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超パワーなM1 Pro/M1 Max搭載のMacBook Pro登場 新型AirPodsも! 第22回

新MacBook Proレビュー

新MacBook Proは「Macノートブック」におけるプロ仕様の再定義

2022年01月03日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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完全に背中合わせに配置された新しいMacBook Proのウーファ

目には見えない高音質は、再生、録音の双方向で達成

 上で述べたように、ディスプレーの品質の高さは、残念ながら記事としてそのまま表現することはできず、もどかしい。そしてもう1つ、記事として表現するのが難しい特長がある。それは内蔵スピーカーの「音質」だ。音質の高さは数字では表わせないが、これは新しいMacBook Proの隠れた、そしてかなり魅力的な特長と言える。

 新しいMacBook Proは、14、16インチモデルとも「フォースキャンセリングウーファーを備えた、原音に忠実な6スピーカーサウンドシステム」を搭載している。ユニットの大きさなどは明らかにされていないが、表現が同じなので、おそらく両モデルとも同じサイズのユニットを採用しているものと思われる。実際に同じ音源を鳴らしても、ほとんど同じ音質と感じられる。違いがあるとすれば、キーボード左右のスピーカーグリルの開口部の大きさも影響している可能性がある。

 このユニットは、2021年春に発売されたM1チップ搭載のiMac 24インチモデルが採用したものとほとんど同じ仕組みのもの。ただし、おそらくiMacの方がウーファの口径が大きいものを採用しているようで、低音の量感はiMacの方が勝っているように感じられる。

 このスピーカーシステムの特徴は、片チャンネルあたり2つのウーファを装備し、それを背中合わせに配置していること。そうすることで振動板の動きによって発生し、ユニット本体に伝わる反力を打ち消すことができる。それにより、ユニット自体の不要な振動を抑え、電気信号にできるだけ忠実な空気の振動を得ることを目指している。その一瞬耳を疑うほどの効果は、すでにiMacで実証済だった。

 iMacの場合には、ディスプレー一体型の本体を薄くする必要性から、背中合わせのはずのウーファの位置がずれていて、いわば逆向きの互い違いの配置だった。それでも十分な効果を発揮しているが、新しいMacBook Proのウーファは、小型ながら2つの背中の位置はぴったりと合っている。これで、フォースキャンセリングの効果は高まり、本体サイズから想像する以上に迫力のあるサウンド再生を実現できた。

 さらに新しいMacBook Proの仕様には、旧MacBook Pro 16インチモデルにはうたわれていなかった「内蔵スピーカーでのドルビーアトモスの音楽またはビデオ再生時は空間オーディオに対応」という記述もある。これはもちろん、スピーカーユニットのハードウェアではなく、音声信号のデジタル処理によって実現されているもの。旧モデルでは、OSのアップデートによって実現できそうなものではない。M1 Pro、Maxチップが直接関連した機能だと考えられる。

 このような音質の向上とドルビーアトモス対応の音響効果によって、新しいMacBook Proは、現状のアップル製品の中で最も優れたオーディオ再生能力を備えたコンピューターとなっている。本来であれば、iMacのようなデスクトップ機が先に実現すべきものだろう。それには、iMacにM1 Pro、Maxが搭載されるのを待たなければならない。

 音質の向上は再生だけではない。新しいMacBook Proは、「高い信号対雑音比と指向性ビームフォーミングを持つ、スタジオ品質の3マイクアレイ」を装備し、単体で高音質の録音が可能となっている。この仕様の文言も、どこかで見たような気がするかもしれない。そう、2020年末に登場したM1搭載のMacBook Pro 13インチモデルも「指向性ビームフォーミングを持つ、スタジオ品質の3マイクアレイ」を装備していた。違いは、「高い信号対雑音比」の有無だ。新しい14、16インチモデルの方が、いわゆるS/N比が高い、平たく言えば雑音の少ない音を録音できる。なお、インテルCPU搭載の旧MacBook Pro 16インチモデルも、新しいMacBook Pro 14インチ、MacBook Pro 16インチモデルと、仕様上は同じ呼称のものを採用していた。残念ながら同じ条件で音質の評価はできていないが、ざっと試用してみた範囲では、ほぼ同等のものと感じられる。

 今回、改めて新しいMacBook Proの内蔵マイクを試してみたが、本体の空冷ファンのノイズなど、まったく気にならない、かなり高音質の録音ができた。ただし、いくら指向性があるとはいえ、マイクと音源の距離感は、しっかりと感じられる録音になる。本体にかなり近い位置で歌ったり、楽器をセッティングできれば、かなり良好な結果が得られるが、離れた位置では、それなりの音質となる。本体内蔵のマイクでは、そのような近距離のセッティングが常に可能だとは限らないので、過度の期待は持たないほうがいいだろう。やはり通常の使用状態では、高音質の録音メモといった用途が適しているのではないかと感じた。

 新しい14インチと16インチのMacBook Proは、CPUやGPUの性能、ディスプレー特性、周辺機器との接続性や拡張性、オーディオ性能、キーボード、どこをとっても、現在得られるノートブック型のパソコンとして、最高峰のもの。ほとんど文句のつけようのない、妥協を廃した真のプロ仕様と言える。残念ながら、プロではないユーザーでは、持て余してしまう性能や機能、品質も多い。逆に言えば、プロユーザーであれば、その領域を問わず、必ず投資に見合った価値を引き出すことが可能なマシンと言える。現状のノートブックに不満を感じている人はもちろん、ノートブックに常に最高の性能、機能を求める人にとって、10年に一度とも言えるような買いのチャンスが到来したと言えるだろう。

 

筆者紹介――柴田文彦
 自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

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