「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある 第10回

<最終回>

【連載】キャリアアップではばたけ未来へ!

文●横浜市立盲特別支援学校専攻科/横浜LOVEWalker

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横浜市立盲特別支援学校

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送され、昨日最終回となった「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」は、弱視の高校生が主人公のドラマです。その舞台に横浜市立盲特別支援学校が使われています。本校は、およそ130年の歴史ある学校です。視覚に障害のある幼児児童生徒への教育活動を行っています。

 まったく見えない全盲の人と、見えにくいロービジョンといわれる弱視の人がいますが、本校では在学者の多くが弱視です。この弱視について、本校公認キャラクター「しもん」と、弱視の職員で「みゆき」と「まちこ」の3人が弱視あるあるについて話をしていきます。

 最終回の今回は、ダイバーシティの社会に向けて視覚障害者のお仕事についてです。

 もしもお目めに合いましたら、読んでみてください。

 前回の記事はこちら
【連載】見える人(晴眼者)と、見えない・見えにくい人の絆

※過去の連載記事はこちら:「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある

まちこ:ドラマでユキコちゃん(主人公・赤座ユキコ:杉咲花)がハンバーガーショップでアルバイトするよね。

しもん:あーあれ、少し胸がチクッとしたなぁ。

みゆき:人間関係のところとかね。

まちこ:見えにくくても工夫次第でできることも増えるよね。

みゆき:でっぱりシールとか触ってわかる目印を付けたりね。

まちこ:目的の所まで行けるよう歩数を数えるとか。

みゆき:時間はかかるけど、慣れることも大事よね。

しもん:本人の努力と周囲の方々の理解が大切よね。

みゆき:何を手伝ってもらわないとできないか、工夫次第で一人でできるか見え方によっても違うしね。

しもん:見え方イロイロだもんねぇ。

まちこ:まずは自分の見え方について自分自身で考えることが必要かも。

みゆき:それを周りの人に知ってもらうことも。

しもん:多様化が進んでいるから、いろいろなお仕事ができそう。

まちこ:さすが令和! 私は昭和…

しもん:二人は進路はどうだったの?

まちこ:私は普通の学校を卒業して、病院で介護の仕事をしていたよ。

しもん:へぇー。仕事に支障はなかったの?

まちこ:夜盲があったから、夜勤はしていなかったけど、それ以外は工夫しつつできたよ。

しもん:なるほど。

まちこ:でも、徐々に視野が狭くなってきて、患者さんに迷惑をかける前に退職しました。

しもん:そうか。

まちこ:それで、専攻科に入学して資格を取りました。

しもん:やるじゃん!

まちこ:でも、勉強が大変で、眼が悪いのにこんなに勉強するのー!? と思ったよ。

しもん:わかるなぁ。

模型を使った解剖学の授業の様子

みゆき:私は生まれつきの弱視で高校までは見える人たちと勉強してきたから、将来については悩んだなあ。

しもん:盲学校には行ってないの?

みゆき:周りからは何度も盲学校に行かないかと言われたけど、行きたくなかった。

しもん:どうして?

みゆき:普通じゃなくなると思った。

しもん:盲学校だから?

みゆき:私はまだ見えるのにって思った。

しもん:盲学校は見える人もたくさん通っているけどね。

みゆき:でもみんなと同じように働きたいと思った。

しもん:それで?

みゆき:友達が医療関係に進む人が多くて、私も理学療法士ならやれるかもと探していたら、盲学校にたどりついたの。

しもん:あれ? マッサージ師じゃなかったっけ?

みゆき:盲学校に相談に行って、担当の先生と話したら、東洋医学に魅了されてしまったの。

しもん:それでマッサージ師を目指したんだね。

みゆき:頭の痛みが足の甲を押すとスーッと良くなる。

しもん:本当かなあ。

みゆき:ぎっくり腰で動けなくなっても手の甲を押すと動けるようになる。

しもん:救急車呼ぶ人もいるのに、本当かなあ。

みゆき:ご飯を食べた後、胃の痛みで気持ち悪くなっても、背中を押すと楽になる。

実技室での指圧実技の様子

しもん:それはわかる気がする。

みゆき:まだまだ沢山あるよ。

しもん:東洋医学はおもしろいんだね。

まちこ:あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師は素晴らしい職業だと胸を張って言えます。

灸頭鍼(きゅうとうしん)の様子

みゆき:人に助けてもらいながら生きてきた自分が、人の痛みを癒して、ありがとうと言ってもらえる職業に就けたことに感謝します。

まちこ:この仕事は患者さんの状態を「触れてとらえて、触れて術を施して、触れてその効果を確かめるから見えない・見えにくい人に適した仕事だよね。

しもん:伝統のあるお仕事だもんね!

みゆき:実技は白衣を着るんだけど、この前、実技で給食の白衣を間違えて着て来た人がいました。

まちこ:同じ「白色」だからね。

しもん:洗濯して持って来たらシーツだったって人もいたしね。

まちこ:えっ! さすがにそれはないのでは。

臨床室でのあん摩実技の様子

まちこ:私とみゆきは盲学校の専攻科で、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうを教えてます。

みゆき:国家資格で手に職を持てます。

しもん:私も現在猛勉中ですよ。

みゆき:免許を取った後、就職先には機能訓練指導員として高齢者施設で働く方もいます。

まちこ:治療や健康管理を担うあん摩鍼灸の治療院を開業することもできます。

みゆき:美容鍼やフェイシャルマッサージもあります。

しもん:スポーツ分野にも貢献してるよね。

みゆき:「ヘルスキーパー」と言って、企業に就職して社員の健康管理を行なうお仕事もあります。

機能訓練指導員

ヘルスキーパー

開業

ヘルスキーパー

まちこ:専攻科って言って、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の過程に関する相談もそうだけど、見えない・見えにくい人からの相談も受けますよ。

しもん:私もほかの関連施設を紹介してもらいましたよ。

みゆき:都道府県には必ず盲学校が設置されています。

まちこ:みなさんがお住まいの所にもありますよ。

みゆき:その地域の盲学校の先生たちは、見えない・見えにくいひとたちの気持ちに寄り添ってくれます。

しもん:盲学校を身近な存在に感じてくれたらうれしいです!

 これで3人、いやっ2人と1羽の話は終わります。

 ドラマと共に最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 盲特別支援学校のホームページでも視覚障害あるあるを載せていくので、もしまたお目めに合えたらうれしいです♪

「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送され、現在は全話&オリジナルストーリーをHuluにて配信中。

 勝ち気だけど恋には臆病な盲学校の女の子・赤座ユキコ役の杉咲 花さんと、喧嘩上等だけど根は純粋なヤンキー・黒川森生役の杉野遥亮さんによる新世代ラブコメディー!

文/横浜市立盲特別支援学校専攻科
「みゆき」と「まちこ」のイラスト/関口 千秋
「しもん」のイラスト/横浜市立盲特別支援学校

プロフィール
しもん:横浜市立盲特別支援学校、略して市盲が名前の由来。校章の幸福の青い鳥がご先祖様。公認キャラクター就任1年目。
まちこ:13歳で網膜色素変性症(色変)と診断。徐々に視野狭窄が進行。黒猫をめでながらお酒を飲むのが大好き。
みゆき:生まれつき弱視。右目は緑内障で13歳の時失明。ハンドミルでコーヒーを入れてその香りと共にチョコレートを楽しむのが習慣。