清涼感吹き抜ける SOMPO美術館「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり展」に行ってきた
SOMPO美術館で開催中の「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」に行ってきた。会期は9月12日までとなっている。
ランス美術館は、シャンパンの産地で知られるフランスのシャンパーニュ地方にあり、歴代の国王の戴冠が行われた歴史を誇るランス市の中心に建っている。19世紀絵画、とりわけ風景画が充実し、大家であるカミーユ・コローの所蔵品はルーヴル美術館に次ぐ規模。美術館は1793年にフランス革命が荒れ狂う中、収蔵品を避難させるためにランス市役所の中に設置された。その後、シャンパン・メーカー、ポメリーの経営者、アンリ・ヴァニエが大規模な遺贈を行い、1913年に今の形で落成した。
今回のランス美術館のコレクション展は、2003年の軽井沢、2004年の奈良に続いて三回目で、17年ぶりになる。現在、ランス美術館は4年にわたる大規模な改修中で、貴重な作品群が日本にやってくることができたという。今回初めて、19世紀の風景画に絞った極めて貴重なコレクションを展示することになり、50余点の油彩が集まった。
こうして、19世紀のヨーロッパの自然風景が並ぶと、実に風を感じる展覧会になった。第一章「コローと19世紀風景画の先駆者」のパートでは、圧巻の16点のコローが並ぶ。川や湖、海など様々な水のある風景や、ローマで描いた旧メディチ家の別荘の噴水盤、更には、これぞコローといった多様な樹木たち。小舟に乗る人や働く人、休憩する人など、景色に溶け込んだ人物がアクセントになっている。これらの絵が連なっているので、まさに19世紀にタイムスリップしたような空気感が味わえる。コローは、第三章の「画家=版画家の誕生」でも3点楽しめる。
今回、コローと並んで印象深いのは第四章「ウジェーヌ・ブーダン」。この章はブーダンのみ7点が展示されている(ランス美術館は10数点所蔵しており、今回は、その大半を展示)。海や船、ノルマンディー沿岸の風景画で知られるが、それらを描いていく過程で戸外制作に移行し、その先駆者となった。日記には、「大空の中で泳ぎ回ること。雲の繊細さに到達すること。遥か彼方の灰色がかった霞の中に雲の塊を配置し、青空を輝かせること」と戸外制作の肝が書かれている。ブーダンはクロード・モネを導き、印象派の先駆者となった。コローはブーダンを「空の王者」と称賛している。
最後の「印象主義の展開」まで、実に土地の香りまで伝わってくるような作品が並び、蒸し蒸しして暑くなってきた季節だが、涼しい空気を感じられる展覧会になっている。SOMPO美術館の顔である、フィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」、ポール・ゴーギャンの「アリスカンの並木路、アルル」も最後に楽しめる。
開館時間:10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし8月9日は開館)
料金:一般 1500円/大学生 1100円/小中高校生 無料/障がい者手帳を持つ方 無料
※なお入館は日時指定予約のユーザーが優先となります。
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