Core i7-1195G7とCore i5-1155G7
インテルが第11世代Coreの追加モデルでRyzen 5000シリーズを撃破、NUC 11 Extreme Kitもチラ見せ
2021年05月31日 11時30分更新
クリエイティブ性能ではリアルワールドユースを訴求
そして、インテルの強みはゲームだけではない。続いて、クリエイティブ性能における比較もご覧いただこう。物理4コアのCore i7-1195G7搭載PCが物理8コアのRyzen 7 5800U搭載PCを大きく突き放したグラフで、かなり衝撃的だ。しかし、これは左の作業(主に動画処理)に関しては、動画処理支援技術「Intel Quick Sync Video」を用い、右の作業(主に画像処理)に関しては、近年インテルが力を入れているAI処理技術を使っているためだ。
もちろん、これらの独自技術を使わなければ、いずれも物理コアが多いCPUが得意とする重い作業になる。しかし、インテルは物理コア数の不利を独自技術でひっくり返り、実際にそれらが使えるように対応ソフトウェアを着実に増やしている。このあたりは長年、ハードウェアベンダーのみならず、ソフトウェアベンダーと密にやりとりしてきた同社が得意とする芸当だ。
Intel Quick Sync Videoを使えば、専用のハードウェアエンコーダー/デコーダーが処理するため、その作業効率は圧倒的に速くなる。よくAMDのスライド比較に出てくるHandbrakeでもHEVC動画の4K 10bit→フルHD変換においては、Core i7-1195G7搭載PCはRyzen 7 5800U搭載PCの8倍高速だ。
もちろん、時間はかかるが動画変換はCPUだけで行なったほうが品質は高くなる。しかしながら、画質が問われるプロユースはともかく、例えば家族や友人とサクッと共有したい動画を作成する場合なら、専用デコーダー/エンコーダーによるざっくり処理でも問題はないはず。つまり、そういった時間優先で動画を作りたいという需要に対しては、自社のCPUのほうが絶大な効果を発揮するということをインテルは言いたいのだ。事実、積極的に薄型ノートPCで動画を編集するプロは稀だろう。
近年インテルは「リアルワールドパフォーマンス」という言葉を繰り返してきた。いわく、ベンチマークは多くのユーザーが使用する環境に限りなく近くすべきという考え方で、これには筆者も大賛成だ。我々メディアが掲載するベンチマークの多くは、その製品が備える最大性能を測ることを目的に厳しい条件を課したものなので、そことは分けて考えるべきだと思う。
とはいえ、その最大値で負け始めた近年からそういったことを言い始めたと捉える向きもある。それこそ、プロが使うであろうデスクトップPC向けCPUにおいては、ゲーミングでこそ勝利しているが、クリエイティブユースでは負けが込んでいる。ぜひとも次世代CPUでは、プロクリエイティブ環境におけるリアルワールドパフォーマンスでも完全勝利してほしいところ。