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ライブキャストや地図連携も可能な現場のためのコミュニケーションツール

ビッグネームを惹きつけるBuddycom IPトランシーバーにとどまらない魅力

2021年08月03日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

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 イオンリテール、JR東日本、JALなどのビッグネームがこぞって採用するIPトランシーバーアプリ「Buddycom(バディコム)」。企業のニーズにあわせて、機能をどんどん拡張しているBuddycomの特徴や事例について、開発元であるサイエンスアーツの平岡竜太朗氏、橋本和英氏に聞いてみた。

スマホアプリなのにスマホはほとんどいじらない

 Buddycomの基本はボタンを押せば通話が始まるトランシーバアプリ。1対1の通話はもちろん、あらかじめ「グループ」を作っておくことで1対多でのやりとりも可能だ。単一グループのユーザー数は無制限で、リアルタイムで現場に周知を図りたい事項の伝達にはうってつけのツールだ。

 アナログのトランシーバーに比べて機能は豊富。音声をそのままテキストに書き起こしたり、テキストから音声に起こすことも可能で、最新版では14言語対応の翻訳機能も搭載している。サイエンスアーツ技術本部 エンジニアの平岡竜太朗氏は、「端末で設定した言語に自動的に同時翻訳されるため、共通の言語を持たないチームでも、リアルタイムにコミュニケーションをとることができます」と語る。

サイエンスアーツ技術本部 エンジニア 平岡竜太朗氏

 バックエンドで動作しているテキスト発話や翻訳はAWSやAzure、DeepLなど。そして、音声をテキスト化する音声認識は国内で実績の高い「AmiVoice」を採用している。特定の技術に依存せず、その時々で精度の高いエンジンを利用することで、さまざまな言語やニーズに対応できるのが大きな売りだという。

 オフィス利用を想定しているビジネスチャットに対して、Buddycomは工場や店舗、屋外など現場での利用を前提としている。そのため、イヤホンマイクなどの周辺機器と連携することで、スマートフォンを開かないですぐに使えるのが特徴だ。ボタンを押せば会話が始まるため、今までトランシーバーを使っていたユーザーも違和感がない。

 実際のユーザー事例でも、スマホを直接扱うことは少ない。「音声を届けるグループを設定したり、チャットなど目で見て確認する用途以外は、基本スマホを使うことはあまりない」(平岡氏)とのこと。実際、航空機の整備を手がけるJALエンジニアリングでは、整備士が騒音の中でコミュニケーションをとるためにBuddycomを使っているが、ノイズキャンセリング対応のスピーカーマイクと連携しているため、スマホ本体を使うことはないという。スマホアプリでありながら、使いやすい周辺機器を前提にコミュニケーションできるのがBuddycomの大きな特徴だ。

TALK、CHAT、LIVE、MAPの4機能で構成されるBuddycom

ライブキャストや地図連携で利用用途はますます拡大

 開発元のサイエンスアーツは2003年設立で、2015年からBuddycomの原型となるIPトランシーバーのサービスを提供している。創業者の平岡 秀一氏がキーボード入力に苦労している高齢の父親を観て、もっと気軽に使える音声コミュニケーションツールとして作られたのがBuddycom誕生の経緯だという。約6年間で法人導入の実績を重ね、今では世界で60社しかいないアップルのモビリティパートナーとしても名を連ねているとのこと。

 Buddycomはユーザーの声に応える形で着実に機能拡張を進めており、今では音声のみならず、ウェアラブルカメラやAIカメラなどを活用したライブキャストにも対応。映像配信も手軽に行なえるようになった。また、地図との連携も可能で、特定の地域にいるメンバーにのみ音声や映像を送ることができるという。先日は音声操作可能な産業用スマートグラス「RealWear HMT-1」との連携も発表しており、完全なハンズフリーでライブキャストすることが可能になった。

取材現場でライブキャストをデモ

現場でのライブキャストの利用イメージ

スマートグラスとの連携によってハンズフリーでライブキャスト可能

 他社SaaSとの連携も進めており、LINE WORKSやSlack、WebEX Teamsなどのビジネスチャットと連携したり、クラウドストレージのDropboxに録音・録画データに保存することも可能だ。IPトランシーバーとしての基盤の強さに加え、周辺機器や他社ソリューションと連携しやすいのがBuddycomの大きなメリットと言える。

 サービスのプランとしては、大きくトランシーバーとしての音声利用、音声を含むライブキャスト利用の2つがあり、それぞれに高セキュリティ・高機能なエンタープライズプランが用意されている。ユーザー単位の課金で年払いだけではなく月払いも選択できるため、イベントのときだけ一時的に利用することも可能だ。

信頼性やスケーラビリティで高い実績 ユーザーは使い方を次々開拓

 ビッグネームも含めて導入企業も多く、用途はJALスカイやJR東日本などの交通会社での顧客対応、イオンリテールや島忠など小売会社の現場オペレーション、医療・介護施設、イベント管理や物流・配送での現場の連絡など多岐にわたる。もともと業務用トランシーバーや構内PHSを使っていた企業が、スマホの導入にあわせて周辺機器といっしょにBuddycomを入れるパターンが多いという。

 大企業での採用が多いのは、信頼性やスケーラビリティ、セキュリティなど、いわゆるエンタープライズ対応を評価されているためだ。サイエンスアーツ 営業本部 橋本和英氏は、「たとえば、交通系のお客さまの場合は、1分1秒遅れることが事故につながってしまう可能性がありますが、Buddycomは24時間365日で動いているミッションクリティカルな用途で採用されています。スケーラビリティに関しても、実証実験レベルではJR東海で音声のリアルタイム共有を2000グループで実現しているという実績があります」と語る。

サイエンスアーツ 営業本部 橋本和英氏

 新機能とデバイスとの連携で、ユーザーは新しい使い方を開拓している。たとえば、従業員同士の連絡にBuddycomを活用しているイオンリテールは、AIカメラで分析した店舗の混雑状況や顧客の滞留をBuddycom経由で一斉通知している。また、北海道や新潟県での原子力防災訓練では、グループ通話や音声のテキスト化のみならず、地図連携の機能を用いて避難バスの動態管理にも活用された。さらに、客の送迎と車の運搬という2台の車が連携しなければならない運転代行会社では無線代わりにも利用されており、タクシー無線としての利用も始まっているという。

 平岡氏は、「弊社のミッションは『世界中の人々をより美しくつなげる』です。Buddycomは単純に声を伝えるだけでなく、さまざまなクラウドやAIと連携させることで、人との会話やコミュニケーションをさらに豊かにする『ライブコミュニケーションプラットフォーム』として進化させていきたいです」と語る。

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