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完全密着の美しいモトローラの折りたたみスマホ「razr 5G」はこうして生まれた!

2021年03月22日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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なぜスマホを縦折りに!?
razr 5G開発者が語る「折りたたんだ」理由とは

 モトローラからついに折りたたみスマートフォン「razr 5G」が発売になる。ディスプレーが完全に密着して折りたため、しかも大型のアウトディスプレーも搭載する意欲的なモデルだ。製品開発の経緯や苦労点を、モトローラのプレミアム・フラグシップ製品担当ジェネラルマネージャー、ジェフ・スノー(Jeff Snow)氏にうかがった。なお、同氏はモトローラに20年以上在籍し、これまで同社の携帯電話やスマートフォンの開発に長年携わっている人物だ。

モトローラ初の5G対応折りたたみスマートフォン「razr 5G」

──razr 5Gはどのような経緯で開発されたのか?

ジェフ氏(以下。同) razr 5Gはハイエンドなモデルであるだけではなく、折りたたみディスプレーを搭載するという、最新技術の開発にも注力したモデルだ。また、本体デザインそのものをアイコニックなものにすることを目指した。昨今のスマートフォンはどれも似たようなデザインになっているが、razr 5Gは新鮮さを感じさせ、ファッションにもなり、そしてワクワクできるような製品になることを考えた。そのため往年のヒットモデル、2000年台前半に発売した携帯電話「RAZR」をイメージしたデザインとした。

モトローラ プレミアム・フラグシップ製品担当 ジェネラルマネージャー、ジェフ・スノー(Jeff Snow)氏

──razr 5Gは初代RAZRの再現を狙った製品なのか?

ジェフ 初代のRAZRは金属ボディーを採用し、薄くて軽く、当時の携帯電話市場に大きな刺激を与えた製品だった。今回のrazrの開発は、もちろんRAZRの成功体験がきっかけとなっている。razrのデザイン開発にはフィーチャーフォンのRAZRにも関わった産業デザイナーが加わっている。全体の形状イメージ、折りたたんだ時の角の部分などに初代RAZRのイメージを再現している。

 しかし、初代モデルにできるだけ近づけよう、とは考えなかった。なぜならこの約20年の間に新しい技術が登場している。razr 5Gはそのコンパクトなボディーに様々な技術をいれることを考えて開発を進めた。5Gに対応したSoC、Snapdragon 765Gを採用。バッテリーは分割式で2つを搭載、閉じたときの外側にセカンドディスプレーを搭載、コンパクトサイズながらディスプレーを折り曲げるために、ティアドロップ式の構造を採用、などなど開発は困難を極めた。しかしそれらを克服した結果、いい製品に仕上がったと自負している。

初代のRAZR V3(左)とrazr 5G(右)

折りたたんだときの
ユーザー体験こそが重要だ

──完全に閉じることのできる折りたたみディスプレーはどうやって開発したのか

ジェフ razr 5Gを開発する際に最も重要視したのは、折りたたみ式スマートフォンを「閉じた状態で使ったとき」のユーザー体験だ。

 そのためにディスプレーはたたんだ時にピタリと閉じる形状にした。ディスプレーはスライドするムービングダイナミックシステムを取り入れ、さらにヒンジ部分はティアドロップ式、すなわちヒンジ内側に曲げの部分を逃がす構造とした。

 ディスプレーの曲げ耐久性については、今回のrazr 5Gの約1年前に出した4G版のrazr(日本未発売)のユーザーフィードバックを参考にした。4G版razrユーザーの1日の平均開閉回数は約40回であった。そこで99%のユーザーの1日の開閉回数は多くても100回と推測し、それを5年間使うと約20万回となる。そこで20万回の折り曲げ耐久性を持たせた。さらに高温や高湿、落下テストなども行なっている。

 また折りたたみ構造を支えるヒンジの構造も機械的、工学的な検討をして特許も取っている。

閉じると密着するディスプレー

──他社の折りたたみスマートフォンはヒンジを途中の位置で止めることができる。razr 5Gは途中では止められないのか?

ジェフ razr 5Gは閉じた状態でも(アウトディスプレーを使い)たくさんの機能が使えるようになっている。そしてそのまま本体を開いても、アプリを使い続けることができる。閉じても開いても使えるユーザー体験を提供しているため、ディスプレーを途中まで開いて使うことは考えていない。

 razr 5Gは閉じた状態でも本体をひねりながら振ればカメラが起動し、アウトディスプレーでプレビューしながらセルフィーも取れる。このアウトディスプレーでは他のアプリも利用できる。閉じた状態でメールが届いていることがわかればそのまま開いてメール本文を読む、ということもできる。あるいは開いた状態で通話しながら、本体を閉じてスピーカーフォンでそのまま会話を続けることも可能なのだ。ユーザーのユースケースを考えた結果、ヒンジ構造は「閉じる・開く」のどちらかとした。

 もちろん新しいユーザー体験を提供することは常に考えている。今後も折りたたみ構造については様々な検討を加えていく。

閉じた状態でもアプリを使うことができる

前モデルからの改善点

──4Gモデルのrazrと、今回のrazr 5Gではどのような改良が加えられているのか。

ジェフ razr 5Gは4G版razrと見た目は変わっていないように見えるが、実体積を約15%減少させた。カメラを強化しバッテリー容量も増やしたが、より丸みをもたせた滑らかな本体デザインとすることで、サイズ減を実現させた。なおヒンジ部分の構造は同じものを採用している。

 外観上の大きな違いは、本体下部の出っ張り部分の指紋認証センサーを背面に移動させた。これは4Gモデルの位置ではやや下に位置しており、使いにくいと考えたからだ。razr 5Gでは背面に指紋人所センサーを移動させたことで、人間工学的にも閉じたとき、開いた時、どちらでも使いやすくなった。

 razr 5Gはこの部分に4GモデルにはなかったSIMカードスロットを搭載している。なお、ほかにはスピーカーもここに収め、音楽再生時の体験も向上させている。アンテナもこの部分に収納しているが、それによって開いた時でもアンテナ性能が落ちないようにしている。5Gスマートフォンでは幅広い周波数の組み合わせを利用するため、アンテナ設計は端末設計の中で最も重要な要素と言えるだろう。

4G版razr(左)とrazr 5G(右)

──モトローラとして、折りたたみスマートフォンはどのような位置づけの製品と考えているのか?

ジェフ razr 5Gは小型で持ちやすくしながら、スマートフォンとして使える製品を目指した。最近のスマートフォンは大型化が進み、持ちにくくなっている。では消費者がどのようなスマートフォンを求めているかを改めて検討してみたところ、1日中スマートフォンの画面を見ながらアプリを使っているユーザーばかりではなく、コンパクトサイズで持ち運びやすいニーズもあるだろうと考えた。縦型の折り畳みスタイルなら、開けば普通のスマートフォンであり、閉じればポケットに入るコンパクトさを提供できる。

 一方、横向きに折りたたむデザインもある。我々ももちろんその形状や、様々なディスプレーサイズの製品化を検討した。その中からユーザーニーズを考えると、大型化するスマートフォンをポケットに入れて持ち運べるようにすることがもっと求められているものだと考えた。そこでまずは縦に折りたたむフォームファクターを採用したのだ。

 横折式はディスプレーサイズが大きくなり、開いた状態ではタブレットとなる。しかしタブレットはすでに所有している消費者も多いだろう。価格が安くなるのであれば横折り式も魅力はあるだろうが、現在のユーザーニーズとは一致しないと我々は考えた。

今後の折りたたみスマホ市場に期待

──折りたたみスマートフォンは市場全体でこれからどのような成長が見込まれるか。

ジェフ 我々は折りたたみスマートフォンがこれから延びる製品であり、その製品をいち早く投入しエコシステムに参加できることを喜ばしいと考えている。

折りたたみスマホ市場の成長に期待するジェフ氏

 あくまでも個人的な見解だが、市場の25%程度が折りたたみスマートフォンになっていくのではないかと考えている。たとえば現在、縦折り式の折りたたみスマートフォンは2社だけが出している。製品数は少なく高価であり、マーケットはとても小さい。しかしこれからほかのメーカーも参入すれば、技術革新も進み価格も下がっていくだろう。たとえば今年4社が折りたたみスマートフォンに参入し、グローバルで製品を販売し、価格が下がれば最初に述べたように市場全体の1/4くらいの数になるのではないかと考えている。しかし、現実的にはそうなるにはあと2~3年はかかるのではないだろうか。

──最後にrazr 5Gの魅力を改めて伝えてほしい。

ジェフ たとえば片手で持ったまま本体を「パッ」と開くこともできる。曲げやすいディスプレー素材を採用して折りたたみ体験を高め、さらにアウトディスプレーも「閉じたまま、外からいろいろなことができる」ことを考えられている。電源周りやアンテナなどの設計、そしてヒンジ部分も含めた多数の特許、すべての積み重ねで、razr 5Gはエレガントで上品なスマートフォンに仕上がっているので、ぜひ手にとってもらいたい。

 これから折りたたみスマホが市場の25%を占めるだろうと予想するジェフ氏。デザインもスペックも一段落ついたスマホが行き着くのは折りたたみなど、ほかとは違うギミックを持った端末なのかもしれない。

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