オンライン採用面接から「Chromebook」導入の在宅勤務、全国店舗間や社内のリアルタイム情報共有まで
「Google Workspace」のフル活用事例、敷島製パンと損保ジャパン
2021年03月30日 07時00分更新
「Google Workspace(旧称:G Suite)」は、クラウドベースの統合業務アプリケーションである。文書共有の「Googleドキュメント」や「Googleスプレッドシート」、オンライン会議システムの「Google Meet」など、さまざまなアプリケーションを組み合わせて使うことができる。Google Cloud Japanは2021年3月16日、国内3社におけるGoogle Workspaceの活用事例を紹介する説明会を開催した。本稿ではそのうち、2社の事例を紹介する。
敷島製パン:GoogleのクラウドツールとChromebookをフル活用したオンライン業務へ移行
“Pasco”ブランドの食パンやスナックパンで知られる敷島製パンでは、コロナ禍における採用活動にGoogle Meetを活用している。以前は毎年3月から、名古屋本社を含む3拠点で学生を集めた会社説明会を開催し、採用面接は主要工場において対面で実施、内定式や入社式も本社で行うという、すべてオンサイトでの実施だった。だが、2021年の採用活動はコロナ禍の影響からオンライン形式に切り替えた。
「初めてのオンライン説明会だったので、学生が集まってくれるか、また当社の説明が伝わるかなど不安がありました。しかし実際にやってみると、リアル開催(オンサイト開催)では来ていただくのが難しい地方の学生も参加できるため、逆にメリットも感じました」(敷島製パン人事部 人材開発グループチーフの金原仁志氏)
採用面接もすべてオンラインで行った。就職希望の学生側だけでなく、面接官側も複数の異なる拠点から接続する形式となり、面接官どうしはGoogle ChatやGoogleスプレッドシートを活用して情報共有を図った。
内定式、入社式もオンラインで開催し、内定者全員が自宅から参加した。その後の社内研修もオンラインで行っている。「研修の方法は、在宅の社員同士をつないで少人数で行ったり、勤務地に数人ずつ集まって拠点間をつなぐなど、まだ試行錯誤している段階です」(金原氏)。
オンライン研修で知識を補うことはできても、新入社員どうしのつながりが足りないのではないか。そう感じていた金原氏は、研修のフォローとして社内向けSNSサービス「Google Currents」を使ったコミュニティ活動を開始した。「人事部としても研修の事後フォローができ、好評です」(金原氏)。
また社員向けに、Google Meetの利用法そのものをリモートで研修する「Meet de 勉強会」も開催している。これは30分程度の短時間の研修で、スマートフォンでどこからでも参加ができる。「社員のオンライン業務での困りごとを、Google Formを使って収集し、勉強会のテーマを決めています」(金原氏)。
昨年(2020年)の採用活動中、インターンシップでのグループワークはオンラインで難しいと判断し、実施しなかった。だが今年は初めてグループワークに挑戦し、成功させたという。「Google Meetの『ブレイクアウトセッション』という機能(オンライン会議で分科会を開ける機能)を使い、小グループに分かれて討議できるようにしました。またGoogleスプレッドシートで、1つの資料を学生たちが同時に編集しながら、意見を共有できました」(金原氏)。
シンクライアント端末からChromebookへ移行した理由
また同社では、社員が在宅勤務を行うための端末として約1000台のChromebookを導入している。同社 SPS推進部 企画グループチーフの吉安壮真氏によると、以前はモバイル業務向けにシンクライアントを採用していたが、それをChromebookに刷新したのだという。
「シンクライアント端末を社外からの業務で使うには、まずDaaS(Desktop as a Service)環境にアクセスしなければならず、それに時間がかかることが不評でした。2018年から2019年ごろにはテレワークのニーズも増えてきて、セキュリティ面の懸念も出てきており、シンクライアントの更新時期にも重なったため端末の変更をすることになりました」(吉安氏)
Chromebookを選択した「決め手」については、DaaS環境にアクセスしなくてもWebシステムが利用できることだったという。同社の基幹システムはWebブラウザから利用できるため問題はなく、懸念事項だったセキュリティ面についても「Chromebookではブートチェックなど多層の防御がかかるため強固になったと認識しています」と語る。加えて、当時利用をスタートしたGoogle Meetとの相性の良さ、端末コストの安さ、ActiveDirectoryに依存しないシンプルな管理性の実現などもメリットだったという。
同社では、2020年の初めまでに700台のChromebookを導入済みだったが、コロナ禍によるリモートワーク/在宅勤務の増加を受けて急きょ300台を追加導入した。
「2020年の3月に追加導入が決まり、発注してから1週間後には必要な社員に配布が完了しました。従来のファットPCでは、キッティングの作業などで2カ月以上かかるところ、Chromebookは圧倒的に短い時間で、しかもコストも安く配備できました」(吉安氏)
当初、リモートで“重い業務”を行う社員に対しては、Chromebookから既存のDaaS環境に接続して使うよう指示していた。しかし、リモートワークの対象社員が急増したことで外部接続のリソースがひっ迫し、レスポンスが悪化した。そのためChromebookからリモート接続アプリを使い、オフィスにあるWindows PCを直接操作する方法に変更したという。
「当社の基幹システムはWebベースのため、本来であればOSに依存しないリモートワークも可能です。今後はゼロトラストソリューションである『Google BeyondCorp』の導入も視野に入れており、現在テストを行っています」(吉安氏)