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re:Connectを掲げたJAWS DAYS 2021のオープニングセッション

AWS亀田さんが語る「コロナ渦におけるクラウドとコミュニティで学ぶ意義」

2021年03月25日 08時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 3月20日に行なわれたJAWS DAYS 2021のオープニングセッションはアマゾン ウェブ サービス ジャパン シニアエバンジェリストの亀田治伸さんが務めた。クラウドの価値とメリットをさまざまな角度から訴求できる亀田さんならではの「コロナ渦におけるクラウドとコミュニティで学ぶ意義」は、JAWS DAYSの始まりにふさわしいイントロだった。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン シニアエバンジェリストの亀田治伸さん

投資判断の難しい時代こそ、クラウドコンピューティングがふさわしい

 JAWS DAYS 2021の白いTシャツをまとった亀田さんの一声はJAWS DAYSへの驚きだった。「今年の運営もすごいですね。毎年すごいですけど、バージョンアップしています。JAWSで不思議なのは、毎年運営のメンバーが替わっていて、個人がノウハウを引き継いでいるわけではないのに、昔のことがきちんと継承されていること。とてもユニークです」というコメントには全面賛成したい。
 
 まず、亀田さんは東京リージョンの開設から10年が経ち、JAWS-UGも10周年を迎えたことをアピール。10周年目にあたる先頃3月2日には大阪リージョンがフルリージョンとしてオープン。フルリージョンを2つ抱える国は、中国・北米以外で初めてになるという。3つのAZから構成される大阪リージョンでは、オンデマンドインスタンスやSaving Plansも利用可能で、およそ400km離れた東京リージョンとのシステムの分散構築も可能になるという。

 振り返れば、JAWS DAYSは東京ドームで行なわれた2013年が初めて。その後、新宿、五反田と会場を変え、昨年からオンライン化されている。今年の登録者はその時点では3700人を超えていたが、JAWS-UGの全国支部の登録者数はすでに4万8000人に拡大している。「JAWS DAYSもそのうちこの数字に近づいていることになると思う」と亀田さんは期待する。

 コロナ禍において、新しいワークスタイルと生活様式が継続して久しいが、亀田さんは「まさに『だらだらと続いている』という表現が正しい」と指摘する。リモートワークに備えてPCやVPNを準備をしたわけでもなく、ある日突然始まり、現在に至るまで続いているという意味では、確かにだらだらと続いている。こうした投資判断の難しい時代には、やはりクラウドコンピューティングが有用だと亀田さんは指摘する。初期費用は不要で、必要なときに、必要なだけ、低価格でサービスを利用できるのがまさにAWSのコンセプトだからだ。

コロナ禍を乗り切ったクラウドは「社会の全体最適」を担う基盤へ

 自身が指摘するように、ここまでは一般的なクラウドの説明ではある。しかし、亀田さんはコロナ禍において、AWSのようなメガクラウドはインターネットやITリソース全体の最適化に寄与してきたという点を指摘する。

 たとえば、コロナ渦のステイホームで利用が拡大したサービスとしてはオンラインゲームや動画配信などが挙げられるが、このうちNintendo OnlineやPlayStation Network、FORTNITE、NETFLIX、Amazon Prime Videoなど著名なサービスがAWSを採用している。「いきなりユーザーのライフサイクルが変わったのに、オンプレミスで限られたリソースのシステムを持っていては、このようなピークをうまくさばけなかったはず」と亀田さんは語る。

クラウドがもたらす全体最適

 もちろん、AWSのデータセンターにあるリソースプールだけではこれは難しかったかもしれない。しかし、コロナ禍でピークを迎えた業界がある一方、オフピークでシステムを止めた業界もある。そのため、オフピークで使わないサーバーをピークのサービスへ融通するといったリソースの全体最適を行なったことで、このコロナを乗り切れたという。逆にピークする事態を想定した場合は、爆発的なリソースが必要になるし、普段使われていないので無駄も多い。「クラウドコンピューティングは新しい人からすると得体の知れないもの、受け入れにくいものに見えるかもしれないが、実はすでに社会の全体最適を担う基盤になりつつあるのが現状」と亀田さんは語る。

 もちろん、クラウドの社会的責任が増すと、障害対策や信頼性といった観点だけではなく、クリーンエネルギーの観点も重要になる。その点、AWSは直流・交流の変換ロスを減らすことで、既存のデータセンターに比べて約35%の変換ロスを削減し、自社開発の省電力プロセッサーを採用することで、既存のデータセンターに比べて二酸化炭素の排出を88%も削減。さらにグローバルでは発電所の構築にも注力。昨年のre:Inventでも発表されたとおり、Amazonはすでに世界最大の再エネ調達企業になっており、6500MWを再エネでまかなっているという。

6500MWを再エネで調達する

改めて考える「Software is eating the world」の意義

 続いて亀田さんは、マーク・アンドリーセンの「Software is eating the world」というフレーズを引き合いに、ソフトウェアの価値やサービス化について検証する。仮想化という技術はハードウェアとソフトウェアの密結合を切り離し、ソフトウェアに自由を与えた。今までハードウェアに依存していたビジネスでも、ソフトウェアがビジネスの価値を左右する時代となった。「従来のハードウェアの価値が毀損しているわけではない。自動車なり、家具なり、ハードウェアはソフトウェアを動作するプラットフォームになり、新しいビジネスが生まれるようになった」と亀田さんは語る。

Software is eating the world

 この流れは交通、エネルギー、流通・小売り、家電、エネルギー、ヘルスケア、農業などありとあらゆる業種・業態に拡がっている。そしてサービス産業という観点では、すべてのサービスが電気やガス、水道などのインフラ事業と同じ従量課金型に向かっている。そして、過去IBMが提唱したサービス化の潮流はIT業界全体を覆っており、社会の変革に大きな影響を与えている。

 1965年、米国FORTUNE500企業の平均存続年数は67年だったが、2015年は15年に短縮されている。その大きな理由は、インターネットやスマホの普及により、情報の粒度が増し、より多くの情報をユーザーが受け取るようになったからだという。1970年に創業された会社で現在まで残っている会社は17%に過ぎず、2000年に創業した会社も50%しか残っていない。米国に追従する傾向のある日本でも、この現象に備える必要があるという。

 サービスが従量課金型となり、オフィスが仮想化されてくれば、当然仕事の中身も変わってくる。「昔であれば、その企業が支持するものを学び続けていれば、給料を払ってくれるので安心でしたが、今はもう1つ別の尺度を持つ必要があると思っています」と亀田さんは語る。業務には全身全霊で向かいつつも、自らの持っているスキルに関しては、今後5年後、10年後に通じるかを冷静に見極める必要があるわけだ。

 そして、予測不可能な現在、必要になるのがJAWS DAYSのようなコミュニティで得られる知識やトレンドだ。「今であればサーバーレスはピークを超え、コンテナやKubernetesあたりが全盛期なはず。そういった感覚を肌感覚として得て、学んでいくことがこの時代を乗り切るのに大事なのではなのか」と亀田さんは指摘する。

興味は減衰するが、情熱は周りからもらうことができる

 変化の読めない時代になり、サービス化が進み、仕事やスキルが刻々と変わっていく時代。「どうせ来るなら、楽しめるようにしておくことが重要。スキルで自由は手に入れられる」と亀田さんは指摘する。その例として、亀田さんはJAWS-UGの成長に大きく寄与したパラレルキャリアの小島秀揮さん、オンライン採用で一度も出社せずに沖縄で働くAWSジャパンの宮里新司さん、大手通信事業者のジョイントベンチャー社長でありながら週の半分を北海道で働く里見宗律さんを紹介する。

スキルで自由を手に入れた事例を披露

 その上で、私が昨年のFacebookで書いた「オフィスが仮想化したので、次は組織がクラウド化する」というコメントを引き合いに出し、「1社に頼ったライフスタイルを構築していくのではなく、自分がなにをやりたいのかを軸に学んでいくことが必要だと思う」と語る。

 そんな亀田さんが考える学びの方程式で、一番重要なのは興味。「私はガンダムが大好き。出てくる1500種類くらいのモビルスーツは特定できるはず。日々新しく出てくる新しいものも覚えられるんです(笑)」とのことで、学びの効率は興味によって大きく変わるという。これはとても納得できる意見だ。

 次は義務感で、コミュニティでの登壇はこの義務感の醸成に非常に役立つ。そして最後は情熱。興味は自らの心の中から生まれるが、時間とともに減衰してしまう。しかし、情熱は周りからもらうことができ、減衰する興味を維持できる。「1人でカラオケに行くと2時間が限界ですが、10人でカラオケ行くと徹夜でもできるのと同じ」とは亀田さんの弁。

 他の人がどんな興味を持つことを知ることによって、自らを高められる。こうした学びの環境としてコミュニティは最高だし、実際に今回用意されたoViceのような仕組みを使えば、他の人の興味を聞くことができるはずだ。「みんなで行けば怖くない」というラストスライドを掲げた亀田さんは、JAWS DAYSを楽しんでほしいと呼びかけ、オープニングセッションを終えた。

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