Ryzen 5000シリーズの人気により、AMDプラットフォームを採用したPC自作は今年に入ってからも需要が大きい。世界的な半導体の不足による入手難、それに伴う価格の高騰といったハードルはあるものの、手に入るようなら1台組み上げたいと考えているユーザーは少なくないだろう。一口に自作と言っても、CPUやマザーボード、PCケースなどの選択によって様々なアプローチができるが、常に一定の注目を集めるものといえば、“小型マザーボードの採用”。比較的小型であるMini-ITX、あるいはMini-DTXフォームファクターのマザーボードや対応PCケースを活用することで、かさばりがちなデスクトップPCのサイズを省スペースにまとめられる。あまり面積が広くない日本の住宅事情などもあってか、特に国内市場では人気を集めやすいようだ。
さて、ASUSはAMDプラットフォームにおいてもMini-ITXフォームファクターのマザーボードを複数ラインアップしており、加えてMini-ITX/DTX対応のPCケース「ROG Z11」を販売している。グラフィックスカードやCPUクーラーなど、その他のROGブランド製品と組み合わせれば、多くのパーツを同一ブランドの製品で揃えた小型PCを組み立てることが可能だ。この点は、他メーカーにはない魅力と言えるだろう。
この記事では、B550チップセット採用のMini-ITXマザーボード「ROG STRIX B550-I GAMING」と、「ROG Z11」を活用して実際にPCを組み上げる過程を体験してみた。プラットフォームでの自作を検討しているユーザーの参考になれば幸いだ。
大型のグラフィックスカードも搭載可能、ハイエンドな小型PCを実現
今回使用するマザーボードとPCケースの組み合わせは、採用できるパーツの選択肢が豊富になることが特徴のひとつ。「ROG STRIX B550-I GAMING」は最新のRyzen 5000シリーズに対応しており、ミドルクラスの「Ryzen 5 5600X」からハイエンドの「Ryzen 9 5950X」まで、用途に合わせた選択が可能だ。加えてSSDはPCIe 4.0接続にも対応できるため、比較的小型ながらスペックの高いPCを組むことも難しくない。
また、「ROG Z11」は先に述べた通りMini-ITXおよびMini-DTXに対応するケースで、内部のスペースは比較的広く取られている。小型PC向けケースの場合、コンパクトさを突き詰めて採用パーツのサイズに制限が設けられることも少なくないが、本製品はカード長320mmまでのグラフィックスカード、高さ130mmまでのCPUクーラー、ATX電源の搭載に対応するなど、拡張性はミドルタワーケースに劣らない。縦置き・横置きにより設置の柔軟性を高めつつ、本格的なハイスペックゲーミングPCを実現できるだけの余裕があるあたりは、性能や外観にも妥協したくないユーザーにとってうれしいポイントだろう。自作に慣れていないユーザーにとっても、作業スペースが比較的確保されているのはメリットだ。
実際、今回採用したROGブランドのパーツは、CPUクーラーにオールインワン水冷ユニット「ROG RYUJIN 240」、グラフィックスカードに「TUF-RX6800XT-O16G-GAMING」、電源ユニットに「ROG Thor 850W Platinum」と、いずれもハイエンドなROGブランドのパーツばかり。外見に統一感が生まれるため、一式揃えればMOD PCのような見栄えと高い性能が保証される。
独特の存在感、縦置きでも横置きでも見栄えは◎
組み立てにあたり、ポイントとなる部分をいくつか確認しておこう。まず、「ROG Z11」はやや特殊な構造をしているため、サイドパネルの取り外し方法などが一般的なケースと若干異なる。具体的には、一旦ケースの前面と背面にあるダストフィルターを外さなければサイドパネルを取り外せないといった構造が採用されており、自作に慣れているユーザーも一度マニュアルを確認しておくことをすすめたい。とりあえず横置きにし、ダストフィルターと両側のサイドパネルに加え、簡易水冷クーラーを使う場合は横置き時の底面になる台座付きのパーツも外しておくと、スムーズに作業しやすいだろう。
マザーボードのトレイが放熱性や拡張性を確保するために11度の角度で傾斜しているのは、「ROG Z11」の特徴のひとつ。ボードは斜めに取り付けることになるが、通常の設置と大きくは変わらないため、ここはそれほど困らない。総じてMini-ITX対応ケースとしては大きめなので、慣れている自作ユーザーであればパーツの取り付けには大きく苦労はしない印象を受けた。ただし、メモリーは配線などの際に邪魔になりやすいので、最後に取りつけるほうが楽だ。グラフィックスカードの取り付けには(フレームとのクリアランスがギリギリなので)多少手間取ったが、今回のように2スロットを超える厚みのあるカードを使う場合は少し慎重に作業する必要があるかもしれない。配線に関しては、背面に裏配線用のスペースがしっかり設けられているため、これをうまく活用しよう。
実際にPCを組み上げてみると、小さめの筐体にパーツがぎっしりと詰まった、インパクトのあるPCが完成した。ケースはそこかしこにROGのロゴがあるため、内部パーツもROGブランドの製品で揃えることで、より見栄えのする仕上がりになっているのがポイントだ。すでに述べたように、本製品は縦置きも横置きも可能(横置きの際は付属の電源ユニット延長ケーブルを使用する)であり、どちらの置き方を選ぶかは設置スペースの事情か、好みで決めていいだろう。難易度は一般的な自作と比べて少し高くなるものの、このようにユニークなPCを組みやすいのが、小型マザーボードとケースを使ったPC自作の醍醐味だ。