新型コロナウイルス感染症の影響で、世界中の生活が変わりました。多くの人がリモートワーク、オンライン授業を経験するなど、デジタル化がいっそう進んでいます。
現在はワクチン接種が進んでいるものの、今後の動向はまだまだ不透明。東京では4度目の緊急事態宣言が出されるなど、収束への見通しはもうしばらく立ちそうにありません。
いずれにしても、デジタルとの距離感はいっそう近付いていくでしょう。今回はその実態や今後の課題について、マカフィーが実施した意識調査などから考えてみます。
在宅勤務が増えても、環境整備は遅れ気味
IT企業であるマカフィーは、感染拡大に伴い約1年半、在宅勤務となっています。そんな状況の中、社員にアンケートを実施し、在宅勤務のメリットとデメリット、今後の働き方などについて意見を聞いてみました。
まず新型コロナ収束後にも在宅勤務をしたいかという質問では、「強く思う」(64.1%)、「やや思う」(33.3%)という2つの回答を合わせると、ほぼ全員が在宅勤務を続けたいと回答しました。一方で、実際の在宅勤務においては、出社する必要を感じることもあるようです。自宅にない機材やシステム環境が必要な業務や、機器に問題が発生した時のトラブル対応、客先や取引先との会議で直接対面したい……という場面は、実際の業務では発生します。中には「仕事とプライベートの空間を分けたいときがある」という意見もありました。
また消費者を対象にした、コロナ禍における在宅勤務・オンライン学習や、IT利用、セキュリティに関するアンケート結果も昨年10月に発表しています。一時は進んだ在宅勤務の導入ですが、企業によっては、現在は継続していないケースも少なくないことが分かりました。
また在宅勤務中に課題を感じたこととして、インターネット環境や作業スペースなど、自宅にじゅうぶんな仕事環境が整っていないという意見が目立ったものの、下のグラフにみるように、在宅勤務中に実際に環境を整備できた人はそれほど多くなかったという現状も浮かび上がりました。
今後進んでいく学校のデジタル化
勉強でも遊びでも、子どもがデジタル機器に触れる時間が増えるのも、大人としては悩ましいものです。前述の消費者調査で、子どものインターネット利用に関して心配だったことを聞くと、過半数(54.8%)の人は「オンライン授業の学校による質の差」を挙げ、新しい取り組みへの適応を不安に思う人が多いようでした。
他方、「ゲームをしていないか」が26.9%と4人に1人。さらに「ソーシャルメディアでの好ましくない投稿やトラブル」が20.4%、「サイバー犯罪に遭わないか」が19.8%程度と、セキュリティ面の心配をしている親は5人に1人ほどと、多いとはいえません。ウェブサイトやコンテンツのフィルタリングの利用率も30.5%にとどまり、じゅうぶんな対策がとられているわけではないようです。
内閣府が今年4~5月に実施し6月に発表した「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」にも、子どものオンライン環境についての興味深いデータが出ています。「子どもが(何らかの)オンライン教育を受けている」とした小・中学生の親は、1年前(2020年5~6月)は45.1%いましたが、現在(2021年4~5月)には26.7%に減少。大人がオフィスに戻っているのと、同じ傾向があるようです。
気になる学習時間については、感染拡大前と比べて学習時間が6%以上減ったという高校生は40.9%にのぼり、増えた(33.7%)を上回っています。単純な比較はできないものの、やや不安の残る数字といえます。
政府は「GIGAスクール構想」と題し、学校での1人1台端末とネット環境づくりを図っています。2020年末までに全国の小中学校の96%以上に端末の納品が済んでおり、ネットワーク環境、デジタル教材や教育方法なども充実していく見込みです。コロナ禍に際して懸念された、オンライン授業体制のばらつきも今後は解消されるでしょう。それとともに、新しいライフスタイルの中での生活リズムをどうしていくかは、一考に値するでしょう。
セキュリティ意識と環境の充実を
マカフィーが行った海外での意識調査では、日本での調査よりも、セキュリティへの関心が高い消費者が多い結果が出ています。特に保護者は、子どものオンライン活動の監視を重要なものと考える傾向があり、コロナ禍で外出制限が続く中で、ペアレンタルコントロール機能の利用の増加が数字に表れています(下表)。
これからのデジタル時代、日本でも、家庭のセキュリティ意識はいっそう高めていく余地がありそうです。
上の内閣府の調査では、テレワークのデメリットについての質問で、4人に1人(24.6%)がセキュリティ面の不安を挙げました。IT意識の高い人に聞いたアンケートではないにもかかわらず、少なからず不安を感じる瞬間があるようです。実際にはさらに多くの人が、リスクが大きいネット環境で仕事や学習を行っているのかもしれません。
コロナ禍の収束までまだ時間がかかりそうな中で、大人も子どもも、半分前後の人はオンラインでの仕事や学校教育を経験したことは事実です。デジタル化は着実に加速しているといえます。社会に目を向けると、ビジネス界を中心にDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中で、オンラインで行政手続きができたり、「ハンコ廃止」といった電子契約が増えたりと、これまでの常識も大きく変わろうとしています。
安全で快適な環境で仕事や学習をする──。そんな意識を1人1人が持つために、自らの意識啓発のみならず、企業から従業員への支援もいっそう重要になるでしょう。せっかく便利なデジタル社会になるのですから、多様なライフスタイルを支える環境を整え、みんなで「コロナ前」よりも良い世の中に近付けていく機会にできればと考えています。
(関連リンク)
・マカフィー、コロナ禍におけるIT利用やセキュリティに関する調査結果を発表
・内閣府 第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査
著者:マカフィー株式会社 コンシューママーケティング本部 執行役員 本部長 青木 大知