スマートフォンのワイヤレス充電は「Qi」規格が主流だが、充電器がQi規格の基準を満たしているかをテストする試験機を見せてもらった。ワイヤレス充電をサポートしたスマートフォンは現在、3台に1台と見込まれている。今回はQiにまつわる話題を取り上げたい。
ケーブルの互換性問題も解決するワイヤレス充電
筆者はワイヤレス充電派なので、対応していない古いiPadのためにLightningケーブルを探すのが本当に面倒だ。しかも、子供が使うようになってからは抜き挿しが荒いのか、普通に挿しても充電が始まらないようになってしまった。ケーブルを上にしたり下にしたりして挿してみて、やっと充電される。それ以外にも充電するものはたくさんある。ワイヤレス充電が普及すれば、部屋はもっと片づくはずだと心から思う。
さて、現在スマートフォンなどのワイヤレス充電は「Qi」規格が広がりを見せている。そのQiのテスト機器を製造するシリコンバレーの企業Granite River Labs(GRL)が日本で発表会を開催したのでお邪魔させてもらった。GRLは日本では横浜にラボを持つ。
発表の内容は、GRLのQiテスト機器「GRL-C3」が、Qiを策定する標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)により、Qiテスト機器として認定を受けたというもの。GRL-C3のテストを満たした端末は、Qi規格に準拠しているとうたうことができる。
お値段は約600万円。Qiの最新バージョン「Qi v1.3」をサポートしており、5WまでのBPP(Base Power Profile)と15WまでのEPP(Extended Power Profile)の2つの構成を1台でサポートする。Qi規格が要求するコイル、コイルの間に異物がないかを検出できる異物検出機能(FOD)、磁気スペーサー、熱記録計などの検査に対応する。項目にして200程度。しかも自動化されており、「ボタンを押すだけでコンプライアンステストができる」(GRLのグローバルサービス担当プレジデント、ホルガー・クンツ氏)という優れもののようだ。
ワイヤレス充電の規格において、テストが必要な理由は言うまでもない。きちんと検証がなされていないと、発火などの事故につながる。実際にそのような報告は世界的に増えているそうだ。
デモでは、Qi規格を守っているワイヤレス充電器と、そうではないワイヤレス充電器のテスト結果も披露してくれた。
iPhoneでの対応が起爆剤に、2021年はQi搭載スマホは3台に1台
Qi対応製品は10年ほど前から存在するが、本格的に立ち上がったのはやはりiPhoneでの対応から。アップルのiPhone XとiPhone 8でワイヤレス充電は一気に認知を得た。GRLによると、2016年には5%程度だったスマートフォンでの対応が、2017年には2倍の10%になったそうだ。4Gや5G、NFCといった新技術の普及はiPhone頼みという図式はここでも当てはまっている。
2021年には、Qiに対応したスマートフォンが出荷台数に占める比率は3台に1台以上を見込んでいる。2025年には、世界ベースで出荷台数の50%がQi認証を取得すると予想されている。
充電速度がさらに高速になり、安定し、レストランや空港など公共で使える場所が増えればもっと広まるのではと思う。WPCは高出力のQi仕様に取り組んでおり、今後はテーブルにワイヤレス充電ステーションを設置するなど可能性が開けてくるというのがGRLの意見だ。
個人的には、充電器側のデザインでも工夫の余地があると思う。夜間に充電していたつもりが、朝起きたらずれていて充電できていなかった経験があるからだ。
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