザー動向から考えると、やはり国内で圧倒的なレイトマジョリティをきちんとサポートしていくのが同社の役割だという。「われわれのお客さまである中小企業は紙の業務も多いし、インターネットの業務利用もまだまだ。Webサイトやメールといった従来型のレンタルサーバーの利用形態のみならず、もっと幅広いIT利用の需要は眠っていると思います」(岡村氏)。

一貫しているのは「インフラの安定供給」

 茶摘みカゴから始まり、プロパンガスの販売を経て、データセンターを中心にしたレンタルサーバーへと、時代のニーズにあわせてビジネスを変化させてきたカゴヤ。業界を揺るがすパブリッククラウドの大きなうねりも、新たなテクノロジーの潮流も、カゴヤなら乗り越えてしまうのではないかと思えてしまう。

 カゴヤの事業で一貫しているポリシーは「インフラの安定供給」だ。プロパンガスも、インターネットも、すでに社会になくてはならないインフラではあり、ユーザーはそのインフラを用いて、事業や生活を安心して行なえる。「われわれが提供しているサービスが止まってしまうと、お客さまはもちろん、お客さまのお客さままで困ってしまう。そのために安定した、最適なものを作り、お客さまをつねに支えていこうと考えています」と岡村氏は語る。

 経営企画の立場で北川氏とともに カゴヤ・ジャパンを育ててきた岡村氏は、自らを「下支え社長」と語る。「この10年で財務的な基盤や組織体制、お客さまからの信頼などについての基本的な土台は整ってきたので、私としては今後も大きな変化に適応し、お客様からのご支持を引き続き得られる会社になるための下支えを進めていきたい」と岡村氏は語る。京都を本拠とするこのユニークなインフラ事業者の提供するサービスやその価値をこのサイトではしっかりレポートしていきたい。

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(提供:カゴヤ・ジャパン)

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