IoTのお祭り「SORACOM Discovery 2021」がいよいよ開幕
ビジネスや社会の課題を解決し、新しい価値を生み出したSORACOMの事例
2021年6月22日~24日、IoTプラットフォームを手がけるソラコムは年次カンファレンス「SORACOM Discovery 2021 ONLINE」を開催している。初日午後のセッションは「早わかり!ソラコムが選ぶ最新IoT事例」と題して、さまざまな課題に対する事例のサマリが一気に紹介された。
既存のビジネス課題をIoTで解決できる?
冒頭、登壇したソラコム ソリューション アーキテクトの桶谷拓也氏は、ビジネスの課題ごとに事例を紹介する。
1つめは「既存のビジネスの効率化ができないか?」という課題だ。
最初は、ガスメーターをネットワークでつなぐNCU「スペース蛍」を自社開発した日本瓦斯(ニチガス)の事例だ。スペース蛍により、今まで人手に頼っていた検針や異常検知をオンラインで把握できるようになり、データ活用でガスの充填や配送までを最適化。さらに同業他社にも提供する「LPガス託送サービス」も開始しており、まさにDXのお手本のような事例と言える。「SigfoxとLTE-Mで幅広いデータ通信のカバレッジを実現しています。さらにセンサーデータを活用し、営業所のデジタル化にも挑戦しています」(桶谷氏)。
また、アンカーはソラコムのAIカメラを用いて、大手ショッピングモールの電気設備や熱源設備のパネルを遠隔監視している。センサーやデバイスを組み込むのではなく、あくまで人と同じ視点をAIカメラで実現した点がユニークだ。酒蔵の溝上酒造は麹やもろみの発酵工程での温度監視にIoTを導入し、拘束時間の長かった職人の負担を軽減している。冬期の仕込み時期のみ通信を行なうことで、ランニングコストを削減しているという。
2つめは、山間部や地方など人が行きにくい場所の機器の監視や遠隔操作の事例。
三菱重工業では防爆仕様のプラント点検ロボット「EX ROVR」の遠隔操作や自動巡回にSORACOMを活用。クラウド連携はSORACOM BeamやFunk、遠隔操作はSORACOM Gateを用いて行なわれているという。また、相愛は暖房用の燃料タンクの残量検知にSORACOMを活用。月に2~3回人手で行なっていた残量検知を自動化し、補給時期の把握を実現した。こちらは平野部にSigfox、山間部にLTE-Mを用いることで、高知県内の広いエリアをカバーした。
さらに、てつでんは従来はケーブル敷設が必要だった鉄道設備用のデータを、SORACOMで遠隔から取得できるようにした。SORACOM Napterで遠隔操作を可能にした産業用ルーターを事前設定して出荷することで、迅速な現地テストと実装が実現した。
位置情報の収集や活用、そして新しいサービス・ビジネスを生み出す
3つめは、交通機関や人の位置情報の収集や活用だ。
まずPayPayは社員の位置や動きをSORACOM Airでデータ化。オフィスや会議室に、社員の位置情報をオーバーレイさせることで、オフィスの密度や稼働率を分析し、新しい働き方を実践するオフィスを模索している。
また、バイタルリードはGPSで取得した、バスの現在地情報をスマホやサイネージで提供する「バスロケくん」でSORACOM Airを活用。同社は、除雪車両にGPS端末を取り付けることで、走行経路を地図上で可視化する「ゆきぞう」も提供している。除雪状態を住民に提供したり、業務レポートすることもできるという。
さらに沖縄セルラーとKDDI DIGITAL GATEでは、SORACOMを使って、大規模スポーツ施設でのイベント開催時に、臨時シャトルバスの運行情報や駐車場情報を提供する。ここでは「SORACOM LTE-M Button」と「GPSマルチユニット」により、置くだけで迅速にサービスを展開。サービスはGoogle Cloudのサーバーレスサービスと連携しており、可視化を実現している。
IoTの技術を使うことで、新しいサービスやビジネスを生み出したプレイヤーも多い。
クックパッドの「cockpad mart」は、通信機能を搭載した専用冷蔵庫を活用した生鮮EC。利用者は駅などに設置された専用冷蔵庫をスマートロックで解除し、注文した食材をピックアップできる。施錠や機器の死活監視はもちろん、食料を安全に管理するための温度管理、遠隔での施錠までSORACOMで実現している。
ソースネクストのAI翻訳機「POCKETALK」はSORACOMのグローバル通信機能を活用することで、電源を入れれば世界中ですぐに利用できる。先頃登場した「ポケトークmini」では、クラウドを活用した会話の文字起こしを実現しており、耳の遠い人との会話を容易にするという。
ウェザーニュースの「ソラテナ」は小型の高性能気象IoTセンサーで、1分ごとに気温や湿度、気圧、照度、紫外線、風向、風速、雨量など8要素を観測する。農作業の効率化や現場の安全対策、遠隔監視などで活用できるという。