STOと呼ばれる、新しい資金調達の手法が本格的に動き出しそうだ。
ネット証券大手SBI証券が2021年3月26日、日本の法律に準拠してSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)を取り扱うことができるようになったと発表した。
STOはブロックチェーンを使って株式や社債を発行し、資金を調達する仕組みだ。
ST(セキュリティトークン)は、日本の法律上は「電子記録移転有価証券表示権利等」にあたると理解されている。
ここまでの説明に対して、自信を持って「理解してます!」と言える人がどのくらいいるだろうか。正直、筆者自身もけっこう微妙だ。
ていねいに、ひとつひとつ理解と説明を試みたい。
●かつてICOという資金調達手法があった
4年ほど前、仮想通貨への注目が集まる中、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる資金調達の方法があった。
企業が仮想通貨で資金を調達し、その代わりにトークン(引換券に相当)を渡す。
トークンの価格は、事業の進ちょくなどさまざま要因で上がったり下がったりする。
日本でも設立から間もないスタートアップ企業が短期間で数億円の資金調達に成功するなど、高い注目を集めた。海外では数千億円の調達に至ったICOの事例もあった。
だれでも手軽に資金調達ができる仕組みになりうるとの期待感もあったが、日本の監督官庁にあたる金融庁の視線は厳しかった。
ICOを実施する企業はホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書を配布する。
このホワイトペーパーの中身から、投資の対象になるかどうかを判断するが、海外では資金を集めたまま関係者が行方不明になるなど、詐欺と言われても仕方ない事案が相次いだ。
当時を振り返ると、監督官庁が神経を尖らせるのも不思議ではない状況があった。
確認できる限り、2017年を最後に、日本ではICOは下火になった。
●より厳格なSTO
大ざっぱな理解としては、STOは、ICOで浮上した多くの課題を基に、資金集めのルールをより厳格化し、金融商品取引法などの法律に準拠する改善を施した仕組みと考えられる。
では、セキュリティトークン(ST)とはなんだろうか。
企業は株式の発行や借金など、さまざまな方法で資金を集めるが、資金調達の方法のひとつに社債の発行がある。
社債を買うと、返済期限まで利子が支払われ、満期には元本が返済される。社債はやはり市場で売買され、企業の業績や市場環境などで価格が上がったり下がったりする。
実際の経済はもう少し複雑ではあるが、ある会社の社債を1億円買うと、5年満期の1億円の「有価証券」を受け取る。5年が経過する前にお金が必要になったら、たとえば9000万円で売れば、少し損は出るが、早めに貸した金の大部分を回収できる。
STはたとえば、企業が社債で資金を集める際、スマホやPCを含むコンピューターで売買され、だれが権利を持っているかをブロックチェーン上に記録する仕組みだ。
ブロックチェーン上に記録するデジタル有価証券と言い換えると、ニュアンスがうまく伝わるだろうか。
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