本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「中⼩製造業による「はじめてのIoT活⽤」着手のポイントと効果を事例で紹介 〜群⾺県IoT講座レポート〜」を再編集したものです。
こんにちは。広報の田渕です。先日、ソラコムのパートナープログラムでSPSソリューションパートナーのスマーティエ株式会社が講師をつとめる、群馬県主催「IoT活用人材育成講座(令和2年度)」の成果発表会に参加しました。
当講座を企画された、群馬県産業経済部地域企業支援課の熊川様、服部様のお話では、「参加した10社の中には、IoTはもちろん本格的なデジタル化に取り組むのがはじめての会社もあるが、みなさん非常に熱心に取り組んでおられている」とのことでした。
各社から実践的なIoT活用について発表がありましたので、その導入のプロセスと効果を事例とともにご紹介します。製造業でIoTを活用した現場の業務改善に取り組む方は、ぜひ参考にしてください。
群馬県の中小製造業10社が、はじめてのIoT活用に挑戦
群馬県は輸送機械、化学、業務用機器などの製造業が活発なエリアです。中小規模の企業も多く、現場では熟練の技術者が若手へ技術指導を行ない、ノウハウを受け継いでいます。
昨今の高齢化に伴う労働人口不足の影響もあり、地場の製造業においてもデジタル化による省力化や、1人あたりの生産性を高める効率化の必要性が高まっています。群馬県でIoT活用を支援するスマーティエ代表の茂原さんによると、製造業とひとくくりに言っても業務も抱えている課題も各社各様で、 顧客が課題感を感じていても、どのようにIoTを活用し業務改善を進めれば良いのか分からないという声も多いということです。
本講座は、IoTを用いた業務のデジタル化を学び、自社に導入、実践するところまでを含みます。得られた数値をベースに、それぞれの企業内で数値を分析、改善策を考え、3ヵ月間でPDCAサイクルを回して生産性向上を目指します。IoTの導入と効果を体験すること、そして参加者自身が「自ら考え、実践する」業務改善サイクルの実践方法を身につけ、組織に持ち帰ることが講座のゴールです。
製造業のIoT活用、まず日報のデジタル化と機械の稼働管理に着手
本講座では、ふたつの見える化に取り組みます。
まず「日報のデジタル化」。これまで手書きで提出していた生産業務日報を、デジタル日報ツールを用いてタブレットから入力することで、集計業務は不要、リアルタイムでその日にあったことや作業をチームで共有できるようになります。
次に、「IoTによる設備の稼働率改善」です。後述の『IoT課題可視化キット』を使い、現場の機械や設備の稼働状況を見える化します。
このふたつの見える化によって得られた数値をベースに、各社でグループワークを実施。改善策を立案し、改善のPDCAサイクルをまわしていきます。
センサーとラズパイで取り付け簡単『IoT課題可視化キット』
スマーティエ社が開発した『IoT課題可視化キット』は、ふたつのセンサーを使って、作業量と機械装置の稼働状況をデジタル化します。
リードセンサーを装置の接触点に取り付け、接触回数(作業数)を計測します。加えてCTセンサーで装置の電流値情報を取得、電源のオン/オフや、オン状態時のアイドル待機中、生産稼働中等を把握します。
センサーデータは小型コンピューターのRaspberry Pi(ラズパイ)に連携、スマートフォンと同じ携帯電話通信(SORACOMのSIMカード)を利用するので新たなネットワーク敷設は不要、使いたい場所で気軽にIoTをはじめられます。
取得したデータは、どこからでもパソコンやスマートフォンで時系列のグラフとして閲覧できます。ここには、ダッシュボード作成・共有サービス「SORACOM Lagoon」(下の画面)を使うことで、サーバーやアプリケーションを独自に準備することなく、現場を見える化する機能を素早く実現しています。
中小製造業のIoT活用事例
このアプローチでIoTを実践した参加企業のなかから、効果が得られた事例をご紹介します。
包装機械の使用電力を削減:和漢薬研究所
漢方薬を製造販売する株式会社和漢薬研究所の赤城工場では、ヒートシール機械をIoT化しました。
電源オンの時間に対して、機械の稼働時間が短いことを発見。日報と合わせて分析すると、装置を活用する作業前の準備時間や作業終了後も、退室時間まで電源オン状態のままにしていることが判明。生産終了時は、メンテナンス完了後すぐに装置電源OFFにすることを意識付け徹底することで、電力のコスト削減を実現しました。
わずか8.1mmの不良を発見、稼働率を向上:加栄レース
桐生市でレース生地、インテリア製品の製造に携わる加栄レース株式会社では、レース生地編機をIoT化しました。
編み機の停止時間と回数を分析したところ、編み機の不具合調整による停止が目立つことに気づきました。
自分たちだけでは原因特定まで出来なかったため、編み機メーカーも巻き込んで原因を詳しく調べたところ、編み機の機構に、定期点検では把握できていなかったわずか8.1mmのスプリング不良があることがわかり、部品交換で根本的な改善を実施。あわせて、停止時の機械のチェック手順を改良し、工場長が主体となって全作業員に情報共有することで、停止回数を大きく削減、稼働率の向上につながりました。
新人作業員の生産性を250%アップ:日東電機製作所
太田市で配電盤、制御盤の製造を行なう株式会社日東電機製作所は、当講座参加者と経営トップが密に連携・検討を進めながら、新人の作業タイムスケジュールと工作機械の稼働状況を重ね合わせて分析することに決め、工作機械をIoT化しました。
その結果、特に事前の段取りや難しい曲げ加工の作業前確認と実作業に時間が掛かっていることを特定。日々のグループワークを通じて、新人は自身の作業を見直し、知識やコツを習得していきました。その結果、業務プロセスと実作業を大幅に改善し、新人の作業は僅か1ヵ月で、生産性を2.5倍にまで向上しました。
生産機械の稼働レポートを自動化:明清産業
前橋市で銅箔糸やウレタン端末線の製造に携わる株式会社明清産業では、自社開発のウレタン端末線製造機器をIoT化しました。
この装置の保全担当者が講座に参加しIoT化をハンズオンで学んだ後、すぐに装置にリードセンサーを設置。作業数を自動的に把握、日々の生産記録をデジタル化し自動生成できるようにしました。これにより、従来ひとりの担当者が数日を要していた月次の生産分析レポート作成と集計を「1日1回、ワンクリックで作成」に改善。作業時間を大幅に短縮し、省人化を実現しました。
下記のグラフは、SORACOMのデータ収集機能から別のアプリケーション(スマーティエ提供の『統計分析アプリ』(IoT課題可視化キットに同梱)で可視化した稼働推移統計です。見える化するだけでも、装置稼働に関する様々な示唆が得られます。
まずは身近なところからIoT活用をスタート
3ヵ月という短期間の講座で、多くの中小製造業がはじめてのIT/IoT活用の手応えを得ています。ここで紹介しきれなかった企業も含め、講座の参加企業のうち8割が今後もIT/IoT活用による生産性向上活動を継続すると答えているそうです。
まだIoTを現場に取り入れていない皆さんも、まずは身近な業務からIoTで現場のデジタル化をはじめてみませんか?
ソラコムが提案するIoTのはじめ方
■IoTを自作で手軽にはじめる
ソラコムでは、活用実績のあるデバイスを1個から入手できるデバイス通販サイト「SORACOM IoTストア」や、必要機材と開発手順を紹介する無料のIoT DIYレシピを公開し、ご自身で手軽にIoTをはじめたい企業をサポートしています。
■事例で使われているIoTソリューションを月額で導入する
「IoT SELECTION connected with SORACOM」は、すでにあるIoTソリューションを、少ない初期費用と月額でレンタルできるマーケットプレイスです。PLCやFA機器、アナログメーターをIoT化する製造業向けソリューションも提供しています。
■自社に最適なIoTシステムを構築する
経験豊富なエキスパートによる無料の「個別相談会」も、平日毎日実施しています。IoTに関するお悩みは、お気軽にご相談ください。
専門家のサポートを必要とされる企業には、パートナープログラム「SORACOMパートナースペース」を通じて、最適なパートナーをご紹介します。
ソラコム 田渕
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