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ノーコード、ローコードが求められる背景と、みずほ信託銀行やZOZOでの活用事例を紹介

2021年03月29日 09時00分更新

文● 重森大 編集●大谷イビサ

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 2021年2月19日、サイボウズは第5回目となるMedia Meetup Vol.5をオンラインで開催した。営業本部 営業戦略部の副部長、木地谷 健介氏が「東証一部上場企業の5社に1社が導入! 非IT人材でもDXできるkintone」と題して、ローコードツールが求められる背景やみずほ信託銀行、ZOZOでの導入事例を紹介した。

東証一部上場企業の5社に1社が利用するkintone、導入担当者の8割以上は非IT部門

 世間ではノーコード、ローコードツールに注目が集まっている。その背景には、過去の進め方が通用しない不確実の時代が訪れていることが挙げられると、木地谷氏は言う。プロセスやルールを守って進めていれば明確なゴールに近づいた予測可能な時代とは違い、分岐や手戻りが多くルールも流動的な現代は、同じ方法で長時間進んでもゴールに近づくとは限らない。

「ビジネスの変化スピードは加速しています。刻々と変化する現場のニーズに対応しなければ、不確実の時代を生き抜けません。システムにおいても、迅速に立ち上げ、柔軟に変更できることが重視されています」(木地谷氏)

サイボウズ 営業本部 営業戦略部 副部長 木地谷 健介氏

 ノーコード、ローコードツールが注目されるもうひとつの理由が、多くの企業でデジタル化されていない領域が残っているという現実にある。難易度は高くないものの、多種多様な対応を求められる業務が現場には多く残っている。しかもIT人材は不足しており、これらの課題をIT部門だけで解決するのは困難だ。

「システム開発における、IT部門と業務部門の役割を再定義する必要があります。業務部門がシステムをつくり、IT部門はそれを支援するようにすべきでしょう。それを実現できるのが、kintoneです。kintoneはプログラミング不要で、現場が欲しい小さいシステムを、いくつもスピーディに構築できます」(木地谷氏)

 kintoneの導入実績は1万8000社におよんでいる。ユーザーには大企業も多く、東証一部上場企業の5社に1社が導入済みだ。特徴は、業種別の偏りが少ないことと、導入担当者に非IT部門が多いこと。導入担当者の、実に82%が非IT部門だ。

 2020年のトレンドを振り返ると、ITの世界にも新型コロナウイルス感染症の影響が影を落としている。多くの自治体が新型コロナウイルス感染症関連の情報共有基盤をスピーディに構築する必要に迫られた。神奈川県では、感染患者数やPCR検査数などの情報を病院から収集、共有するシステムを、kintoneを使い短期間に構築した。類似のニーズを抱えた厚生労働省、大阪府、兵庫県加古川市などもkintoneを採用している。

「2020年のキーワードとして、DXも挙げられます。日清食品グループではkintoneを使って社内の各種文書を電子化、ペーパーレス化しました。承認スピードが向上したほか、コロナ渦における在宅ワーク環境でも円滑に業務を進められました」(木地谷氏)

 続いて、ローコードツールに関する市場調査の結果が報告された。ITRと連携して作成したホワイトペーパーによれば、ローコードプラットフォームの導入目的でもっとも多かったのは「ビジネス環境の変化への対応」だった。従来のITは効率化の文脈で語られることが多かったが、ローコードツールは不確実の時代に向いていることが明らかにされた格好だ。なお調査対象は、従業員500名以上の国内企業に務めるIT担当者とシステム選定に関わる業務部門担当者となっている。

「特筆すべきは、ビジネス環境の変化への対応にローコード開発プラットフォームの導入効果があったと答えた企業は、約9割にのぼるという結果です。まだ実数としては多くないかもしれませんが、導入した企業は確実な効果を感じているということです」(木地谷氏)

品種が多い金融商品に関する情報共有も現場主導のkintoneで実現したみずほ信託銀行

 Media Meetup Vol.5では2つの導入事例が紹介された。1つめは、みずほ信託銀行株式会社への導入事例だ。リテール・事業法人部門において本部と営業店との情報共有には、紙や表計算ソフトがいまだに使われていた。これをデジタル化して業務の効率化を図ったが、従来どおりの外部委託によるシステム開発では、スピードもコストも見合わないと判断された。

「取扱商品は少量多品種で、商品の変更も多いので、外部委託でシステムを構築、運用するのは現場のスピード感に見合いませんでした。そこでみずほ信託銀行が目を付けたのがノーコード、ローコードでのシステム内製化でした。選んだのは、サイボウズのkintoneです」(木地谷氏)

 注目したいのが、そのユーザー規模だ。一部門、少人数での導入事例が多いkintoneだが、みずほ信託銀行のリテール・事業法人部門では本部、営業店の約1700名が情報共有に活用しているという。それだけの人数が使うシステムを開発しているのは、リテール・事業法人部門 営業推進室のスタッフだ。

 kintone導入後はPCやタブレットから各種情報にタイムリーなアクセスが可能になった。登録されたデータをリアルタイムに集計できるので、本部での分析や営業店でのマネジメント業務もスピードアップ。さらに、コロナ渦におけるリモートワークでも支給されたタブレットを使い、kintone上で情報共有ができているとのこと。

「さらにkintoneとRPAを組み合わせた活用にも発展しています。kintoneにデータを入力すると、RPAツールが社内の既存システムから関連データを読み出し、必要に応じて加工したうえでkintoneに登録します。他システムを参照して転記する手間を必要とせず、連携を自動化できています」(木地谷氏)

ZOZOは内製できる力を高めるため業務部門を窓口にkintone導入

 続いて紹介されたのは、アパレルECのZOZOでの導入事例。こちらの課題は、事業成長に伴い既存のワークフローシステムが業務実態に合わなくなったことだった。ワークフローシステムでカバーできていない申請書類や、デジタル化されていない業務領域も残っていた。

 導入するシステムの選定に当たっては、各事業での情報管理と、グループ会社や取引先との情報管理ができることが求められた。Macやスマートフォンなどからの利用も考慮して、デバイスに依存するシステムは敬遠された。その上で最も重視されたのが、業務の変更に対して迅速にシステム開発や、柔軟な変更を内製できることだった。そして選ばれたのは、もちろんkintoneだ。

「主な用途は、人事書類や稟議書、各種申請に使われるワークフローシステムの構築です。クラウドの特性を活かして、グループ会社や取引先企業など企業間でのDXを推進する力にもなっています」(木地谷氏)

 開発方針は、グループ全体でシステム開発を内製できる力を高めること。そのためkintone導入に当たっても総務部スタッフが開発窓口を担当している。グループ会社であるZOZOテクノロジーズのスタッフとチームを組み、定例ミーティングを行うなど密な連携を取りながらの開発だが、主体はあくまで総務部。技術的に高度な課題や、基幹システムとの連携など難しい案件をZOZOテクノロジーズがサポートする。

「ZOZOでもシステム連携により、kintoneを幅広く活用しています。クラウドサインとの連携はその一例です。社外の取引先との書類確認や合意プロセスを、kintoneとクラウドサインで電子化しています」(木地谷氏)

非IT部門がシステム開発に携わる機会は今後も増えていく

 2つの事例の特徴は、従来デジタル化が難しかった少量多種の情報管理を、業務部門主導でシステムを内製して、デジタル化を推進した点だ。業務部門が窓口となり、主体的にシステムを企画、開発する。技術スタッフを配置するものの、業務部門のサポートが主な役割となっている。さらに、kintoneと既存システムやクラウドサービスとの連携も2つの事例の共通項だ。

「非IT部門の方がシステム開発に携わることはこれからも増えていくでしょう。そのとき、IT部門と業務部門で目指すべき業務改革の姿自体は変わりません。kintoneなどノーコード、ローコードツールをうまく活用して、システムをスピーディに立ち上げ、柔軟に変化に対応できる力を身につけてください」(木地谷氏)

 その取り組みをサイボウズはこれからもサポートしていくと語り、木地谷氏はMedia Meetup Vol.5を締めくくった。

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